娘が幼稚園から小鳥を預かってきた。教育の一環ということだが、かごに入っている、2匹のジュウシマツだ。
小鳥を飼った経験はなかったが、実際に見てみるとなかなかかわいい。時折ぴよぴよなくので、娘もお気に入りだ。
さて、このジュウシマツだが、一方ではなかなか世話がかかる。
・毎日水を変える。
・餌の小松菜を取り替える。
・カルシウムを取らせるための石灰石(?)のような餌を与える。
・かごと、周りに飛び散ったハネやフンなどの掃除をする。
生き物を飼うのは覚悟がいるな、と痛感させられる。そしてやはり大変そうなのは掃除だ。
その掃除用のツールも、幼稚園から預かってきていた。
そのうちの一つに、「ヘラ」がある。何の変哲もない、プラスチックのもので様々なところにこびりついた汚れを落とすために使うものだ。
そしてつい先日、その「ヘラ」がなくなってしまった、という話を妻から聞いた。
探し回ったのだが、どうやら、娘と妻が小鳥のかごの周りに敷いている新聞紙を交換するとき、誤って一緒に新聞紙と一緒に捨ててしまったらしい。
娘も妻も、幼稚園から預かったものをなくしてしまったということで困惑したらしいが、ヘラは、100円もしないような品なので、妻が「私たちの責任だから、買い直しましょう」と娘に言ったところ、娘も同意したとのこと。
ここまではまあ普通の話である。一件落着、と言っても良いかもしれない。だが、この話には後日談がある。
この一件を妻が幼稚園に報告したところ、幼稚園の先生から、意外な反応が返ってきた。
先生はこう言ったそうだ。
「ヘラはストックが幼稚園にたくさんありますし、無くなることもありますので、全く気にしないでいただいて結構です。買い直す必要もありません。そんなことよりも「せっかくの娘さんの教育の機会」を逃してしまったほうが問題ではないでしょうか。」
「教育の機会?」
「そうです。ヘラがなくなってしまった。鳥の世話ができない。お二方は困ったわけですよね。」
「そうです。」
「困ったときに、親が「問題を解決してしまった」ことで、娘さんが試行錯誤する機会を取り上げてしまった、と考えらられませんか?」
「……」
「娘さんはヘラがなくなってしまったことで、掃除ができなくて困っている。親はそういうときこそ、「どうしたらいい?」と問いかけて、娘さんが工夫して問題に対処することを見守らないといけないんです。子供が困っているときは、子供が成長する良いチャンスです。親が勝手に子供の問題や困っていることを解決してしまってはいけません。」
******
妻は「叱られたよ……、いやー、そんなこと考えたこともなかったな―。」と言っていたが、感じ入るところがあったのだろう。ブツブツと考え込んでいた。
そう言えば、有能過ぎる上司は、部下をダメにする」という話を聞いたことがある。
部下がトラブルを起こすたびに上司がうまくそれを解決してしまうので、上司はとても部下から信頼されているのだが、部下は無能なまま、という話だった。
親がなんでも子供のトラブルにしゃしゃり出て解決すると、結局子供が無能になってしまうのだろう。
一方ではこのような「親をきちんと叱る」という教育方針を嫌って幼稚園を辞める人もいる、と妻から聞いた。
モンスターペアレント、というのはいろいろな意味で、マズイのだなと思った。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
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