スタートアップの有能な経営者や、大手企業の上級管理職など、大きな仕事を試みる人たちが抱えている最も大きな課題の1つは、「人材の確保」である。
自分の事業のために働いてくれる多数の協力者を探すことなく、成功をおさめることはできない。だから、仕事の話には必ず「いい人はいないかね」という話がついて回る。
問題は、有能な人は圧倒的に絶対数が少ないことだ。実際、「よい人材の確保ができないので、事業の成長が遅れている」といったことは日常茶飯事である。
だが一方で、疑問も残る。
それは、「いい人とは一体、どのような人なのだろうか」という疑問だ。
「いい人」は非常に抽象的な表現であり、今ひとつ実感を伴わない。私も「いい人」が何を示すのか、永らく疑問だった。
だが最近、「いい人」に共通する1つの重要な資質を発見した。
それは「野心」である。
いい人は、「野心」が大きく、その質が高い。
野心を所持していることは、その人物のエネルギーの大きさを示すと、有能な人は考えている。
「野心」とは何か。
それは金儲けだけではない、何かを創造したい、貢献したい、描きたい、実験したい、そう言った欲望の現れすべてが「野心」である。
そして、野心の足りない人物は、企業にとって「ぜひとも採用したい、いい人」ではない。
「何をしたいかわかりません」
「普通でいいです」
「特にやりたいことはありません」
という発言は、その人の「野心」がない、あるいは小さいことを示す。
さらに、「野心」は質が問われる。
「野心」の具体性と複雑性が、その人の積み上げてきたものそのものを示すからだ。
例えば「金がほしい」というシンプルな野心は、おそらく貧乏であった体験や、欲しいものが買えなかった体験から来るものであるが、何かしらクリエイティブなものを含んでいるわけではない。
「人の役に立ちたい」といった平凡な野心も同様である。
そうではなく、企業が求める「野心」は、その中にクリエイティブなものが含まれることが求められる。
「現在存在しているVRを拡張して、◯◯という体験を作りたい」
「アフリカの非電化地域に、◯◯という価値観を持ち込んで、インフラを作りたい」
こう言った、具体的かつ、複雑な問題に取り組みたいという「野心」こそが、企業が強く求める資質である。
「そんなこと言っても、やりたいことなんか何も浮かばないよ」
という方もいるかもしれない。
だが、冷たいことを言うようだがそれは単なる勉強不足、経験不足である。なぜなら、野心は、高度な勉強や多様な体験から生まれるからだ。
先人の残した研究や知見を学び、実際にそれを現場で見て、触って確かめ、自分自身の試みを適用してフィードバックを得る。そして、その中から、「野心」が生まれる。
「やりたいことがなければダメだ」
と言うつもりはない。どういう人生をおくるかは、その人次第だ。
だが、企業が「やりたいことがない人」を重視しないのは、上述した理由から、極めて当然のことなのである。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
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