仕事においては明らかに、がむしゃらに努力するだけでは勝てない。

 

例えば、あなたが新卒で営業会社に入ったとする。

同期は10名。半年の試用期間中に1位を取った人間には報奨金が出され、かつ出世の見込みの高いエースたちがいる部署に配属されることが約束されている。

新卒に与えられた仕事は全員に均等に割り当てられた名簿へのテレアポとアポイント先からの受注である。

当然、あなたは1位になりたい。

さて、どうするか。

 

同期のうち、5人は「成果」に対するこだわりがなく、既に敵ではないことはすぐにわかった。毎日「やれ」と言われているテレアポすらやらないのだ。

予想通り、初月のこの5名の成績はかろうじてラッキー受注があった2名だけ。しかも成果は1件ずつだった。

一方、同期のうち、3人は「成果」に対するこだわりがあり、行動力もあった。真面目に毎日ノルマとされているテレアポをこなし、先輩のやり方を真似て努力をする。

いわゆる「努力家」たちだ。その真面目さ故に、彼らは社長や幹部からの評判もそこそこ良かった。

そして上からの期待通り、初月にはこの3名の成績は平均月2〜3件の受注を実現することができた。

 

ところが、同期の最後の1人は全く異なっていた。何しろ能力が図抜けて高い。コミュニケーション能力が抜群なのだ。

かれは大学時代から営業会社にインターンとして参加し、テレアポも慣れていたので、すぐに成果が出た。また、彼は長時間労働が全く苦にならない様子で、1日に他の人の倍のテレアポをこなし、倍の営業の行動量を愚直に実現した。

彼はいわゆる「できるやつ」だ。

彼は初月、6件という、他の人物の倍の受注をつみあげた。

 

しかし、あなたは絶対に1位になりたかった。

不まじめな5名は眼中にないとしても、後の4名は真面目に仕事をこなす。とくに「インターン経験者」の彼は能力も高く、仕事を精力的にこなす。まともに張り合っても、勝ち目はない。

あなたは頭を使うことにした。

 

幸い、あなたには学生時代のサークルの後輩の知り合いがたくさんいる。そこでまず、あなたは学生時代の後輩と、その知り合い15人に声をかけた。

「テレアポを手伝ってくれ。成果報酬で、1件アポを取るたびに5000円払おう。」

テレアポのやり方はすでに先輩からマニュアルを入手している。彼らにはそのマニュアルをコピーして渡す。

 

あなたは彼らに「前金」として1万円ずつ渡し、彼らに一斉に電話をかけさせ、彼らからの連絡を待ってすぐに営業におもむく。

そして、最初の数社は犠牲にしても「エースの先輩」に同行してもらうよう、先輩を事前に「飲み」に行っておき、気に入ってもらって自分のアポを優先してくれるように交渉しておく。

 

さっそく会社の近くでのアポがとれた。次々にアポが舞い込む。

こうしてあなたは初月「できるやつ」の更に上を行く、8件の受注を取った。

おめでとう。あなたは報奨金を受取り、サークルの後輩に支払ったインセンティブのもとをとり、希望の部署に配属された。

 

−−−−−−―

 

例えば、web製作会社に勤めているとする。

あなたの所属部署で、webマーケティングをすることになった。webマーケティング、と言うと聞こえは良いが、要は「全員でブログを書け」という命令だ。

一人ひとり持ち回りで、1週間に1記事を書かなければならないが、大きなアクセスを集めた場合には、査定にプラスの効果があり、年間でトップとなればボーナスも支給されるらしい。

何人かの若手が張り切っている。日常的にSNSを利用しているので、彼らはうまく書くだろう。一方で部署のオジサンたちは「今更記事をかけと言われても……」と、困惑している。

 

あなたは査定のプラスにはあまり興味がなかったが、webでそこそこ名前が売れれば転職などにプラスの効果があるとおもい、積極的に関与することにした。

おそらく皆、適当な記事を書いたり、締切に間に合わなかったりと、いい加減な仕事をするに違いない。ここで目立っておけば、社内的な注目も集まるだろう。

 

だが、既存の業務量は減らないので、記事をきちんと生産するには、ある程度の時間を使う必要がある。

社内を観察していると先日、若手の何名かが遅くまで会社に残って記事を書いているのを見かけた。4,5名はかなりの力の入れようで、真面目に書いている。

彼らのように「がむしゃらにやる」のも手だが、どうすべきだろうか?

あなたは頭を使うことにした。

 

記事を生産するには、「ネタ」と「書き手」の両方が必要だ。そして、記事を読んでもらうためには、読み手を集める工夫も必要である。この3つをきちんと収集できる仕組みがなければ、単に「精一杯努力する」で際限のない労働をしなくてはならない。

 

そこでまず、「ネタ」として、会社の中でコンテンツになりそうなノウハウを集めることにした。幸い昔の社内報が結構ある。少し今風に改変して出せばそこそこ良いものができるだろう。

では書き手はどうするか。あなたは自分で書くつもりは毛頭なかった。文章を書き慣れているわけではないので、生産性が低いことは重々承知していた。

そこで彼はウェブメディアに勤めている友人をあたり、「ちょっとデザインの面倒を見るから、代わりに「社内報」の編集をしてくれないか?」と頼む。

「お互いに得意なことをしたほうが、生産性が高い」

と相手も合意し、クオリティの高い記事をあなたは手にすることができた。あとは自分のSNSできちんと拡散するだけだ。

 

—————–

 

ハロルド・ジェニーンは、仕事を「ルール通りにやらなくてはいけないが、ルールに従って考える必要はない」*1と評した。

頭を使って仕事をする、とは、そういうことだ。

 

 

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