こんにちは。「株式会社わたしは」の竹之内です。
去る1月13日、都内某所でBooks&Appsの編集部の方々と対談イベントを行いました。
なぜ人工知能(AI)を創っている我々が、メディアとイベントを企画したのか、それはちょっと変わった考え方かもしれませんが、
「我々の創っているAI」=「全く新しい形のメディア」と考えているからです。
AIとメディア、一見関係はなさそうですが、なぜ上のように言えるのか。その対談の記録が以下のものとなります。
なぜAIでメディアが作れるのか。
Books&Apps安達:
AIでメディアをつくる、と言うのはかなり理解しにくい概念ですが……。「AIに記事を書かせる」という話ではないですよね?
一体どのような意図が含まれているのでしょう。
わたしは竹之内:
そうですね、それを理解するためには、まず「メディア」についてもう少し語らないといけないと思います。
つまり従来のメディア、webメディア、そして次世代のメディアについてです。
で、1つ、質問です。
従来の紙媒体やTVなどのメディアと、webメディアの本質的な違いはどこにあると思いますか?
Books&Apps安達:
リアルタイム性、粒度、伝播の経路などに大きなちがいがあると思いますが。
わたしは竹之内:
そうですね、私は本質を「情報の断片化」だと感じています。
従来のメディアに比べて、webメディアは極めて情報が断片化されています。
例えば従来のメディアにおいては「冊子」や「番組」と言うかたちに情報がパッケージ化され、ストックすることができました。
しかしwebメディアにおいては殆どの情報は「記事」や「つぶやき」という極めて小さい単位に分割され、断片化しています。これらの情報はフローとして消費されることがほとんどです。
そのため「webメディア」は記事単位でしか認識されず、「どのメディアが報じているのか」がほとんど意味をなくしています。「パクリ記事」が横行するのもそのためです。
Books&Apps安達:
確かに、webメディアの関係者からは「メディア名」が気にされなかったり、リピーターや固定客の獲得に苦労していると耳にします。
わたしは竹之内:
はい、好きな情報だけにアクセスできるというメリットもありますが、デメリットもあります「断片化された情報」は、目の前にフローとして流れてくるので、手元においておくことができず、検証もなかなかできません。
つまり「情報を受け取ることはできるが、利用はしにくくなっている」のが現在のメディアではないでしょうか。
情報と情報をつなぐものがなく、従来のメディアが埋めてくれていた「文脈」がなくなっています。
Books&Apps安達:
なるほど……しかしそれが、人工知能(AI)とどのような関係があるのでしょう?
わたしは竹之内:
我々はその情報と情報の「余白」を埋めるのが、人工知能(AI)であると考えています。
断片化された情報をつなぎ合わせるのは「人格」である。
Books&Apps安達:
まだ難しいですね……(笑)
わたしは竹之内:
例えば「ブランド」を考えてみてください。
エルメスはもともと馬具のメーカーでしたが、皮革製品に軸足を移し、今はアパレル全般に進出しています。でも、個々の製品同士のつながりはさほどないですよね?
Books&Apps安達:
そうですね、共通しているのはロゴくらいでしょうか。
わたしは竹之内:
はい、個々の製品は断片化しています。しかしそれらは「ブランド」という実態のないものによってつなぎ合わされているとは思えませんか?
実際、ブランド物というのは、個々の製品を買っているわけではなく、「ブランドが保証する何か」を買っているわけです。
話を元に戻しますと、「情報の断片化」も同じようにして解消できる可能性があります。私たちはそこで考えました。情報を「ブランド化」と同じようにするには、そこに「だれが言ったか」が必要だと。
池上彰さんが言った、ホリエモンが言った、ドナルド・トランプが言った……
情報には「だれが言ったか」が付加されると、文脈が読み取れるようになるんです。
Books&Appsさんも、私が見るところ、一種の「ブランド」を持っています。「普通はこうだけど、実際はそうではないのでは?」という問いかけをする記事がすごく多いですよね。
Books&Apps安達:
いやー、全くそのとおりです(笑)
わたしは竹之内:
マツコ・デラックスさんが非常に人気が出たのも、「マツコ・デラックス」というブランド、文脈を築いたからでしょう。
例えば「本音を代弁してくれる」「もやもやしている疑問を言語化してくれる」「不条理をバッサリ切ってくれる」といった文脈を「マツコ・デラックス」というキャラクターは有していますよね。
だから、彼女の出る番組は何であれ、視聴者は「マツコ・デラックスの反応」を期待してみるのではないでしょうか。
したがって、これからはwebメディアも「人格」「ブランド」を持つべきであると私たちは考えています。
Books&Apps安達:
話としてはわかるのですが、具体的にどのような手法を用いるのですか?
わたしは竹之内:
そこにAIが登場する、というわけです。
日本においては画像認識などの分野での研究が盛んですが、現在我々は全くそれとは異なる方向の「AI」を創り出そうととしています。それは「人格を持つAI」です。
人格を持つAIが発信するニュースや情報にはかならずマツコ・デラックスさんや池上彰さんのように「文脈」が生まれるでしょう。
であるならば、そのAIはもはや「メディア」と呼んでも良いはずです。
実際今、我々は「オカマAI」や「ある有名芸人さんAI」と言った、AIの開発に着手しています。そのAIは「オカマから見た視点」で情報発信をするでしょうし、「芸人さんのような発言」をするメディアと呼んでもいいのではないでしょうか。
Books&Apps安達:
なるほど、「人格を持つAIは文脈をもって情報発信するので、ブランド化される。それはメディアではないか?」という話ですね。「日経新聞ならこう言う書き方をするだろう」とか「朝日新聞ならこう言う意見だろう」というのと同じであると?
わたしは竹之内:
そうです。ですから、我々はAIを創ることで、「極めてパーソナライズ可能なメディア」を創っているのと同じである、と考えています。
まあ、本質的にはGoogleの検索エンジンもAIであり、彼らも「パーソナライズされた検索結果を表示するメディア」に他ならないのですが。
Books&Apps安達:
なるほどー、もはや「記事の集合」ではなく、「人格を持つAIが発信する情報の集合」がメディアだというわけですね……。
竹之内さん、本日はありがとうございました。
わたしは竹之内:
ありがとうございました。
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