労働市場では、だれしもが自分に価格がつく。

ひょっとしたら「人に価格がつく」のは正確な言い方ではないかもしれない。我々は奴隷ではないので、「自分の労働力」に対して価格がつく、と言い換えるべきだという方もいるだろう。

ただいずれにせよ、私たちのほとんどは自分の人生の時間を誰かに提供して、見返りとして金銭を得る。それが「労働市場」の中にいることの証だ。

 

ところが市場の真っ只中にいるにも関わらず、

「自分の労働力の価値がどの程度なのか」

を把握できていない方は多い。

「自分の価値くらいわかっているよ。年収◯◯万円だよ」という反論をされる方もいるだろうが、私がいいたいのは「給料」の話ではない。

給料は一企業がある労働者に支払っている金額のことであるから、労働力の価値を正確に反映しているわけではない。あくまでも目安であり、現状が過剰に評価されている人もいれば、過小評価されている人もいるのだ。

 

では自分が提供できる「労働力の価値」をどうやって知ればよいのだろう。

「資格ですか?」

「語学力ですか?」

などと「履歴書にかけるようなわかりやすいスキル」を挙げる方がいるが、実際に価値を決めているのはそこではないし、もちろん「肩書」だけで判断できるものでもない。

 

本質的には、労働力の価値は、企業の「事業」にどの程度貢献できたか、実績によって決まる。したがって、以下の質問で「どれに当てはまりますか?」を考えれば良い。

 

1.自らが責任者となって事業を生み出したことがある

最も価値の高い労働者は、事業を作り出せる労働者である。彼らは労働市場においても当然、価値が高い。また、企業外に出れば、起業家として活躍できる。

「経営者」クラス(目安:年収3000万〜青天井)である。

 

2.事業の責任者をやり、事業計画を完遂したことがある

次に、P/Lに責任をもてる労働者の価値が高い。「利益を出せ」と言われるだけで自ら方向性を打ち出し、事業計画を作ることができる。人をアサインし、リソースを調達し、売りを増やしてコストを下げることができる。

「部門長」クラス(目安:年収1500万円〜3000万円)である。

 

3.部署の目標達成のための手段を考えて達成したことがある

具体的には事業の目標から、行動計画と数値目標をブレークダウンして作ることができる人、また、その計画を完遂させるためにあらゆる手段を講じ、行動計画を完遂する。

また、そのためタイムマネジメント、知識の習得、人を使うためのコミュニケーション能力などを習得している。

「課長」クラス(目安:年収750万円〜1500万円)である。

 

4.自ら工夫して仕事ができる

自ら工夫して仕事ができる、いわゆる「ちょっとできるサラリーマン」がこれに当たる。成績が良いことも多い。

上の指示がなくとも目標や仕事の完遂率が高いため、管理職には重宝されているが、他者の目標や「部門全体」には関心が薄い。上のクラスに移れるかどうかは、「他者の仕事」に興味を持つかどうかで決まる。

「成績のよい社員」クラス(目安:年収500万円〜750万円)である。

 

5.指示があれば仕事をやることができる

いわゆる指示されたことはきちんとこなす人々である。専門スキルが高い人もいるが、マネジメントスキルに乏しく、すこしイレギュラーが発生すると効率が落ちることもある。

上司から「指示されないと動けないのはダメだ」と言われるが、上のクラスに行けるかどうかは自律性、自主性に依存する。

「普通の社員」クラス(目安:年収350万円〜500万円)である。

 

6.監視の下で仕事ができる

指示されたことを十分にこなすことだけで精一杯、という人々である。たびたび仕事の納期に守らなかったり、ミスを起こしたりするので、常に上位の人間が仕事ぶりを監視しなければならない。

彼らに必要なのは基礎的な仕事をこなす力、注意力、観察力、思考をまとめる論理的な能力などである。

「若手社員」クラス(目安:年収〜350万円)である。

 

 

上の6つのクラスの間には大きな断絶があり、そのクラスで漫然と仕事をしていても、上のクラスになることはない。

「よりハイスキルな労働者」となるためには、意図的に上のクラスの仕事をし、積極的に知識と技術を習得しなければならないのである。

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・すべての最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

(Mike Liang)