最近はあまり技術的な仕事をしていないんですが、実は私は元々DBエンジニアです。
OがつくDBとか、PがつくDBとか、mがつくDBとかをいじくって、クエリを書いたり、テーブルの設計をしたり、パフォーマンスのボトルネックをあれこれ調べて解消したり、INDEXヒントを総とっかえして頑迷なオプティマイザをぶん殴ったりすることが主なお仕事でした。今でもたまーにそういうことをします。
同業の方であればお分かりかと思うんですが、DBのパフォーマンスは凄く唐突に、かつ多くの場合極端に落ちます。そして、DBのパフォーマンスが落ちると物凄く広範囲に影響が及びます。
アプリケーションサーバ、重くなります。クライアント、ろくに動かなくなります。お客様、切れます。カスタマーサポートにはわんさか電話がかかってきます。
ただ「遅くなる」だけでも十分に影響は甚大なのですが、それ以上のトラブルが発生するとまあエラいこっちゃです。
特にBtoCのシステムにおいて、「システムの異常」は決して、決して見過ごされません。何でそんなにレスポンスが早いんだ監視センターか、と思うくらい、瞬間的にお客様からのレスポンスは戻ってくるものです。
別にDBに限らないのですが、サーバーというものは生き物です。データを食っては吐き食っては吐き、時にはおなかを壊し、時には錯乱してよくわからない呪文を吐き出し始めます。
手がかかる子どものようなものでして、保守担当は彼らのお世話に並々ならない工数をつぎ込むことになります。
なにせパフォーマンスが落ちた時の影響が甚大なので、保守担当は可能な限り、異常が発生する前兆を捉えて、常に先手、先手で対応を検討し、メンテナンスの判断をしなくてはなりません。
DBの場合であれば、DBAは常にパフォーマンスレポートなり、AWRレポートなり、チューニングアドバイザなりとにらめっこをして、おかしな負荷の増大はないか、パフォーマンスが下がったクエリはないか、IOの妙なスパイクはないかと探し回ります。そして、何か前兆を見かけたら、慎重にテストした上でそれを叩き潰します。
これ、結構大変な作業です。やり始めると10時間20時間平気で飛びます。それをやった上でも、パフォーマンスの低下を完全に防ぐということは至難の業なのです。
ところが、それだけ大変な作業をやったとして、その作業が目に見える形でユーザーに評価されることは極めて稀です。
ある時、土日にDBのメンテナンス作業をテッテー的にやりまして、かなりのパフォーマンス改善を実現したことがありました。
ある処理においては応答速度が200倍くらいになった筈で、フフーン流石にここまで頑張れば文句もないだろう、とドヤ顔もあらわにユーザー部門の人に感想を聞いてみました。
「ああ、なんか普通に動いてますね」
これが回答でした。ウソやーん。ドヤ顔していた私涙目です。
これ割と一般的に言えると思うんですが、ユーザーには「応答時間が3倍になれば大騒ぎをするが、それが0.01秒になっても気づきもしない」という傾向があります。
後者を達成するためにはエラいコストがかかるのですが、そのコストが適切に理解されるケースは滅多にありません。「スムーズに動いている」ことの価値は、基本的に理解されないのです。
元来、我々のインフラに対する期待度は聊か高過ぎ、それに比してインフラに対する評価は低過ぎるのではないでしょうか。
電気は流れているのが当たり前、水道は蛇口を捻れば流れ出すのが当たり前、電車は定刻通りに動いているのが当たり前であって、止まればそれは「異常事態」なのが日本社会なわけですが、実際の所インフラをインフラとして運用するだけでも、コストはかかるし腕も要るものです。
健康のありがたみは体を壊すまで分からないけれど、健康を保つには実際それなりのコストがかかる、という話です。
システムなんぞ何をかいわんやで、元来「不安定な状態」がデフォルトかと思いたくなるくらいインフラとしては未成熟なのに、向けられる期待値は社会基盤のインフラに向けられるそれとあんまり変わらない様な気が、時折します。
サーバがダウンすれば批判が殺到しまくるけれど、サーバが安定して動いていても誰も「保守の人たちいい腕だなー!」とは言わない。
ただ、「システムがトラブルなく動いている」というそれだけで、案外裏では頑張っている人達がいるんだ、という。社会の様々なインフラと同じように、システムにおいても、もうちょっとそういう認識が一般的になってもいいんじゃないかなあと、私はそんな風に思うのです。
皆さんが使ってるシステム、ちゃんと動いてますか?トラブル起きてないですか?
もしトラブルなくちゃんと動き続けているのであれば、時には保守担当に優しい言葉をかけてあげてください。結構頑張ってると思いますよ、彼ら。
今日書きたいことはそれくらいです。
(2025/5/8更新)
人手不足 × 業務の属人化 × 非効率──生成AIとDXでどう解決する?
今回は、バックオフィスDXのプロ「TOKIUM」と、生成AIの実務活用支援に特化した「ワークワンダース」が共催。
“現場で本当に使える”AI活用と業務改革の要点を、実例ベースで徹底解説します。
営業・マーケ・経理まで、幅広い領域に役立つ60分。ぜひご参加ください!
こんな方におすすめ
・人材不足や業務効率に悩んでいる経営層・事業責任者
・生成AIやDXに関心はあるが、導入の進め方が分からない方
・属人化から脱却し、再現性のある業務構造を作りたい方
<2025年5月16日実施予定>
人手不足は怖くない。AIもDXも、生産性向上のカギは「ワークフローの整理」にあり
現場のAI・DX導入がうまくいかないのは、ワークフローの“ほつれ”が原因かもしれません。成功のカギを事例とともに解説します。
【内容】
◯ 株式会社TOKIUMより(登壇者:取締役 松原亮 氏)
・AI活用が進まないバックオフィスの実態
・AIだけでは解決できない業務とは?
・AI活用の成否を分ける業務構造の見直し
・“人に任せる”から“AI×エージェントに任せる”時代へ
・生産性向上を実現した事例紹介
◯ ワークワンダース株式会社より(登壇者:代表取締役CEO 安達裕哉 氏)
・生成AI活用の実態
・「いま」AIの利用に対してどう向き合うか
・生成AIに可能な業務の種類と自動化の可能性
・導入における選択肢と、導入後のワークフロー像
登壇者紹介:
松原 亮 氏(株式会社TOKIUM 取締役)
東京大学経済学部卒業後、ドイツ証券に入社し投資銀行業務に従事。
2020年に株式会社TOKIUMに参画し、当時新規事業だった請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の立ち上げを担当。
2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。
安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。
日時:
2025/5/16(金) 15:00-16:00
参加費:無料 定員:50名
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
こちらウェビナーお申込みページをご覧ください
【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城