「人は感情の生きもん」であるから、企業においても人と人の衝突は不可避である。
例えば「展示会に出品する」というプロジェクトがあったとする。あなたを含めてメンバーは5名。外部から専門家も招いて話を聞き、ようやく企画書を作り上げた。それを上司に持っていくと、開口一番
「こんなんじゃダメだよ。もっと女性のコンパニオンを積極的に使って、華やかな感じにしないと」
と言われてしまった。
苦労して作った企画なので、当然皆は反発する。「なぜダメなんですか?コンパニオンがいることで、なぜ展示会の成功が成功するのか教えてください」と聞く。
上司はそれに対して、
「いや、なんとなくだよ。なんとなく、去年女性のコンパニオンがいたブースは華やかでよかったし」
皆、困った顔をしている。上司の言っていることが理解できないのだ。
「なんとなくって・・・なんかやりたいこととか、根拠となるデータとかあるんですか?」
「そんなのあるわけ無いだろう。なんとなくだよ。イメージの問題だ。まあ、私のこだわりだな。」
「・・・わかりました、では何人くらいがいいと思いますか?」
「それを考えるのが、君たちの役割だろう。あとはよろしくな。」
いかがだろうか。このような上司のもとでの、プロジェクトメンバーのやる気は推して知るべしである。
「感情」というものは理由を付ける必要が無いため、上司がこれを持ち出すと結局は「権力」によって事が決定することになる。
「~さんが言っているから」であるとか、「なんとなく」だとか、「イメージで」という言葉は、担当者が使うには問題ないが、上司がこれを使うと部下は非常に困る。
同じように家族の中でもこれと同じようなシーンは存在する。
例えば、子供から「なぜ勉強しなくてはいけないの?」と聞かれたとする。
感情的に答える親は、子供に、「当たり前だろう。学生は勉強するものだ」と答え、また、「常識だ」と子供に告げるだろう。子供はそれが納得行かない。「別に勉強なんかしなくても立派になった人はいくらでもいるし、こんなものが将来役に立つとも思えない」と思うのもまた自然である。
しかし、このような親のもとでは「勉強しない」ということは許されない。親が怒れば、子供はしぶしぶ勉強するかもしれないが、親は信頼を失う。
「常識」であるとか、「感情」が通じるのは、その人が部下や子供から、「信頼に値する」と思われている時だけなので、大体の場合はうまくいかない。上司や親の立場になった人はよっぽどのことがない限り、「感情的に、理由も伝えずに、常識を押し付ける」のはやめたほうが良い。大体の場合、禍根を残すことになる。
しかし、大抵の場合上司や親は選べない。部下や子供は一定の確率で「感情的な人」と付き合わざるをえない。
そんな時どうやって彼らとうまく付き合うか。
一番効果的な選択肢は、「会社を辞める」であるとか、「家を出る」という選択肢だが、これは常に選択できるわけではない。経済的事情がこれを許さないこともあるだろう。
したがって、次善の策として、「うまい付き合い方」を知る必要がある。
経験的に、「感情的な上司」は論理的に反論されることを最も嫌う。したがって、論拠やデータを提示せよ、ということは怒りに油を注ぐようなものなので、それはやめる。どうせ議論したら100%こちらが勝つのだ。勝ってはいけない。
だから、一旦「はい、はい」と聞いておこう。
その人の論理ではなく、感情を受け止める。私にはわからなくとも、すくなくともその人にとっては「ダメ」なのだ。そしてしばらく喋らせる。感情が収まるまで喋ってもらわないと、怒りがエスカレートする。しゃべることで本人は冷静になり、「いや、やっぱりどうでもよかったわ」というように意見がひっくり返ることもしばしばある。
また、その場の気分で意見をいうこともあるので、一旦受け止めて、黙殺、忘れたふりをしているのもよい。本人も言ったことを覚えていないこともよくある。
上に上げたような状況になるのは不幸なことではあるが、「とにかく意見を聞いてあげる」ことで、その人の気持ちはかなりの部分収まる。
そういうことを鑑みれば、「論理的に弱点を攻めてくる上司」よりも、「感情的な上司」 のほうが幾分扱いやすくはあるので、思い切って気持ちを切り替えてしまおう。
意外にそういった人々の感情を理解することは、実になることもあるのだから。
今更だが、また平凡な結果になってしまった。今度はもっとマシなことを書こう。
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
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【今回のトーク概要】
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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