イノベーション 破壊と共鳴山口栄一氏とお会いする機会を頂いたので、その時に頂いた著書を読んだ。

この著書のキャッチフレーズは、「クリステンセンの気付かなかったイノベーション」ということだったので、クリステンセンの著作である「イノベーションのジレンマ」、「イノベーションへの解」、「教育×破壊的イノベーション」の3冊を読んでいた私は、非常に楽しく読ませていただいた。

 

クリステンセンは、イノベーションを2種類に分けている。「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」である。

持続的イノベーションは、要は「今までの製品を、より高スペックにすることで得られるイノベーション」であり、「破壊的イノベーション」は、「より低スペックにすることで得られるイノベーション」である。

一般的に大企業はすべての商品を「より高スペックにすることで利益を高めよう」とする。しかし、ベンチャーや中小企業はその方法では大企業に勝つことはできないため、「より低スペック」にすることで、今までそれを使ってこなかった顧客を取り込み、イノベーションを起こす、という主張だ。

 

山口栄一氏はこの主張を認めつつも、「イノベーション」にはさらにもう1種類あると主張している。それは、「パラダイム破壊型イノベーション」と呼ばれるものだ。

いわゆる「科学技術」が「それまで誰もやれると思っていなかったことを実現する」ことで得られるイノベーションのことを彼はこのように名づけている。彼はトランジスタや、青色発光ダイオードによるイノベーションは、この「パラダイム破壊型イノベーション」であると主張している。

事例が非常に綿密に研究されており、イノベーションの過程を知ることが出来る本としては秀逸である。

 

 

しかし、個人的には、イノベーションに関してはクリステンセンも、山口栄一氏もピーター・ドラッカーの主張した「7つのイノベーションの機会」の範疇を出ていないと取れる。

ドラッカーはイノベーションの機会を以下の7つに分類した。

 

1.予期せぬ事の生起

2.ギャップの存在

3.ニーズの存在

4.産業構造の変化

5.人口構造の変化

6.認識の変化

7.新しい知識の出現

 

クリステンセンや山口栄一氏の主張はいずれも統計的な調査に基づいており、科学的に信頼の置けるデータであるが、ドラッカーの分類したニーズの存在や、新しい知識の出現を言い換えているにすぎない。

私の認識が間違っていなければ、「イノベーション」を起こそうとする人々は、「現在自分たちが持っているものでどのようにイノベーションを行うか」に最も興味があり、その部分に焦点があたっていると更に良かったと感じる。これは、クリステンセンの「イノベーションへの解」という著作において考察がされており、山口栄一氏の著作とあわせて読むと、更に理解が深まるだろう。

 

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)