人は色々なことで怒りを感じる生き物だ。けれど何が怒りの根本的な原因なのかについてを、しっかり理解している人は少ない。

例えば、人が怒っている例を具体的に出すとこういう感じだ。

「お金の話をするだなんて汚い」

「そんな事いうなんて、失礼でしょ」

様々な場面でよく聞くこれらの言葉だけど、この汚いとか失礼という単語は、一体何を示しているのだろうか?

今日はこれらの正体について書いていこうかと思う。

 

「自由」と「平等」を毀損されると人は怒る

「自由」と「平等」。これが人権の基礎だ。何者にも束縛されず、また何者もが不当な差別を被らない。基本的人権とはこの2つが成立する事とほぼ同義である。

それ故に、仲間内においてこれらが毀損されると人は物凄く不機嫌になる傾向がある。

仕事空間では上司や部下といった”建前”をキャラクターの一種として割り切ることで身分差を受け入れる事ができるけど、本来平等であるはずの友情空間で上下関係が意図的に導入されるような言動がなされると、一部の人は非常に過敏に反応する。

 

例えば学歴の話題なんかはその代表例だ。

現代において学歴は、偏差値という数値によって序列化されており、見方によってはそれがある種の押し付けがましさを持った強固な身分制度にみえる部分も有している。

偏差値表みたいな形で上から下まで並べられたものがある以上、それを序列の一部として認識するなという方が難しい。ある種の人がそこに物凄い劣等感を感じるのも、当然のことだろう。

どこの学校出身だといった話は学歴にコンプレックスがない人からすれば「故郷はどちらですか」ぐらいのニュアンスでも通じるけど、逆に言えばコンプレックスがある人からすれば非常に敏感な会話である。

 

このように、どこの学校出身かは本来平等であるはずの仲間内に数値として、目に見える序列化を導入してしまう。結果として仲間内にあった「平等」という原理原則が激しく損なわれる。だから学歴の話題は一般的には微妙なテーマのうちの1つとなるのだ。

だから学歴の話が出た時に「人に学歴を聞くとか失礼でしょ」といって怒っている人が本当にいいたいのは「おまえは共同体内における平等の原則を壊して、仲間に序列をおしつけたがってるのか?ふざけるな」という事なのだ。こう変換すると凄くスッキリしないだろうか?

 

お金の話題もそうである。コンプレックスがない人からすれば「お金なんてただの数値でしょ。それ以上でも以下でもない」という話なのかもしれないけど、ある種の人はお金の話を面白そうにすることを非常に嫌う。

なぜか?それはお金が人間関係に不平等をもたらすからだ。

金持ちと貧乏人、そのどちらも同じ人間だけど、選べるのならみんなお金持ちになりたいと口を揃えていうだろう。

「平等」という建前で成立している人間関係内において、お金という序列が簡単についてしまう性質の話をするのは、平等という幻想をぶっ壊す恐怖の破壊兵器なのである。

 

「お金が汚い」の本当のところは「劣等感」に関係している

ほとんどの人にとってお金とは”辛いことに耐えた結果”貰えるものであり、好きなように手に入れられるようなものではない。

 

私たちはよく自分たちの事を”社畜”と蔑称するけども、これはお金を人質にして、自分の自由をある程度会社に売り渡しているからに他ならない。お金という存在により、首根っこを押さえられた私達は、本来なら嫌だといいたいような事も”仕事だし、仕方がない”と自分の意思を曲げて受け入れざるをえない事がある。

 

この手の人達にとって、お金というのは自分が使役させられている事への証明のようなものである。

欲しくて欲しくてたまらないのに、それを手に入れる為には自分の意思を曲げたり等、辛いことをしなくてはいけないという愛憎入り混じった複雑な感情の果てに行き着いた言葉が「お金は汚い」なのだ。

たぶん、多くの日本人の感覚はこの感じに近いんじゃないだろうか。

 

一方でお金の話をドライに話せるタイプの人達もいる。

この手の人達はお金なんて所詮面倒事を手軽に処理できるだけの手段の1つでしか無いと達観しており、別に我慢なんてしないでも自分の好きな時に自分の楽しい仕事をやれば、ある程度は手に入れられるという状態にある人に多い。

 

お金は給料以外の手段でも手に入れる事は可能だ。世の中にはいくらでも仕事は転がっているのだから、適切な技能をみにつけて好きな時に働いて仕事をすれば、正当な報酬としてお金が手に入るような存在への道は、一応開けてはいる。フリーランスもそうだし、ある種の副業もこれに該当するだろう。

 

こういった手法でお金を手にする事ができるようになった人達は”社畜”と比べると、割とお金を上手な塩梅で受け入れられている事が多い。

こうなった人達はお金を汚いものではなく、単に”信用”が数値化されただけの幻想上のモノだという事を心底納得している。

だからそんなに忌憚なく淡々とマネーについての議論を行えたりもする。人前でお金の話をするのはちょっと生々しいね、ぐらいの事は言ったりもするけど、その程度だ。

少なくともこの手の人達が「お金の話をするだなんて汚い」と人前でキレてる事を僕はあまりみたことがない。

 

人は、劣等感から解き放たれるとこうも変わるのである。

 

あまりに多くの劣等感を抱えて生きていくのには、人生はちょっと長い

人にはいろいろなコンプレックスがある。

それらは大体において「欲しかったけども手に入れられなかった何か」が起因となっている事が非常に多い。

 

普通の人が手に入れているであろうけど、自分は持っていない時、人は強烈に「不自由」と「不平等」を感じる。

そういう時に出てくる感情は、とってもウエットでジメっとしている。非モテの嘆きがいつの世もわめかれているのは、まわりのみんなが恋愛を楽しんでるのに自分は楽しめていないという”思い込み”が強烈に心に苦しみを叩きつけるからに他ならない。

 

生きるにあたって、コンプレックスはできれば少なければ少ないほどよい。

だから若い人は自分の心のジメッとしそうな部分は、若いうちに様々なものにチャレンジして、できるかぎり無くすか代用できるように心がけていった方が無難だ。

全部を取り去るのは困難かもしれないけど、あまりに多くの劣等感を抱えて生きていくのには、人生はちょっと長い。

 

またそれと同時に、人のコンプレックスに触れそうなタイプの話題は、極力会話に織り込まないようにするのが一応の大人のマナーだ。

人の心のザラザラとした逆鱗部分は、その人の成長に関わる物凄く興味深い要素が沢山詰まっているのも事実なのだけど、あまりやりすぎるとそのうち手痛いしっぺ返しを食らう。

まあ気になるのはわからなくもない。僕もついうっかり好奇心に負けて、人のそういう部分を聞いてしまう事はある。反省しなくてはいけない。

 

本来、人というのはカラッとした気持ちのいい存在なのだ。「不平等」や「不自由」の烙印を自分から押し付けていると思われそうなタイプの話題さえ持ち出さなければ、結構みんな気持ちよくやってけるもんだ。

自由・平等・博愛の精神で、今日も楽しい娑婆社会を生きていきましょう。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

 

(Photo:Taymaz Valley)