「孟子」という人物が古代中国にいた。

”孟子(Wikipedia)

孟子(もうし、紀元前372年? – 紀元前289年)は戦国時代中国の儒学者。姓は不詳、氏は孟、諱は軻(か)、字は子輿(しよ)。亜聖(あせい)とも称される。孟子の「子」とは先生というほどの意。儒教では孔子に次いで重要な人物であり、そのため儒教は別名「孔孟の教え」とも呼ばれる。

あるいはその言行をまとめた書『孟子』(もうじ)。性善説を主張し、仁義による王道政治を目指した。”

性善説は「人間の本来の性質は善である。悪い行いをするのは外部の影響に負けてしまうからである。したがって、外部の影響に負けないよう、研鑽に励まなくてはいけない」という教えである。

 

性善説は「あまりに楽観的だ」という方もいらっしゃると思うが、古代中国、時の権力者にも「迂遠にして事情に疎し」と語ったそうだ。

すなわち、「現実をわかっていない」と批判されたと言える。

 

現代にも「人間は性善説でマネジメントしてはいけない」という方がいるが、古代の権力者と同じ見方をしているのだろう。

しかし、「孟子」を読んでみると彼の言っていることは2000年以上たった現在でもなお変わらない。

例えば

「実行しても成果があがらないときは、自分の努力がまだまだ足りなかったのではないかと反省する」

「相手の発言に耳を傾けながら、瞳を見て確認すれば、相手は心のなかで何を考えているのか、隠しきれなくなる」

「忠告には素直に耳を傾けよ」

「友として交わるときには、年長であるとか、地位が高いとか、身内にエライ人がいるとか、そんなことを目安にしてはならない。要は相手の徳を友とするのである」

「頭が良いのは良いが、細かい詮索はするな」

「人の悪口は控えよ」

など、現代のビジネス書に書いてあることと何が違うのか、という具合だ。現実をわかっていないどころか、2000年以上も続くような普遍的なことを言っているのである。

 

「性善説」という言葉はよく使われており、「人間に対する楽観的な見方」の代表例として挙げられる。

しかし、上のような話を読むと、「人間は元々善であるから、人を信じなさい」という主張では全くないことがわかる。

実際は「人はほっておくと、外部の圧力に負けて悪に手を出してしまうから、みんなで身を正して生きましょう」という主張なのだ。

 

知ったかぶりや、思い込みは怖いものである。

 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)