はじめまして。オリエンタルインフォーメイションサービスの田中です。
4年前に新卒で入社し、現在は複合機のファームウェアの開発を行っています。
自分で言うのも何ですが、エンジニアはなかなか楽しい仕事だと思います。
さて、記事を書くことになったのですが、正直言うと、どういう話を書いたらいいのかよくわかりません。
広報と言われても、困ってしまいますよね。
ですので、今回は個人的に極めて重要だと感じていることについて書きます。
技術者に必須のスキル「質問」です。
技術者にとって「うまく質問できるスキル」は生命線
技術者にとってもっとも重要なスキルの一つが「うまく質問できるスキル」です。
トラブルシューティングのみならず、自分と他のメンバーとの意識合わせ、自分の知識の確認など、およそ全てのシーンで「質問」は役に立ちます。
ですが、質問のうまい人は実はそう多くありません。
大抵の先輩・上司は優しく教えてくれると思いますが、世の中は必ずしもそういう人ばかりではありません。また、他社のエンジニアであれば、なおさらです。
ですから、自分自身も、新人のときは質問があまりうまくできず、よく指導を受けました。
ですが、振り返ってみると、非常に基本的なことを先輩は教えてくれていたと思います。
その「うまく質問できるスキル」のポイントは、以下の4つです。
1.「どうすれば調べられますか?」と質問する。
2.「Yes」か「No」で答えられるように質問する。
3.「私が欲しい情報」を明確にしてから質問する。
4.「聞きやすい人」ではなく「聞くべき人」に聞く
1.「どうすれば調べられますか?」と質問する。
質問される側にとって、一番嫌なのが「自分で調べもせず、考えもせず、単に「教えてくれ」という人」です。
例えば「部門IDの拡張」を任された時に、何も考えずに質問してくる人は「部門IDってなんですか?」と聞いてきます。
質問された側はどう思うでしょう。
当然、「自分で調べる努力をしているのかな……」と思うでしょう。
でも、質問をした人物は「調べ方もよくわからないし、時間も掛かりそうだから、聞いたほうが早い」と思って聞いているわけです。
ですから、この場合最も良い質問の仕方は、
「部門IDと言うものがよくわからないんですが、どうすれば調べられますか?」と聞くことです。
この質問のやり方はとても有効です。
今だけではなく、今後も自分である程度調べることができてから質問できますし、先輩と前提の知識を共有できるため、今後のやり取りもスムーズにできます。
また、「過去に事例はありますか?」なども良い質問です。事例を当たることができれば、質問するよりも遥かに多くの知識を得ることができます。
まずはなんでも聞かず、「自分で調べる方法」を聞くのがポイントではないかと思います。
2.「Yes」か「No」で答えられるように質問する。
自分である程度調べたら、次の質問の基本は、「Yes」か「No」かで答えられるように質問をうまくつくることです。
逆に「どうやったらいいですか?」や「何をしたらいいですか?」といった、YesNoで答えられない質問は、基本的にはあまりよくない質問です。
そして質問をうまく作るには、「自分の意見」をもつ必要があります。
例えば、
「こうしましたけど、これで正しいでしょうか?」
「私はこう思いますが、進めて問題ないでしょうか?」
という形式での質問です。
また、「この課題に対しての解決策は、A案、B案、C案の3つあると思いますが、どの案がもっともいいと思いますか?」という、選択肢を提示した質問も、良い質問の仕方です。
「自分がこう思っている」がない状態での質問は、回答する側も困ってしまいますので、かならず意見形成をし、その後に質問することが重要ではないかと思います。
もちろん、「自分の案」が採用されるとは限りません。場合によっては用意した案がすべて却下され、まったく別の案になる場合もあります。
ただ、すべての案が却下されたとしても、自分で案を考えてきたことは
3.「私が欲しい情報」を明確にしてから質問する。
2.で紹介したように、YesNoで回答できたり、選択肢を作ることができたりすればベストです。
ですが、もちろん現場は「Yes」や「No」で質問できるケースばかりではありません。
先輩や上司からアイデアが欲しい時や、解決策の具体案が欲しいときもあるでしょう。
そんな時は必ず、「私が欲しい情報」を明確にしてから質問しなければなりません。
具体的には、私は次に述べるような、3つのまとめを書き出しています。
今までやったこと、わかっていること
「部門ID」についての仕様書を読み、一通り理解した
得たい成果
部門IDを拡張し、セキュリティの権限を制御できるようにする
私が欲しい情報
セキュリティの権限を部門IDで制御するために、セキュリティの仕様についてもう少し深く理解したい。本プロジェクトのセキュリティの仕様の参考となるサンプルや資料
まず「今までにやったこと」を箇条書きにしてまとめ、その次に「得たい成果」をこちらも同じように箇条書きにします。
「得たい成果」は、作業の目的といっても良いと思います。
そして最後に「欲しい情報」をまとめます。
ここが質問の核となる部分です。
最後に、まとめた紙を先輩や上司と共有し、質問をすれば、質問の効率はぐっと上がります。
若干最初は手間に感じるかもしれませんが、結果的に何度も質問をしに行くよりも、この方が遥かに早いと思います。
4.「聞きやすい人」ではなく「聞くべき人」に聞く
そして最後のポイントが、「聞くべき人に聞く」です。
私もそうだったのですが、一般的な傾向として、怒られるのがコワイですし、自分の質問がうまくできているかどうかも不安なため、どうしても聞きやすい人に聞いてしまいがちです。
でも考えてみれば「聞きやすい人」が答えを持っているとは限りません。
技術者は人それぞれ得意分野がちがいますし、今までにやってきた仕事も異なります。したがって、「聞きやすい人」ではなく「聞くべき人」に聞くのは当然と言えます。
でも、そういう人が常に「良い質問の受け手」であるとは限りません。
中には一生懸命質問しても、冷たくあしらわれてしまうこともあるでしょう。(彼らも人間なのですから、当然です)
そのため、質問する側に求められるのは、「相手を見て質問の仕方をカスタマイズすること」です。
例えば、私の上司の一人は「結論」から言うことを強く部下に求めますし、上司も結論から言うタイプです。
ですから、その方に質問をするときにはかならず単刀直入に、結論を伝えるように心がけています。
また、別の先輩技術者は、逆に「結論」から言わない方です。
思考の過程を一から話してくれるので、理解はしやすいのですが、逆に結論は曖昧になりがちです。
その方には必ず最後に、「確認しますが……」と確認をしなければいけません。
また別の先輩技術者は、私が質問をすると丁寧に「田中さんはどう考えたの?」と一つ一つ確認をしてくれます。
とても丁寧で、紳士的なのですが、逆に自分で考えて意見を持っていないと、逆に「なんで自分で考えないのさ」と、無言の圧力をもらってしまいます。
私は常に、質問するスキルは、「受け」のコミュニケーションスキルであると思っています。
例えば、飲み会で活躍するような、皆を楽しませるコミュニケーションに長けた方でも、「質問が苦手」という人は意外に多いと思います。
それは、「自分から発する」コミュニケーションは得意でも、「相手から引き出す」コミュニケーションが苦手なことの証です。
質問力を鍛えるにはこの、「受け」というコミュニケーションスキルを鍛える必要があるのだと思います。
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