こんにちは。日本植物燃料株式会社、代表の合田です。
皆様、お元気でしょうか。
最近、アフリカでの電子マネーの普及の勢いは非常に目覚ましいものがあります。
↓こんな具合です。もちろん手にしているのは、VISAカード……ではなく、弊社の電子マネーです。
ちなみに、電子マネーはこんな感じで運用されています。
ちなみに、ここは未電化区域なので、「発電機」で電気を起こして、電子マネーのシステムを動かしています。
一見非力なシステムに見えますが、これで十分実用的なのです。
もちろんこれはモザンビークだけの話ではありません。発展途上国においては「現金」は主役を追われつつあります。
「途上国では現在、キャッシュレス化が進んでいる」とアーメッドは言う。いまでは、彼の出身地であるソマリランドの都市に行けば、何カ月も現金を触ったことがないという住民もいるという。
「かつては、そうした金融取引はすべて現金で行われていたが、それらを追跡することは難しかった。ケニアでは現在、GDPの45パーセントがM-Pesaを経由している。それに伴い、これまでは統計に現れていなかった非公式経済の大部分が公式経済に切り替わった」とアーメッドは述べる。その結果、ケニア政府はGDPを上方修正したという。
(Wired)
一方、日本のようになぜか「現金」にこだわりのある国では、電子マネーの利用者はまだまだ少数派のようです。
もっとも現金やその他の決済手段を含めてみると、電子マネーの規模は依然として小さい。日本クレジット協会の調査によると、クレジットカードの16年の利用額は49兆円(信用供与額、大手29社のショッピングとキャッシングの合計)。これと比べると、電子マネーの5兆円は増えたとはいえ、なお小規模にとどまっている。
(日本経済新聞)
こういった状況を見て、呑気な方は「電子マネーの普及は途上国だけの話でしょ?」と一笑に付す方もいるかもしれません。
が、実は日本は既に時代に取り残されている可能性があります。
例えばお隣の中国では、電子マネーの普及の勢いは留まるところを知りません。日本の電子マネー取引高はわずか5兆円ですが、中国では600兆円を超えています。
電子決済が普及する中国、今や物乞いも「現金ではなく電子マネー」
2016年6月、中国のインターネット人口は7億人を突破した。このうちスマートフォンを使ってネット接続する人は92.5%に達し、電子決済を利用するユーザー数も4億5000万人に達している。
中国のネット通販や電子決済の市場規模は、莫大なネット人口を背景に急激に拡大しているが、中国メディアの今日頭条は2日付で、2016年の中国の電子決済額が37兆1000億元(約606兆円)を超えたと説明する記事を掲載した。
(@niftyニュース)
更に凄いのはインドです。
日本ではあまり大きく報道されませんでしたが、インド政府は昨年11月、高額紙幣の流通を突如として停止しました。
インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は8日、500ルピー(約800円)と1000ルピー(約1600円)紙幣の流通差し止めを命じた。同国にまん延している汚職と脱税の根絶が目的とされるが、突然の発表に同国内には衝撃が広がっている。
モディ首相はテレビ放映された国民向け演説で、9日午前0時(日本時間同3時半)以降、これら2種類の紙幣は法定通貨としての効力を失うと宣言した。ただし今年いっぱいは旧紙幣と新札を銀行や郵便局で交換することができ、また口座への預け入れは引き続き可能だとしている。
(AFP)
これは、日本で言うと
「今の5000円札と、1万円札は4時間後に使えなくなるよ。あと、銀行で新札に2ヶ月以内に交換してね。使えなくなるよ」
という宣言を政府がしたようなものであり、日本ではなかなか考えられない、ドラスティックな政策です。
これによって、インドは大きく「キャッシュレス化」へ舵を切り替えました。
11月9日、インドのナレンドラ・モディ首相は、流通している全通貨量の86%を一気に無効化した。決定は混乱を招き、人々は今や価値のない500ルピーと1000ルピー紙幣の交換に何時間も列に並んでいる。(中略)
にもかかわらず、インド政府は電子マネーにますます入れ込んでいる。ブルームバーグの記事によれば、保険契約から列車の切符、ガソリンといった商品やサービスの支払いで現金を使わずに電子決済を使えば、最大10%の割引が得られるというのだ。
(MIT Tech Review)
中国とインド、合わせて26億人という人々が、一斉に「電子マネー」を利用し始めている。この状況は驚異的と言わざるを得ません。
世界の最先端は、現在は途上国に存在しており、「キャッシュレス化」は世界的潮流な現象です。
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ところで最近、インドの発展について、個人的にも実感したことがありました。
現在、私はモザンビークで銀行を作ろうとしています。(参考:アフリカで、先進国の資本主義社会とは異なる、銀行のビジネスモデルを実現させる。)
そして、銀行を作るには、まず「免許」と「お金」が必要です。
ですが、それだけでは銀行は創れません。もう1つ、実務的に重要なのが、システムです。
と言っても、実体はいわゆる帳簿なのですが、現代ではそれはコンピューターソフトウェアによって担保されています。
それがコアバンキングシステム、と言われているいわゆる勘定系のシステムです。
そして、この勘定系のシステムですが、一般的には、構築するにも、運用にも非常にコストがかかることで知られています。
たとえば、最近ではみずほ銀行のシステム統合がありましたが、投資額は4000億円に登るそうです。
みずほ銀行のシステム統合プロジェクト、投資額が4000億円台に膨らむ
みずほフィナンシャルグループ(FG)は2017年5月15日、決算会見後に開催した投資家向け説明会で、システム統合プロジェクトの総投資額が4000億円台半ばに膨らむ見通しであることを明らかにした。
品質確保のため、テスト工程を強化したことが主な要因だとし、「トラブルによるものではない」(みずほ銀行)という。
4000億円とは、巨額のお金です。
もちろん、うちはそんなお金はありません。
どうするかというと「モザンビークの銀行業」に興味を持つ出資者を探すわけです。
もちろん、出資者がコアバンキングシステムを構築可能な会社であれば尚良しです。
そこでまずコアバンキングシステムのパッケージで、かなりのシェアを持つソフトウェアベンダーに声をかけ、さらにその取引先の中で「銀行業」に興味を持ち、システム構築も可能な会社を紹介してもらいました。
その会社がインド発祥、現在はドバイにHQ(ヘッドクオーター)を置くJMRインフォテックというシステム会社です。
JMRは、600名体制で、世界30カ国以上で銀行システム構築の実績を持ちます。
9割以上の社員がインド人で構成されていますが、「世界で活躍」という表現は、このような会社にこそふさわしいのでしょう。
そして、彼らに聞いて驚いたのが
「日本」と「モザンビーク」とのシステムの価格差です。
全く同じシステムを発注しても、日本で構築するのとモザンビークで構築するのとでは、なんと価格に10倍以上の開きがあるのです。
確かに日本人の技術者の人件費は、インド人のそれと比べると高めではあります。
しかし、10倍は行き過ぎです。
つまり、日本の銀行は「システムに余計なコストを掛けすぎている」か、「ベンダーにボッタくられている」かのどちらかでしょう。
そのコストは、本質的には日本の銀行を利用する、日本国民が負担しているのです。
こういった状況を鑑みると、「日本の金融サービス」と「日本のシステムサービス」は、既にインドの会社に大きく遅れを取っていると言わざるを得ません。
残念ながら、これが現状なのです。
多くの地銀は、高コスト体質と、低収益で経営難といいます。
約10年後、全国の地方銀行の6割は貸し出しや投資信託の販売などの「本業」で赤字に転落する、という試算を金融庁がまとめた。人口減や日本銀行のマイナス金利政策による厳しい経営環境を浮き彫りにした内容だ。金融庁は、経営統合を含めた持続可能な経営手法を早期に検討するように求めている。
(朝日新聞)
JMRのような会社が「地銀」をターゲットとし、日本市場にも攻め込んで来るのでしょうか。
それとも規制で地銀を守り、ますます日本は「ガラパゴス化」するのでしょうか。
私としては、ガラパゴス化は寂しい限りではありますが。
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