私が観測している限り、「チェーンメールが隆盛していた時代の経験者かそうでないか」で反応が大きく分かれているような気がしています。
すいません、全然大した話じゃないんですが。
皆さんご存知かと思うんですが、TwitterにはRT(リツイート)という仕組みがあります。
誰か他の人がしたツイートを、自分のフォロワーにも展開する機能ですね。
これ、今でこそ存在が当たり前になってますけど、昔はなかったんですよ。
何年か前は、手動で他人のツイートを張り付けて、そこにRTとかの目印をつけてコメントつきで流すやり方、今では「非公式RT」とか言われるやり方しかありませんでした。
コメントがつきまくって元ツイートの面影が殆どなくなった状態で話が展開するのとか、懐かしいですよね。
で、ここ最近という訳でもないんですが、Twitterで「〇〇な人はRT」というタグつきでRTが回ってくることがかなり頻繁にあります。
何かの画像について、「これがなんだかわかった人はRT!」とか。
何かの主張について、「これに賛同してくれる人はRT!」とか。
何かの習慣や癖について、「これに当てはまる人はRT!」とか。
まあ要は、見てくれる人に積極的にRTをお願いする系のツイートですよね。
なんでしょう、個人的には、この「〇〇な人はRT」という言葉を見た瞬間に、たとえそのツイート自体は面白かったとしても、RTする気が何故かゼロを通り越してマイナスになるんですが、みなさんそんなことないでしょうか?
いや、別に私、自己顕示欲を否定する気はないんですよ。
自分のツイートをたくさんの人に見て欲しい、とかたくさんの人の反応が欲しいとか、そういう欲求自体はむしろ自然なものだと思うんです。
だから、「このツイートをみんなに見て欲しい!」という欲求はあっていいし、表明していい。
ただ、何故か、「〇〇な人はRT」に対する拒否感だけ物凄いんです。ワードを一般化出来るなら積極的にミュートしたいくらい。微妙に表記ブレがあるんでミュートしにくいんですよ。
私の観測範囲内では、私と同じくらいこの言葉を嫌ってる人、そこそこの数観測出来るんです。
なんでじゃろうな。
と思って自己分析してみたんですが、割と最近になって、「あ、これチェーンメールを見た時の感覚と同じだ」ということに気付いたんです。
つまり私は、「〇〇な人はRT」をチェーンメールと同じようにとらえているのではないか、と。だからこんなに「〇〇な人はRT」に拒否感があるのではないか、と。
皆さん、チェーンメールとか、もっと遡って不幸の手紙とかって覚えてますか?ないし、ご存知ですか?
最近あんまり話題に上らないですよね。
不幸の手紙っていうのは、「この手紙を、同じ文面で〇人以上の人に出してください。でないとあなたは不幸になります」っていう、自己増殖の為の文面を最後に仕込んだいたずらの手紙です。
幸福の手紙やら色んなバリエーションが出て、昭和の一時期妙に広まっていた気がします。
で、チェーンメールっていうのは、上記の不幸の手紙が電子メールの姿に変わって、あの手この手で「私を広めてください」って言ってくるヤツですね。自己増殖するウィルスみたいで、あれ嫌いだったんですよ、私。
例えば、不幸の手紙と似たような感じで、「このメールを止めると、あなたは不幸になります/被害を受けます」みたいな脅迫的な内容のメールとか。
逆のバージョンで、「このメールを回すとこんないいことがあります」とか「賞金がもらえる権利を手に入れられます」みたいな欲求喚起型のメールとか。
あるいは、ちょっと手の込んだバージョンで、「行方不明の〇〇を探しています」「〇〇の犯人を捜しています」みたいな、一見人助けみたいな体裁をとっているメールとか。
これ、当たり前ですが99%以上がただのいたずら・でたらめで、賞金の権利も嘘であれば行方不明の〇〇も存在しない、というものが殆どだったんですが、電子メールって展開する手間が少ないんで、一時期爆発的に広まったりしてたんですよ。
スパムメールの一種としてネットワークに負荷がかかったり、要らんメールがどかどか来たりといった悪影響も勿論ですが、中にはそれが原因で実際の被害が出たことまであったんです。佐賀銀行の取り付け騒ぎの時とか、チェーンメールが発端だったんですよね。
佐賀銀行:取り付け騒ぎ
2003年(平成15年)12月25日未明に『佐賀銀行がつぶれるそうです』というチェーンメールが発生し、同日の営業時間より取り付け騒ぎが現実に発生した。
この取り付け騒ぎにより、引き出し・解約されたりした預金は約500億円に上る。事件の数か月前に実際に佐賀商工共済協同組合の破綻があったことも、騒ぎを大きくした一因とされている。
2004年(平成16年)2月に20歳代の女が信用棄損容疑で書類送検されたが、嫌疑不十分として不起訴に終わっている。この事件に際しては、成り立ちが類似している豊川信用金庫事件が報道等で引き合いに出されるなど局地的に注目を浴びた。
ああいうの、メールを出した大本の愉快犯はさぞかし喜んだんだろうなーと思った記憶があります。まあ、佐賀銀行の件については犯人検挙されましたが、結局不起訴になりましたしね。
このチェーンメールが広がる仕組みって、共通して
・メール自体に「自分を広げて欲しい」という旨の動機づけが含まれている
・その動機づけは、恐怖感なり、不安なり、善意なり、承認欲求なり、なにかしら受け取った人に感情的に付け込む類のものになっている
・展開自体は簡単で手間がかからない
上のような要素を持っておりまして、それが原因で爆発的に流布されたんですよね。
個人的には、善意につけこむカテゴリーのが特に嫌いでした。最近はあんまり聞かなくなりましたが、普通の迷惑メールとあまり区別がつかなくなったからですかね?多分なくなったわけじゃないと思うんですが…。
webにおいても、ユーザー側の自己防衛として、「チェーンメールは良くないもの」「チェーンメールを回すのはやめよう」という啓蒙活動が一時期行われたことがありました。
いつくらいでしょう、2002年とか2003年とか、それくらいからでしたっけ?地道な啓蒙活動によって、チェーンメールはようやく下火になり、昔程爆発的に広まることはなくなった、という訳なのです。
で、私自身は、あの「〇〇な人はRT」というツイートについついチェーンメールの面影を重ねてしまって、条件反射的に当該ツイートを敵視してしまうことになった、という訳ですね。うん、自己分析してすっきりしました。
別に規約で禁止されているわけではない(確か)ので、「〇〇な人はRT」というツイートをやめようなどと呼びかける立場ではございませんが、そういう条件反射を持っている人間もいるということも出来れば知って頂きつつ、インターネットの歴史にふと懐かしさを感じてもらえればなー、と思った次第なのです。
あと、出来れば「〇〇な人はRT」ツイートに共通のタグつけてください。「#RT推奨系ツイート」とか。それでミュートするんで。
今日書きたいことはそれくらいです。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Andreas Eldh)