目標というといかに「達成」するかに重きが置かれることが多いように思う。

だが私は達成することよりもむしろ立てることの方が難しいと感じる。目標は立ててしまえばあとは実行するのみである。目標から逆算すれば、今やるべきことは見えてくる。

やるべきことがわかれば、すんなりと達成できることはあまりないにしろ、よほど非現実的な目標を掲げるでもない限り、軌道修正しながら進んでいけばなんとか達成することは可能だろう。

 

目標を立ててしまえばあとは進むのみ。だが立てるのが難しい。これがどの程度共感してもらえることなのかわからないけれど、自分に関して言えば、目標を立てるのには心理的なハードルがある。

 

何かに夢中になっていて、知らぬ間に“目標に向かって頑張っている状態”になっている場合は別。そうではなくて、自分はどうなりたいのか考えて目標を考えるケースを想定している。 

どうなりたいのか……

現実を無視して理想だけを言えば、たとえばお金はあればあるほど嬉しいし、社会的地位も高ければ高いほど嬉しい。(お金と社会的地位はわかりやすい例として挙げている。)

 

実現可能性がどれだけなのかはさておき、使いきれないほどのお金と世界で一番の社会的地位を手に入れることを目標にしたとする。私ならその目標が設定された時点で生きる意味を見失ってしまう。

目標が設定されると人生が決まってしまったような感覚になるのである。

もちろん、理想が実現する可能性は限りなくゼロに近いから、実際は理想には及ばないはずだ。つまりどちらに転んでも嫌なのである。

理想通りだとしたら、人生が決まってしまってつまらない。人生がわかっているなら今から死んでも変わらないんじゃないか、と生きる意味を見失ってしまう。

理想通りにいかない人生だとしたら、“理想に向かって頑張っているものの、理想より劣る人生をおくっている”ということで悲しくなる。

 

社会人1年目のときに、目標を立て、実現させるためにどう行動するべきかを考えて発表するという研修があった。

私はこの研修で目標を立てることの難しさを痛感すると同時に、目標を立てること自体が悲しいという気持ちになり、先輩に上記の内容を説明した。こういう理由で自分は悲しくなるのだ、と。

最初はなかなか伝わらなかったが、最終的に先輩は「その気持ち、わかるよ」と言ってくれた。具体的なアドバイスももらった気がするが、忘れた。

ただ気持ちを理解してもらえたことで救われた。だが最初なかなか伝わらなかったこともあり、多くの人に共感してもらえるような内容ではないことも理解した。

 研修はなんとか切り抜けたが、よく言えば目の前のことに一生懸命取り組むタイプ、悪く言えば目の前のことしか見えていないタイプで、2年と数ヶ月社会人をやってきた。

目標に向かって頑張ってきたというよりは、目の前だけを見てとりあえず走ってきたという感じである。そんな自分に、時折不安を抱く。

 

*****

 

以前ある人と、切手やカード、フィギュア等、何かを集めることは好きかという話になったことがある。

そのとき相手は「お金さえあれば何でも手に入ると思うと、コレクションには興味を持てない」と言っていた。なんだかわかる気がする。完成した未来が具体的に想像できると、興味を失ってしまうのだ。

 

それは文章を書くことについても同じである。書くことが決まっていない状態で思いつくままにキーボードを叩いているときは、とても楽しくてどんどん先に進んでいくが、書く内容が決まっている場合は、脳内では既に記事が完成しているため、キーボードを叩く気分になれないのである。

 

そんなことをぼんやりと考えていたところ、つい最近ある動画を発見した。

それはもう随分前(2012530日)の「ホンマでっか!?TV」で、渡部篤郎さんが「コロコロと気が変わる性格を直したい」という人生相談をしていたものだった。

渡部さんは予定を立てるのが好きで、お休みの前の日にはたくさん予定を立てるそうだが、そのうち1つでも実行できれば良いほうで、頻繁に予定を変更してしまうそうだ。

レストランという日常レベルの予定から、ハワイ旅行という大きなイベントまで、予約していたのに当日気が変わってキャンセルしてしまうとのこと。

 

それに対して心理評論家の植木理恵先生が「予定を立てた段階で満足している場合が多い」と分析されていた。つまり、予定を立てることで頭の中でその出来事が終わってしまっているというのである。

 

自分が渡部さんと同じだと言いたいわけではない。それはさすがにおこがましい。

大事なのはここからで、植木先生は改善案として「人間は感性に頼って『したいかしたくないか』で決めると、『しない』と選択しやすい。だから、『するべきかしないべきか』という理屈に頼るということをしてみると良い」とアドバイスされていた。

 

「したい・したくない」ではなく、「べき・べきではない」で選択する。このように自分への問いかけの仕方を変更すると良いというアドバイスだった。

この方法はとても良さそうなことだと思えた。今の時代、感性を大事にすることが重視されているように感じる。「好き」という気持ちが大事だと。

「好きを仕事に」なんて言葉もよく聞く。でも感性に従うことが必ずしも自分に幸福をもたらすとは限らない。理屈で考え、戦略的に生きた方が長期的に見ればメリットが多いのかもしれない。自分が悲しいかどうかなんてどうでもいい。目標を『立てたいか立てたくないか』ではなく、『立てるべきか立てないべきか』で問いかけるべきだったのだ。

 

尚、この記事も『書くべきか書かないべきか』と問いかけた結果できたものである。

 

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(2019/10/15更新)

 

【著者プロフィール】

名前: きゅうり(矢野 友理)

2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。

【著書】

「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)

LGBTBです」(総合科学出版、2017710発売)

Twitter: 2uZlXCwI24 @Xkyuuri  ブログ:「微男微女

 

(Photo:Capture Queen