タイトル長いのでなんか略称作りたいんですが、なんていえばいいでしょうね。批判過敏症候群とでもいえばいいでしょうか。
これは割と一般的に言っちゃっていいと思うんですが、「多数の好意や賛意よりも、少数の非難や悪意の方が表現者の心に残りやすい」というのは多くの創作分野における共通項です。
例えばブログの記事とかでもそうなんですが。余程おかしなことを言っていない限り、実際のところ読者というものは案外作者に好意的です。
例えば、記事に対するはてなブックマークの反応が100あったとして。その反応の割合として典型的なものは、経験則としては
・無言:40% 〜 50%
・賛意、ないし好意的な反応:30% 〜 40%
・反対、ないし批判的な反応;5% 〜 10%
・内容を踏まえているように思えない理不尽な罵詈雑言:1% 〜 5%
割とこんなもんです。で、無言ブクマというのは、たとえばその後のツイッターでの反応とか、あるいは単純にブクマ数に寄与していることを考えると、どちらかというと好意寄り反応と考えられることが多そうです。
そこから考えると、実は反応の内の8割〜9割方は好意的な反応だったりします。
まあ、書いている内容とか、書いているジャンルとか、反応が来る媒体とか、様々な要素によって比率は上下するんですが。
「わざわざネガティブな反応をする人は、よほど批判的な人が定着しない限りはそれほど多くない」というのは言えると思います。基本的には、読んでる人って賛同してくれる人の方が多いんですね。
ただ、それでも、というか、だからこそ、というか、時折発言者・発信者は、「ごくごく一部の悪評」ばかりを気にしてしまうことがあるんですよ。
ちょっと前なんですが、こんなまとめを読みました。
— あなーば (@gamespace_anaba) 2017年9月12日
ゲームカフェの店主さんが、値上げについてのツイートをしたところ拒否反応が凄かった、というような主張をされており、その後紆余曲折を経て色々と妙な方向に話が転がっていく過程、みたいな内容ですよね。
私、この時たまたまリアルタイムで状況を観測してたんですけど、実は違和感凄かったんですよ。ツイート個別にさかのぼって頂ければわかると思うんですが、この店主さん、当初は結構好意的、というか賛成寄り中立みたいなリプライも多数受け取っているんですよね。
周囲も含めて見た感じ、反対意見っていうのはぽつぽつっていう感じで、ざっくりした感覚としては7・8割の人は賛成寄りの反応をしているように見えました。
「別に周囲の意見なんていちいち聞く必要ないのでは」「お金を払っていない人を客として扱う必要はない」みたいな、極めて店寄りの意見を言っている人も割みかけました。
ところがこの店主さん、どういうわけかどんどん「自分に対する反対意見」についての反応だけを先鋭化させていくんですね。
確かに反対意見とか、ご本人が言われているような理不尽な要求を投げつけている人もいるにはいるんですが、私に観測出来た限りではせいぜい1件とか2件とか、全体からするとごくごく一部です。
まあ勿論DMやらでもっと色んな反応が来ていた可能性はあるんですが、それでも「ごく一部の反対意見」だけをクローズアップして、どんどんご自分から状況を悪くしていっているように見えたんです。
当初は店主さんに好意的だった意見も、だんだん「あれ、なんかこの人おかしいぞ」みたいな感じになっていってしまうのも、上記で書いたような過敏な先鋭化が原因だったように見えました。
これを見て、あーーと思いまして。いわゆるアレです、「あ、これ進研ゼミでやったヤツだ!」的な瞬間です。
webにおける、「何故か反対意見だけを認識してしまう症候群」の一例だなーと。
これ、似たようなケースで言うと、例えば漫画のアンケートでも同じような問題があるそうです。昔お世話になっていた編集者さんからは、こんなことを聞きました。
・最近は作家さんもtwitterや他のソーシャルブログをやっていることが多く、以前と比べて「ファンとの直接のやり取り」の機会が飛躍的に増えた
・その為、以前ならまだぎりぎり可能だった「ファンレターを見せる際の、ファンからの声のコントロール」のようなことは、ほぼ完全に不可能になった
・作家さんの中には「悪評を見るとへこんで悪影響が出るのに何故か自分から悪評を求める」というような困った習性がある人がいて、そういう人がファンと直接やり取りをするのはやはり編集としては結構心臓に悪い
・百の好評よりも一の悪評の方が気になるし記憶に残るし反論したくなる、というのはプロもアマチュアも同じ
百の好評よりも一の悪評の方が気になる、というのは示唆的ですよね。
99賛成があれば1くらい反対があっても気にならなそうなものですが、発信者って案外そうでもないんです。勿論賛意は嬉しいんですが、それでも何故か悪評だけ気になっちゃう。
ただ気になるだけならともかくとして、「みんな敵ばっかりだ!!」みたいな変な勘違いをしてしまうと、上であげたまとめのような、よくわからない方向に突っ走ってしまってどんどん状況が悪化、みたいなことになってしまいかねないと思うんです。
勿論、「聞くべき批判」というものはあります。聞いて参考にするべき、受け入れて今後に取り入れるべき悪評というものはあります。そういう批判にはアンテナをきちんと立てられるに越したことはありません。
けれど、聞くべき批判や取り入れるべき悪評と同じか、下手をするとそれ以上の数、「聞けば聞くだけ疲れるだけで何も得られない」罵詈雑言というのもあるもので。
例えばそもそも内容を把握しないで投げつけられる罵倒とか、一部の単語だけ拾い上げて脳内構成された論旨に対する非難とか、いちいち受け取ってると疲れちゃうと思うんですよ。
そういう部分については、適度に脳内フィルタリングして見なかったことにするのも、webで生きる上での重要なテクニックなんじゃないかなーと。
しんざき自身について言えば、まずなによりも、「読んで下さる皆さんは、味方だ」と思っています。読んでくださるというだけでも有難い限りですが、更にしばしば賛意を頂けるとか、ありがた過ぎて読者の皆さんに足を向けて寝られませんの直立して寝る必要が生じます。困る。
で、「あ、これは真剣に相手すると疲れちゃいそうだなー」と思った批判や非難については、「まあこれだけ味方してくれてる人がいるし」ということで、軽やかに流させて頂いていますし、受け止め過ぎて潰れちゃうくらいなら皆さんそうした方がいいんじゃないかなーと思うわけなんです。
勿論、世の中には強靭な精神を持った方もいらっしゃるもので、「俺を罵倒しやがったヤツは全方向3倍返しで罵倒し返してやる」くらいのグラップラーな方もいて、すげーなーと思ったりするのですが。まあしんざきに関しては、引き続きそんな感じでゆるゆるやらせて頂ければと思う次第です。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Britt-knee)