当メディアに寄稿をしていただいている熊代亨氏から、最近また、本を贈っていただいたので読んでみた。
タイトルは『「若者」をやめて、「大人」を始める』
「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?
- 熊代亨
- イースト・プレス
- 価格¥1,400(2025/07/14 02:50時点)
- 発売日2018/02/11
- 商品ランキング217,521位
この本には「若者」であるかのように振る舞い、その結果として痛い目にあう中年が数多く登場する。
実際、彼らは多くの人の目から見ても、大人げなく、イタい存在なのだ。
熊代氏は、本の中で
『「大人」が「若者」と同じように振る舞うと、破滅が待っている』と述べ、読者へ大人への成熟を促すメッセージを出す。
熊代氏は、書籍の中で「大人」になれない人が増えているのは、
・マスメディアが若者を礼賛する
・社会から大人を強制するような通過儀礼が失われている
・年長者と年少者の接点が少ない
と言った、昨今の社会事情を挙げている。
そして、熊代氏は一つの指摘をする。
「高学歴、かつ大都市圏で勤める人は「大人」を始める時期がどうしても遅れる」と。
それは、仕事を始めたり、結婚をしたりするのが遅く、アイデンティティの確立が遅れるからであると、氏は言う。
■
一方で、私はこの点に関しては「企業の責任」がかなり大きいと思っている。
率直に言えば、
「企業が若者ばかり欲しがる」から、都会の高学歴は「成熟」できないのだ。
中途採用市場を見てみると良い。年齢だけ考えても、殆どの企業が求めているのは、今でもせいぜい四〇歳前後までだ。
経験や成熟度を考えれば、別に五十代、六十代を採用しても良いはずなのに。
もちろん「年齢は関係ない」という企業もある。
でも、そういった会社であっても、殆どの経営者や採用担当者は言う。
「同じスキルなら、若い方がいい。だって、オッサンオバサンは、物覚えが悪く、頑固で、プライドが高いから。」
このように、企業は中途採用市場に
「チャレジングな人が欲しい」
「新しいことに意欲的に取り組める人が欲しい」
「守りに入ってはならない」
「フットワークが軽くなくてはならない」
というメッセージを発信し続けている。
そして、これらの活動は少し考えてみればわかるが、すべて「若者らしい」振る舞いだ。
対照的に「オッサン」的な発想は、面接ではNGだ。
・自分よりも若い人に頑張ってもらえるように振る舞います
・新しいことは苦手ですが、今まで作り上げたものには自信があります
・リスクを減らし、失敗を恐れます
・古き良きものを出来る限り残します
こういった「成熟した大人」を求める企業は殆どない。
でも、上のことは「親」や「コミュニティの長」としては、大切なことではないだろうか。
親は自分より子供に活躍してもらいたいと願うのが普通だし、家庭を「失敗しても良い」と、大きなリスクに晒すことはしない。
更に「若者的な振る舞い」が求められる最たる存在が、起業家たちだ。
いかに既存の枠にとらわれない発想ができるか。
いかに慣習にとらわれないで実行できるか。
いかに既得権を破壊するか。
起業家は、「大人」であるよりも、「若者」のように振る舞うことが良しとされる。
つまり「資本主義」そのものが、成熟した大人よりも遥かに、若者を求めている。
■
昔、「ちきりん」という著名ブロガーが下のようなツイートをしていた。
私はこれを見、「成熟」について考えさせられた。
(さっきのRTに関して) あたしに関していえばそれは違います。人は「自分の過去の成長カーブ」が、「自分のこれからの成長カーブより大きい」と感じ始めると、自分の成長より、他者の成長を手伝うほうが価値が高いと判断しはじめる。つまり(続く)
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2013年9月16日
(承前)つまり、自分の先行きの成長カーブに限界が見え始めると、「教育に関心がある」とか、「後進に自分の学んだことを伝えたい」とかいう気持ちになるんです。(続く)
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2013年9月16日
(承前) つまり「教育に関心がある」とか言い出したら、その人自身の成長は終わりってことです。本人が自覚したからこそ、そういう発想になる。(続く)
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2013年9月16日
(承前)あたし自身はもう何年も前に自分の可能性については見切ってしまったところがあり、だから開き直って、若者を中心に周りの人を「煽る」のが、(自分のできることの範囲内では)一番価値があることなんだろうと思ってる。というお話でした。(この件おわり)
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2013年9月16日
この件に関して、元LINEの執行役員だった田端信太郎氏が、次のようにツイートした。
ちきりんさんが突いてる「教育に関心がある、と言い出したら、その人はアガってる」論って、いろんなギョーカイで最大のタブーだったりして、幾らKYなオイらでも社会が狭くなりそうだから言えなかったんだけど、さすが!ちきりんは、俺達が出来ないことを平然とやってのけるぜっしびれるぅ!
— 田端 信太郎 (@tabbata) 2013年9月16日
「教育に関心がある」と言うのは、つまり「大人」になったということにほかならない。
そして、企業の中では「終わった人」「アガった人」と呼ばれる。
そう。
「高度の資本主義にさらされる、高学歴、かつ大都市圏で勤める人は、企業の中で「大人」になってしまったら終わり」なのだ。都会の高学歴が「大人」への成熟を求められないことの本質は、ここにある。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
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