「今日も本を買ったよ」と見せると「そういうの、好きだよね」と言われる。
毎週増えていく本棚の本は、似たようなテーマで書かれたものばかりだ。
本屋に行けばいつも同じコーナーに寄り、いつも同じような本を買っているのだから、「またそういう本ね」と苦笑いされるのも納得である。
あらゆる情報にアクセスできる環境だが、あらゆる情報にアクセスするわけではなく、自分の興味のある分野の情報にだけ触れようとする。
本だけでなく、インターネットでも同様だ。それはそれで悪いことではないけれど、偏りがあることは否めない。
本棚は、自分から積極的に取りにいった情報の集まりである。本から得られた情報は自分の中に積み重なっていき、血肉となる。自分から取りにいった情報は、着実に自分を成長させてくれる。
一方で、自分から取りにいった情報ではなく、思いがけないところから突然やってきた情報が、自分を大きく変えてくれることがある。
誰かの何気ない一言や偶然出合った言葉がきっかけになって、何か大事なことに気づく。何気ない、でも、心にささる何か。思いもしないところから突然やってきて、その時は少し衝撃を受ける。
けれど、それをきっかけに価値観が大きく変わる、そんな何か。過去を振り返れば、そのような出合いがあったのではないだろうか。
私は今でもずっと覚えている、衝撃的な出来事がある。衝撃的といっても他人からしてみれば小さなことだが、今でも鮮明に思い出せるということは、自分の中で大きな出来事だったということだろう。
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小学校6年生の頃、もう13年も前のことだが、私はその時まで「自分が他人からどう思われているか」を考えたことがなかった。本当に、一度もなかった。
目の前で起こっていることだけ、自分の耳に入ってくる情報だけが全てだと信じて疑わなかった。好意的な表現をすればピュアな子どもだったと言えるし、単に周りのことが見えていない近視眼的な子どもだったとも言える。
とにかく、私は他人の視線というものを意識することができていなかった。
ある日、仲良くしていた1人の女の子が私にこう言った。
「Yちゃんの一番嫌いな人、あなたなんだって」
Yちゃんはクラスメイトで、特別仲良しでもなかったが、仲が悪くもない、穏やかで優しい雰囲気の女の子だった。
私はびっくりした。Yちゃんが私を嫌っていることにびっくりしたわけではない。誰かが自分を嫌うという「隠れた感情」の存在に初めて気づき、衝撃を受けたのである。
意地悪なことを言う人は、周りにいた。意地悪な言葉は意地悪な言葉として、私にぶつけられた。
ただ、Yちゃんは私へ攻撃的な発言をしたことがなかった。何も発せられていないということは、何の感情も抱いていないのだろう、と思っていた。
思っていたというよりは、Yちゃんの感情について想像したことがなかった、と言うべきかもしれない。とにかく、Yちゃんからは何の感情も伝わってこなかった。
当時の私は、今振り返れば嫌われる言動が多かった。わがままでジコチュウで、言いたいことは言いたい放題の毎日だった。それでも、誰かに嫌われているとは思ったことはなかった。
無視されたら、無視されたという事実に傷ついたし、嫌なことを言われたら、その嫌な言葉に傷ついた。目の前で起こっている出来事に傷つくことはあった。
でも
「無視するということは私のことが嫌いなんだな」
「嫌なことを言ってくるということは、私を嫌がっているんだな」と、相手の気持ちを想像することは一切なかった。
相手の気持ちを考えたことが一度もない人間は、きっかけがないとそういう視点を持って世の中を見ることができないのである。
私は、「Yちゃんの一番嫌いな人、あなたなんだって」という一言を聞いて、生まれて初めて「自分を他人からの視点で見る」ことを知った。
すると、大げさではなく、本当に、世界が180度変わって見えた。急に「他人から見た自分」を意識するようになった。自分の言動が他人からどう思われるのかを意識することができるようになった。
「他人の視線を気にしすぎるな」というアドバイスはありふれているが、ありふれていると言えるほどに、他人の視線が気になって悩んでいる人は多い。
しかし、他人の視線が気になる人は、言い換えれば「他人の視線を気にすることができる人」である。
他人の視点というものの存在を全く意識していなかった人間から見れば、彼らは他人の視点の存在に気づいた人だけが住むことのできる新しい世界の住人であり、その世界に行くことができた人は、行く前と比べて圧倒的な進化を遂げている。
他人の視線については、大多数の人がだんだん身につけていったもの、いつの間にか意識できるようになっていったものだと思う。
ある日突然、ではなく、徐々に、時間をかけながら。
でも他のことで、世界が180度変わるような、小さなことだけど衝撃的な、そんな一言をもらったことはないだろうか。
毎日読んでいる似たような内容の本や記事は、自分の価値観を形成したり、自分をブラッシュアップさせたりするのに役に立つ。知識が身に付き、思考も深まる。一生読み続けていきたいな、と思う。
少しずつ自分の中に積み重なっていく言葉は大切にしたいし、そういう積み重ねが自分を成長させるのだと思っている。
ただ一方で、自分をガラッと変えてしまうようなショッキングな言葉は、思いがけないところで出合うものだったりする。
そういう言葉が、自分を進化させ、別の世界に連れていってくれる。何気ない一言が自分を新世界へ導くきっかけとなってくれる。
その新世界で読む本は、きっとこれまでとは違った本になっている。似たような本が並んでいる本棚も、5年後、10年後には今とは随分違った本で埋め尽くされているはずだ。
そして10年後、「今日も本を買ったよ」と見せると、「またそういう本ね」と苦笑いされるのだろう。
そうやって、成長と進化を繰り返すことで、見える世界は広がっていくのだと思う。
製薬・バイオ企業の生成AI導入は、「試行」から「実利」を問うフェーズへと移行しています。 (2026/01/19更新)
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【登壇者】
奥田 真輔 氏
システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、
メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。
【お申込み・詳細】
こちらのウェビナー申込ページをご覧ください。
【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
【著書】
「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
「LGBTのBです」(総合科学出版、2017/7/10発売)
(Photo:T.J. Lentz)














