仕事上、問題はなるべく発生しないほうがよい。
だが、もし発生してしまった場合には、可能な限り速やかに、より良い方法で解決するべきだ。
そして、同じようなミスやトラブルが今後発生しないように、改善策を練ったりマニュアルを作ったりと最善を尽くす。
それが取引先(顧客)のためであり、会社のためであり、何より自分自身のためだ。
しかし、どうやら世の中にはそうではない人がいるらしい。
問題が発生しても解決しようとしない、解決したがらない人たちが、社会人であっても少数ながら存在する。
少なくとも私の十年余りの会社員生活や、友人や家族の話の中では、多くの企業において必ず一人か二人はそういうタイプの人がいた。
もちろん、「能力不足」というケースもある。
だが、「本当は解決できるのに、敢えて問題を解決しない人」が一定数、存在するのは不可解だ。
いったい彼らはなぜ目の前の問題を放置するのだろう。
問題を放置するとメリットがある
まず、問題が解決しないことによって、当人が何らかのメリットを得ている、例えば「残業時間が長い」という問題を放置するケースである。
このケースでは残業代を稼げる、というわかりやすいメリットがある。
さらには、一昔前までの日本企業の多くでは「残業すればするほど仕事熱心」などという謎の美学があったため、評価が上がることすらあった。
当人にとっては二重のメリットだ。
ついでに家庭内に居場所がなくあまり早く帰宅したくない人にとっては、良いこと尽くめだ。
責任を引受けたくない
次に、「責任を引受たくないから」というケース。
問題を解決するために何か案を出したり、最終的な決断を下したりしたら自分の責任になりそう。それは自信がない、嫌だなぁという短絡的な理由だ。
もちろん、問題解決を先延ばしにすることによってもっと大きな責任問題になる可能性もあるし、このタイプの人が部署のトップだった場合は「だれも決断しない」状態となり、地獄の袋小路に入る。
「先送り」という悪癖で、その場限りのことしか考えられないタイプの人は少なからずいる。
考えるのが面倒
そして、単純に「考えたくない」「考えるのが面倒」というケース。
過労が原因のケースもあり、それは同情するが、困るのは「今までこのやり方でやってきたから」と、従来のやり方に根拠もなく固執する、悪い意味で頑固な人だ。
例えば、時間を掛けてFAXを各所に送る仕事を長年担当していた人に「今はパソコンから一斉に一瞬で送れますよ」と周りが提案したら涙目で怒り出した、という話がある。
愚痴を言いたいだけ
だが、一番迷惑なのは「愚痴を言いたいだけ」の人だ。
彼らは決して周囲のアドバイスに耳を傾けず、別の解決策を講じるわけでもなく、ただ「あー大変。困った困った」としきりに騒ぐ。
その人たちは、「あー大変大変! 私困っちゃう~」と言っている自分が好きでたまらなく、また、苦労している自分が可哀想で可愛くてしかたがない。
例えば、クレーム処理。
周囲が気を遣って「ではこういうやり方で解決してはいかがですか」と提案しても、素直にそれをやることはまずない。
彼らはひとしきり騒いで周囲も巻き込み、時間を使うだけ使う。
どうしようもなくなって、最終的には周囲がアドバイスした方法に従うのだが、時すでに遅し。
顧客も待たされすぎて怒り心頭に発しており、最悪「二度とそちらとは取引しない!」と契約を切られることもある。
見捨ててしまえば周囲は楽なのだが、もちろん、部署でトラブルが発生しているのに素知らぬ顔で定時退社するわけにもいかない。
解決するまで他の人もそれぞれの仕事が滞ってしまい、退社が遅くなったり、翌日の業務にしわ寄せがきたりする。
あまりにひどいので「このようなことがもう起こらないよう、私がマニュアルを作りましょうか」とこちらが提案しても、改善される様子はない。
そしてまた似たようなトラブルが発生したとき、「どうしようどうしよう、困った困った」と言うだけいって、時間を費やして…と無限ループに陥る。
「だから言ったではありませんか」という言葉が、幾度となく喉元まで出かかる。
これは私の周囲だけではない。友人たちからも似たようなケース、同じようなタイプの人に悩まされているという。
「アタマの回転が悪いのだろうか?」と思ったこともある。
だが、世間的には彼らは「優秀層」に入るだろう。
レベルの高い大学を出ていたり、難関と言われる資格を取得したりしている人が含まれていることがあり、単純に頭の回転の問題でこのような事態に陥っているとも考えにくい。
だが、現実は上のようになっている。
社内の評価も社外の評判も、自分の時間やプライベートまでも犠牲にしているのに、「愚痴を言う」ほうが彼らは好きなのだ。
長いこと、私は彼らのそうした行動を不可解だと思っていた。
だが、ある時気づいた。
片思いしている人を想像すると納得がいくのだ。
片思いでは「白黒つけるのが怖い」もしくは「うまくいきそうだけど、このどっちつかずの甘酸っぱい状況にもう少し浸っていたい」という心理がたびたび働く。
だからこちらが
「じゃあこうやってアピールすれば?」
「こんな文面で連絡してみたら?」
と提案したところで、でもでもだって…と無限ループする。そして悩ましげにため息をつきながら「あーほんと辛い。ほんと切ないわぁ」と嘆くのである。
要するに、動きたくはないが、愚痴は言いたい、というわけだ。
これを、彼ら彼女らは仕事でもやっているのだ。
例えば、ルート営業で成績が伸びないと悩む人から相談を受けたときの話だ。
その営業の女性は、「毎日欠かさずお客さんのところに顔を出してるし、景品だって付けてるし、価格交渉にも応じるって伝えてるのに、そもそも全然話を聞こうとしてくれないの」という。
しかしよく聞けば、自分が回りたい時間に、回りたい順で顧客の元を訪ねているのだ。
「顧客が○○商店なら、その時間帯は一番忙しいんじゃないかな。訪問時間をずらしてみたら?」
そういう、いたって基本的なアドバイスをしてみたが、
「うーん…それはちょっとね。私も他にたくさんお客さん抱えてるし、急に変えるのはなかなか難しいのよ」
色々と言い訳をしつつ、こちらの意見を取り入れることはなかった。
挙句、再びぼやくのだ。「あーあ。こんなに頑張ってるのに、何で報われないんだろう」
恋愛であればその「あー、辛い」が当人もしくは恋の相手にしか影響しないので、大して迷惑でもないのだが、仕事の場合は周囲に大小さまざまなダメージを与える。
プライベートの付き合いと違って職場では周りの人間はそういった人と関わり合いを辞めることができないため、 内心、舌打ちされているかもしれない。
また、大変な尻ぬぐいをさせられた同僚からは恨まれているかもしれない。
「愚痴を言って周りを振り回すのは、真に不毛な行為」と自覚してくれればと、真に思う。
愚痴を言いたいだけの人には、非情に接することにした
こうして、呆れるようなことが何度も発生した結果、私は、「愚痴で人を振り回す」職場の人への対応を思い切り非情にすることにした。
トラブルが解決しなくても、相手にしない。
自分の仕事が終わったらさっさと退勤してしまう。
当人が大騒ぎしていても、だ。
部署全体のトラブルに発展していたところで、尻ぬぐいは一切しない。何としても当人だけで解決してもらう。
たとえ当人から冷たいと罵られようとも、過剰に気を遣って付き合ってあげる必要はない。
それで相手との人間関係がぎくしゃくしたところで構うことはない。
社内の人たちの目が気になるかもしれないが、こちらに理があることは皆もわかっているだろう。
他の人たちも同じように振り回されてきたのならなおさらだ。
周囲から完全に見放されて本当に痛い目にあったとき、ようやく当人も、どれほど無駄なことをしてきたのか気付ける可能性がある。
困った人を変えるのは難しい。自分が変わるほうが手っ取り早い。
結局、そういうありふれた結論に至るのだった。
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(2025/3/27更新)
【著者】
西 歩 (にし あゆみ)
大学卒業後、教育関連企業の会社員時代を経てフリーの編集者となる。
趣味はゲーム、漫画、服飾史研究。好きな時代は古墳時代~平安時代。
(Photo:Brian Toward)