先日、部下がみんな辞めて「最後の一人」になった時の話という記事を書きました。
前職での事。
統括マネージャーが抜ける事になり、次に自分がそこの立場になる予定だったんだけど、結局自分の知らない所で「丸山さんがトップになるなら辞める」と言われ、最終1人ぼっちになった事がある。
あの経験は色んな事を気付かせてくれたけど、あれを無くして今の自分はないとも思う。
— 丸山享伸 / UNIONNET Inc. (@maruyaman1984) 2019年3月2日
自戒の念を込めた、備忘録的な内容でしたが、
“自分は上司として尊敬され慕われていると思っていたが、それは思い込みに過ぎなかった。実際は、尊敬・信頼を得るための「対話」が足りていなかった。”
という話です。
そして、この記事を書いている際にふと思い出した出来事がありました。
勉強会で聞いた、「できない部下」の話
以前、何か自社でも活かせることがないかと、私は「若手層の育成・教育」をテーマとした勉強会に参加しました。
そこには、管理職・小さな会社の経営者など、業種も違えば年齢も違う多種多様な管理職が集まっていました。
そして、勉強会の途上。
3人でのワークショップにおける意見交換のとき、以下のようなやり取りがありました。
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男A:若い子って、ビジネス教養は割と早く身に付くんですけど、言葉を表面で捉える癖がありませんか?
丸山:どういうことですか?
男A:日報や議事録は普通、人に見せる前提で作ると思います。だけど彼らから実際に上がってきたものを見ると、人に見せる前提で作っていない“ただのメモ”、ということがよくあります。
男B:それはありますね。もうちょっと想像力を働かせて欲しいなぁ〜、と感じることはありますよね。
男A:そうです、そもそも勘所が悪いというか“できない部下”が多いんですよね。
丸山:(…愚痴?)
男A:赤色と黄色は使えるけど、オレンジ色の使い方が分からない。そういう感じです。
丸山:(どゆこと???)
男B:混ぜるだけなのに、ということですか?
男A:そう。良いと思うことはどんどん自発的に挑戦して欲しい!と常々言ってるんですが。
丸山:(…半分は理解できる。)
丸山:理想としてはどのレベルまでの成長を期待していますか?
男A:やっぱり独り立ちですね。1人でも自信を持って熟せるようになって欲しいですよね。教えてる時間はチーム全体の生産性が落ちてしまうので。
男B:いつまでも指示でリソースを取られるのは厳しいですよね。
男A:はい。ただ、いつまで経っても受身だと、ずーっと大した仕事は出来ないんですよね、実際。良い仕事が出来るなら“自分でこれくらい出来ます!”ってアピールするでしょ、普通。
男B:受け身なのはありますよね、若手社員あるあるというか。そこは任せられない原因として大きいかも知れないですね。
丸山:そういった人にどうやって育成していくんですか?
男A:小さな事ですが、何度もやり直しさせるしか無いですね。出来ていない事を理解させて、奮い立たせるようにしています。
男B:仕事の納期とのコントロールはどうしてますか?
男A:“多少の納期”はお客さんに説明していますが、部下育成の本質はクオリティなのでプロ意識を醸成させる事が重要だと思っています。
丸山:その“多少の納期”の数が増えて、忙殺されるなんてことは?
男A:まぁ、そういう時ももちろんありますよね。
男B:クオリティの基準はあるんですか?
男A:そこが難しんですが、結局上司側の立場からすると“指示するか・任せるか”しかないんですよね。私の出したハードルを超えて来たらOK!という感じですかね。
丸山:ちなみに、そのリテイクで社員さんは潰れないですか???
男A:加圧トレーニングみたいなもんです。成長としては一番早いし一気に伸びますよ!
丸山・男B:か、加圧トレーニング……。
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Aさんはつまり、「何度もやり直しの負荷をかけて伸ばす」という方針のようです。
もちろん、業種や社風によって育成方法は異なるので、一概にこれが悪いとは言えません。
ただ、部下の育成方法を画一化してしまうのは、若干の疑問も残ります。
個人的は、個人への育成は “成熟度に併せて柔軟に対応するもの” だと思うのです。
例えば、図に示すように、S1〜S4の部下の発達度に応じて、上司がリーダーとしての行動を変える「SL理論」という理論があります。
S1:指示型
トップダウンで、手取り足取り具体的な指示を出す
S2:説得型
プロジェクトの方向性や具体的な手法などを伝授する
S3:参加型
意思決定の支援以外は部下の自主性に任せる
S4:委任型
目的のみを共有し、その他の手法については任せる
先程の話で当てはめると“指示するか・任せるか”。つまりS1とS4しか存在しません。
もしかするとS2・S3の段階を「部下の甘え」と認識しているのかもしれませんが、これではクオリティの許容範囲があまりにも狭すぎます。
“出来ない部下”基準も厳しく、上司のハードルも一体どこで超えられるのか分かりません。
直接的な上司と部下の話ではないのですが、許容することに対するこんな話があります。
「リスクゼロ以外、許容できない」という人たちに遭遇するけど、多分それは、みんな不幸になる考え方。
「リスクゼロ」以外が許容されなくって、ちょっとでもリスクが残っていると「こういうケースがある!この時はどうするんだ!リスクを放置するのか!!」と言われたりするんです。
つまり、そういう人たちにとっては、リスク保有は勿論、リスク軽減やリスク移転さえ「リスクを放置している」というように見えるらしいんです。
リスクが「ある」ということ自体が許せない。リスク対応時の完璧主義ですよね。
〜 中略 〜
割と重要な認識として「リスクをゼロにする為のコストは基本バカ高いので、あまり現実的ではないことが多い」ということは、一つの常識になってもいいんじゃないかなーと感じています。
勿論、リスクを指摘すること、それ自体は重要なんですけどね。
これは上司が部下に業務を任せる際の「どこまでのクオリティを許容するのか」と同義ではないでしょうか。
たしかに、育成のため、部下に何度も手直しを要求することはあります。
会社としての仕事のクオリティを保つため。また、厳しさとやりがいは表裏一体だからです。
しかし、部下の仕事が、最低限のクオリティを満たしている場合には、「上司の理想」に沿った指摘ばかりだしているのも、問題です。
「上司の理想」よりも、「部下の達成感」を優先させよう
「指示すること」はクオリティをコントロールし、リスクを軽減させます。
反対に「任せること」はクオリティを部下に委任し、リスクを許容します。
細かな指示を出さないとクオリティを担保出来ない、と思っている上司は、部下の可能性を狭め、自信を奪っていると自覚すべきです。
部下に業務をお願いする際
「あいつに〇〇は出来ないのでは?」
というのは大きな勘違いで、大半のケースは出来る。
自分の判断で相手の可能性を狭めている事は、業歴の長い人間にはよくある事。
それが出来ない人は部下の達成感よりも、自分の「納得感」を優先してる事を自覚した方がいいと思う。
— 丸山享伸 / UNIONNET Inc. (@maruyaman1984) 2019年2月4日
結局のところ、上司は全て自分でやってしまった方が理想通りの仕上がりになります。
しかし、それではただの独り相撲。または典型的な “仕事抱え込みダメ上司” の出来上がりです。
社歴もそうですが、ひとつの業界で歴が長くなってしまうと、つい部下に対する許容範囲は狭くなりがちです。
マネジメントする上司の立場としては任せるリスクを背負うよりも、ミスを指摘する方がラクなのですが、部下からすると、ただの機会損失でしかない場合もあります。
部下の可能性は上司が決めるものではありません。
「成長度合いに合わせて、適度なチャンスを与えること」が上司の役目ではないでしょうか。
部下の本当の成長を望むのであれば、「上司の理想」よりも、「部下の達成感」を優先させるべきだと思うのです。
🕺🏻丸山享伸
Web制作会社(UNIONNET Inc.)代表。
「はたらくを楽しく」したい小さな会社の経営者として、日々現場を通じて感じる組織のことや働き方に関する事を発信しています。興味のある方は気軽にフォローしてくださいね🔥
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