ツイッターを眺めていました。
すると、「やめてほしい怒り方」というツイートが、話題になっていました。
【やめてほしい怒り方】
新社会人はこんな怒り方
されたら無視して良い pic.twitter.com/R0MS1FypUx— ゆきほり (@yuki0hori) 2019年5月27日
私個人も、新人のとき、失言をして強烈に怒られた記憶があります。
なので、ツイートを見て「怒り方間違うと、だめだよなー、そうだよなー」と思いました。
けれど、このツイート。
異常に拡散されています。一体なぜでしょうか。
それは「ミスを責める上司」に対するツイート主のコメントに結構トゲがあるからでしょう。
上司からの「現場の写真撮ってきて」との依頼をすっかり忘れてしまったツイート主は、上司からきつくそれを責められました。
が、怒られている最中
「そんな事を言っても忘れたもんはしょうがないじゃん」ってずっと思っていた、と書いており、
「どうせ怒るなら、次に同じ失敗をしないための指導をしてほしい」と締めくくっています。
で、案の定、これを見てキレた人たちから、辛辣なコメントが付けられ、ちょっとした騒ぎになっています。
正直、Twitterでも怒られてるのはちょっと気の毒です。
新社会人とかじゃなくて、人間性の問題です。責任感が足りないですね。無視していいわけない。
反省、努力しているところをみれば、上司も変わりますよ。舐めてるのが相手に伝わってるのでは。— あいな (@aina_xx) 2019年5月28日
今まで経験したことないような失敗をしたならこれは言えること。でも、寝坊とか忘れ物とか新社会人になる前にすでに教育されてるようなことだと今までなにしてたんだと怒られて当たり前。そうゆう失敗の時に仕方ないとか思ってたらそれは開き直りだと思います。
— Taichi (@arrg_taichi) 2019年5月28日
言いたいことはわかりますが、このマンガだとクズにしか見えないので消したほうがいいと思います……
— Kn (@0no_ken) 2019年5月28日
はいはい。概ね賛成です。
もしツイート主の上司だったら、こんな部下いたら、怒りますよね。
「おまえ、本当にわかってんのか?」と。
多分、私もこんな部下がいたら、ミスを責めることはしないものの、見限ると思います。
冷たいようですが。
だって、この人、上司をなめてるな、と思うから。
今どきの、ほとんどの上司はミスを責めず、見限る。
もちろん未だに、部下のミスをネチネチ責める上司も多いです。
ただ、そういった上司は昔に比べて本当に減りました。
第一、いまはミスを責めるとすぐに、「パワハラ」って言われます。
また、ツイート主の言う通り、ミスを責めたところで何も変わらないことを、多くの上司は理解しているからです。
だから、ミスに対して、反省の色がなく
「やっちゃったものは、しょうがないじゃん」
などと開き直って心の中で舌を出していそうな部下がいたら、ネチネチとミスを責めるなんて絶対にしないでしょう。
自分が人望を失い、評価が下がるだけだからです。
そのかわりどうするか。
上司は、そっと見限るんです。
関わるとムカつくから。
この人と関わりたくない、と思うんです。
もちろん、表面的には「指導」はします。
再発防止してね、といいます。
そのために「メモを取れ」とか「タスクを管理しなさい」とか、言うと思います。
「どうせ怒るなら、次に同じ失敗をしないための指導をしてほしい」とツイート主が要望を出していますが、多分そのとおりにすると思います。
でも、「育てよう」とは決して思いません。
残念ながら。
実際に、その後その人がメモを取らなくても、タスクを管理しなくても、多分「どうでもいい」と思うでしょう。
今後、あえて注意したりすることもないでしょう。
だから、結果的には重要な仕事は絶対に任せないようになってくる。
単純で、ミスをしても特にチームに影響のない範囲の仕事しか、やらせない。
なぜって、上司の時間も無限ではないし、自分の労力を、成果が上がりやすい場所につぎ込みたいと思うのは、人間だったら普通だからです。
そもそも、上司は聖人君子でも何でもなく、部下と同じく感情の生き物で、人間です。
だから、ミスを責められたときに開き直っちゃう人にリソースを突っ込もうとは決して思わない。
当たり前の話です。
だから、このツイートを見て
「ミスを責められたら、開き直ればいいんだ」と、新人さんが思ったとすれば、それは間違っていると言わざるを得ないです。
ツイート主は、「こんな怒り方されたら無視して良い」とも言ってますが、当然、無視しては駄目です。
無視したら、その組織でのキャリアは厳しいものになるでしょう。
そういう意味で、このツイートに気軽に「いいね」は付けられません。
この考え方は、処世術として、危険です。
ミスを責められて、冷静に判断できる人はいない。
でも、上司の側も考えなくてはいけないと思います。
なんで、ツイート主が「ミスなんて、しょうがないじゃん、お前ミスしたことないの?」ってずっと思っていたのかを。
それはあたりまえですが、「責めたから」です。
いや、わかりますよ?
上司が責めたくなる気持ち。
「確認してねーだろ」とか、「これ、同じミス何回目だ?」とか、「なんでミスしたかわかってないだろ」とか。
でも。
ミスを責められた人間は、瞬時に状況を判断する能力を失います。
私も体験済みなのでよくわかりますが、
責められている最中は、
「こいつ嫌い」
「俺は悪くない」
「こいつをなんとかして困らせてやりたい」
という、恨みの感情しか残りません。
その中で冷静に、
「改善します!ありがとうございました!」
なんていう人のほうが、逆に怖いです。
おそらくそれは、「改善します!ありがとうございました!」と言って、その場を逃れたいだけの人です。
もし仮に
「ミスを責められている最中にきちんと反省できる。」
「同じミスを繰り返さない。」
「上司の叱責を冷静に、素直に受け止める。」
そんな人がいたとしても、それは、その人物がずば抜けて優秀で、特殊な人だ、ということだけです。
実際、ほとんどすべての部下は、上司からミスを責められたら、
「ムカつく」
が最初に来ます。
間違いありません。
これは、人間の防衛本能ですから
「上司の言葉をありがたく受け取るべき」
「叱られているうちが花」
なんて、頭で考える論理は通用しません。
これは100%、混じりっけなしの感情。
だから、それが昂じると「ミスを責められたら、無視して良い」なんていう、過激な対応になるわけです。
しかも、上司は立場が強いから、部下たちは表立って
「言っていることは正しいけど、あなたの言い方はむかつきます」
なんて言えない。
残る手段は「無視」「面従腹背」なのは、当然です。
それが吐露されているのが、冒頭のツイートでした。
感情を表に出したら「戦争」。
そういうことで、部下が「ミスを開き直る」のも上司が「ミスを責める」のも、あまり賢い行動とは言えません。
要するに、「それをいっちゃ、おしまいだよ」ということです。
それを口にしたら、「戦争」……!
(出典:賭博黙示録カイジ 5巻)
大人は、口や態度に出してはいけないことがあるのです。
上司は部下を煽らず、部下も心から反省し、上司の感情に配慮する。
それが大人です。
それができなければ、生産的な人間関係はなく、争いしかない。
そういうことです。
Twitterアカウント安達裕哉(過去記事、ニュース、ビジネス以外の話も。)
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【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
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ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
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【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
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お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
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