ちょっと前に友人に勧められて「サードドア」という本を読んだ。

この本は18歳の米国の学生が、ウォーレン・バフェットやらビル・ゲイツといった著名人達に「人生の成功の秘訣」をインタビューし、それを一冊の本にまとめるというミッションに挑むものである。

 

彼は色々と試行錯誤してこのミッションに打ち込み、その過程で様々な人と出会った結果、19歳でベンチャーキャピタリストとなり、27歳でフォーブス誌の「30歳未満の最も優れた30人」に選出されるにまで至った。

 

たかだが19歳の若者が、普通の人なら絶対にたどり着けないような経済的成功を何故おさめられたのか。

その秘訣は正攻法(ファーストドア)で頑張るのではなく、裏道(サードドア)を開けというわけである。

 

こう書くと実にアメリカンな人生サクセスストーリーっぽいが、その過程は結構土臭く、読中の印象はこれとは随分と異なる。

ノンフィクションとしても結構読み応えがあるので、興味がある人は手にとってみるといいだろう。

 

僕がこの本を読み終えて思ったのは、この本は読む年齢でかなり読後感が変わるだろうなという事だった。

具体的にいうと、たぶん19歳の頃にこれを読んだら筆者の生き方に憧れるかもしれないが、35歳ぐらいになってからこの本を読むと、成功することの負の側面のようなものが見いだせてしまうのだ。

 

どういう事か。以下に続けていこう。

 

成功者は人生にノイズが大量に入るようになる

この本の筆者であるアレックス・バナヤンは執筆当時、UCLAというアメリカの一流の大学生ではあったが、成功者にインタビューできるようなツテがあったというわけではない。

 

彼は著名人に「人生の成功の秘訣」を聞き出そうと、いろいろなルートでリストアップした人にインタビュー依頼のメッセージを送るのだが、これをみて僕がまず思ったことは「送られる側からしたら、これめっちゃタルいだろうな」という事だった。

 

氷山の一角という単語があるが、当然この本の筆者であるアレックス・バナヤン以外にも様々な目的で成功者にアプローチしてこようとする人は数多いるだろう。

自分のメールホックスがこんな感じで知りもしない人から「お話を伺いたいです」なんてメッセージで毎日あふれるだなんて、考えるだけで僕は吐き気がする。

 

確かに成功し、莫大な名声と金額が自分に転がり込むのは気分がいいだろう。

しかし、その引き換えにこんなノイズが自分の人生に入るようになると考えると

 

「成功者って、成功してからも結構大変なんだな・・・」

 

と思ってしまうのである。

 

有名になると、良くも悪くもいろんなフックが人生にやってくる

つい先日、芸能人の田代まさしさんが覚醒剤使用で5度目の逮捕となった。

いまの若い人は田代まさしさんの事をあまりよく知らないかもしれないが、かつて彼はテレビで第一線を張っていた一流の芸能人であった。

当然、お金も莫大にあっただろうし、物凄くモテただろう。彼は、まごうことなき成功した人である。。

 

当時の彼に憧れた人はそれこそ山程いたのは言うまでもないが、じゃあいま現在の彼になりたい人がいるかというと・・・ぶっちゃけ、全然いないだろう。

彼が転落し、薬物からなんとか抜け出そうとし、それでもまた転落していく有様は以下の本に詳しいが、これをみると本当に薬というものは怖いものだと心底痛感する。おそろしい、おそろしい。

<参考 マーシーの薬物リハビリ日記>

もちろん、成功した芸能人みんながみんなこんな風な顛末を迎えるわけではないし、田代まさしさんの例はどちらかといえばレアケースだろう。

けどそれでも思うのだ。仮に未来が見えたとして、田代まさしさんは「テレビで成功した自分」と「テレビで成功しなかった自分」、どっちを選んだのだろうか、と。

 

経営者になると性格が悪くなる

フェイスブックの創業顛末を書いたソーシャルネットワークという映画がある(原作はfacebook ベン・メズリック)

この映画では若き日のマーク・ザッカーバーグが描かれており、僕はいろいろと興味深くみたのだが、これをみた僕の友人が

「こんなん、慶応のSFCにいりゃ嫌というほど似たような光景ばっかみるよ。どこもかしこもベンチャーって、こんなんばっかだぞ」

と感想をつぶやいたのが妙に感慨深かった。

 

あの映画から10数年の時がたった。僕が真面目にサラリーマンとして働く一方で、独立し会社を立ち上げ、僕の数百倍速で資産を形成していった人もチラホラいた。

正直、働き初めの頃は彼らを羨ましく思ったのも事実である。ただ、ここ最近になってからは随分とまた様相が変わり始めた。

 

お金の力は恐ろしい。利益分配をめぐり、創業当時はあんなにも仲良く頑張ってた社内メンバーと血みどろの社内政治を繰り広げ、果てに人間関係に疲弊するような有様に至る様を何度も何度も見聞きするようになり、僕はだんだんと

「独立もラクじゃないんだな・・・」

と思うようになった。

 

インターネット上では「○○円稼いだ!」と謳う胡散臭い人が山程いる。

僕は最近になって、あれらの人たちは結局のところ人間不信をこじらせすぎて、お金以外のものが心の底から信じることができなくなったのだと今更気がついた。

 

あれだけ硬い結束で創業当時一緒に頑張った人と、数年たっただけで顔も見たくなくなるぐらい恨み合うような経験なんてしてしまったら・・・そりゃ世の中カネと拝金主義になるのも無理ないわなぁ、という感じである。

 

ドワンゴの川上さんもインタビューで「起業すると性格が悪くなる」と仰っていたけど、やっぱり世の中にはうまいだけの話はないのである。

経営者になるまで、僕ほど性格がいい人はいないと思っていた。|川上量生の胸のうち|川上量生|cakes(ケイクス)

ドワンゴ会長・川上量生さんはインタビューなどで「経営者になると性格がわるくなる」と言うことがあります。これはどういうことなのでしょうか。自分を善人だと信じていた川上さんが、経営者になって直面した現実とは。

 

転落したくなかったら・・・先達の声を聞くしかない

なお、当然の話だけど、独立した人みんながみんなこんな有様なわけではない。

いろいろトラブルはあっただろうが、それなりに上手に上手くやっていってる人もいる。

 

性格がネジ曲がり拝金主義者に落ちぶれてしまった人と、それなりに上手に上手くやっていってる人の違いが気になり、後者何名かにインタビューをしてみたところ、彼らが口を揃えていっていたのが”先達にかわいがってもらえ”ということであった。

「エスタブリッシュにかわいがってもらえれば、自分が今後直面するである困難についてのアドバイスが雨あられのように降り注いでくる」

「それを真摯にうけとめて、キチンと恩返しをする」

「結局、上に好かれない奴は短期的に成功できても、長い目でみたら破綻する」

 

先輩の経験に学ぶだなんてのは、当たり前にもほどがありすぎて意外でもなんでも無い話ではある。

結局、稼げる金額の多い少ないはあれど、独立も務め人も成功する人の人生は同じようなものなもので、連綿と続く人の流れに上手にコミットできるか否かだけなのである。

 

成功するよりも、成功したあとの方がよっぽど大事

話が長くなったのでまとめるが、サードドアを読んで僕が何を一番思ったかというと、結局のところ成功は人生の一つのイベントでしかないという事だ。

若い頃は「派手に一発当てたらそれで人生最高!」で終わると思いがちだけど、ぶっちゃけ人生は成功してからの方が全然長い。

 

「独立して、縛られずに自由に生きる!成功者に、オレはなる!」

みたいな壮大な夢を持つのは本当に大切なことだとは思うのだが、それが仮に成功した所でやってくるのがワケのわからない大学生からのメールの嵐だったり、薬物へのいざないだったり、唯一無二の親友との絶縁だったりするのが人生なわけで。

 

まあなんていうか、成功教ってやつの呪いは結構大きいよな、と思ってしまったわけである。

たぶん、ある程度年齢を重ねた人は、なんとなくわかってもらえるんじゃないですかね。

人生、成功した後の方がよっぽど大切だって。

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

(Photo:William Murphy