今日は、「効率的な効率化」について書きたい。

 

わたしは常々思っていたのだ。

効率化の必要性を強調しているわりに、それを個人に押しつけすぎじゃないか?と。

 

個人で省略できる作業や時間短縮できる場面なんて、かなり限られている。

より多くのムダを省きたいのなら、個人の努力をアテにするより、ムダなく機能する組織になるべきだ。

 

効率的な効率化には、「個人」の努力ではなく、「組織」の改革のほうが必要なはずだろう。

 

効率化の主語が常に「個人」なのは、おかしくないか?

「日本人の働き方は生産性が低い」「非効率だ」という指摘は、もう何百回も聞いた。聞き飽きたくらいだ。

いたるところでそれを裏付けるデータが紹介されているから、たしかにそういう現実があるのだとは思う。

 

同じ時間、同じ人数で働くなら、10の仕事より100の仕事が終わったほうがいい。そりゃ当然だ。

だから、「効率的に働く方法」が注目されるのはもっともだと思う。

 

でもそこで挙げられる方法が、もっぱら「個人」単位の話でしかない。

集中しろ、優先順位を考えろ、スケジュール管理を丁寧に……などなど。

あくまで、「効率的に働く人になるためには」という話ばかりしているのだ。

 

組織を変えることはむずかしいから、「まず個人でできる範囲で効率化しよう」というのは、一見理にかなっているように思える。

 

でも、一個人のパフォーマンス力がちょっと上がったところで、いったいどうなるというのだろう。

そもそも、「非効率」と言われまくっている日本人だけど、みんながみんなダラダラ働いているわけじゃない。

むしろ、マジメに働いている人ばかりだ。

 

それなのに「非効率」なのであれば、それは「個人」ではなくむしろ、「マジメに働いていても結果が出ない効率が悪い仕組み」にあると考えるべきじゃないか?

 

「個人が努力すればいい」が効率化の最適解だとは思えない

効率の悪い仕組みを個人に帰結している例を挙げよう。

 たとえば、午後4時に怖い顔をした上司が目の前にあらわれ、「これを今日中に終わらせてほしい」と言って、新しい仕事を押し付けてきたとします。

その仕事を終わらせるには、5時間はかかりそうです。ですが、午後7時から飲み会の予定が入っているとしたら、どうしますか?
知的生産という概念がない人、つまり「考えない人」は、頭の中で「4+5=9」という計算を行います。

[……]

けれど、飲み会が好きな僕なら、こう考えます。
「仕事と飲み会のどちらが大切かといえば、もちろん飲み会だ。飲み会に参加するには、5時間かかる仕事を3時間以内に終わらせなければいけない。今までと同じやり方だと3時間では終わらないので、違ったやり方を考えてみよう。

はいでたー! ほらきたー!

定時直前に今日中にやるべき仕事を与えることはもちろん、「怖い顔」で「押し付ける」なんて、明らかに上司のほうに問題があるよね!?

 

なぜそんなにギリギリになったのかを明らかにすべきだし、ほかの人は手伝えないのか、その仕事の優先度がどれくらいなのか、そういうことを踏まえてスケジュールを組みなおすべきだ。

 

「効率的にやれば早く終わるはず、そこで頭を使う人間が結果を出せる!」って、そもそも話がおかしくないか?

まず上司が頭を使ってマネージメントしろよ、という話にはならないのか?

いや、たしかに急ぎの仕事が入ることはあるだろう。でもそれを、「個人の効率化」でカバーしようとするのはちょっと筋違いだ。

 

「そういうことが今後起こらないような仕組み」を考えなければ、いつまでたっても「個人ががんばれば仕事は早く終わる」という根性論から抜け出せないじゃないか。

みんなが常にうまく効率化できるわけではないし、個人のリカバリーに甘えて理不尽がまかりとおるのもまた本末転倒だ。

 

個人の努力はもちろん大事。

でも個人の努力次第の効率化は不安定で、単純に「非効率」だと思う。

 

効率化のために時間と労力を使うのは本末転倒

「オフィスがガヤガヤしていて集中できず、デスクが狭くて書類が散乱。そんななかでも効率的に働くために、こうしましょう!」

だなんて提案を見ると、ちょっとため息をつきたくなってしまう。

 

そんな個人の努力に期待せず、「集中できるようにオフィスのレイアウトを考え、自分のスペースがしっかり確保できる仕事場」にするほうが、効率的に効率化できるとは思わないんだろうか。

たとえば、オフィスビルの一角で働いている人たちがいっせいに昼休みにはいるから、12時ごろはエレベーターが混んでいて毎日5分も10分も待たなきゃいけないとする。

 

「その5分や10分で午後の仕事の段取りを考えておこう! それで午後の仕事がやりやすくなる!」

というくらいなら、

「それぞれ好きなタイミングで昼休みをとれるようにしたほうがいいじゃん」

と思う。

 

「ムダな作業やストレスを減らすために個人が工夫する」より、「ムダな作業やストレスが生まれない組織」のほうが、絶対に働きやすいじゃないか。

効率的に働くためにそれぞれが時間と労力を使うなんて、それこそ時間のムダだ。その時間と労力を仕事内容につぎ込める環境をつくるほうが、何倍も「効率的」なはずである。

 

みんなダラダラ働いているのにドイツはなぜ「効率的」だと言われるのか

わたしが住んでいるドイツは、「効率的に働く国」としてよく例に挙げられる。

たしかに、データを見ればそうなのかもしれない。

でも、実際に役所の窓口にでも行ってみてほしい。

みんながどれだけダラダラ働き、雑談をし、適当な対応をしているかを、ぜひその目で見ていただきたい!

 

いや、本当にびっくりする。

保険の契約中、「子どもから電話が」とわたしの書類を作りながら電話をとって冷凍ピザの場所を説明しはじめたり、わたしを待たせながら同僚と最近できたレストランの話で盛り上がっていたりする。

 

それがふつうのドイツが「効率的に働く国」っていったい何の冗談だよ、と思わないでもない。

でもそれは、個人の働き方ではなく、組織の機能の仕方の問題なんだろうなぁと悟った。

 

ドイツは担当がはっきりしているから、日本ほど「報・連・相」が重視されない。

自分の仕事は自分に裁量権がある。他人の仕事がまわってきたら、「それは自分の仕事じゃないので」とばっさり。

1人~数人の広々とした部屋で働くことが多く、机がずらーっと並んだ狭くて窮屈で雑多なオフィスはまず見ない。

 

受けた職業教育のレベルや学歴で階層があり、それぞれのステータスに見合った仕事をするので、不相応にむずかしい仕事で困ることや、ハイスペックなのに雑務ばかりで能力を活かせないということもあまりない。

 

そうやって、自分の仕事に集中しやすい環境があるから、当人たちが多少ダラダラ働いていても、組織として効率的に機能しているのだろう。

それを見ていると、「やっぱり個人ができる効率化って限界あるよなぁ」とつくづく思うわけだ。

 

効率的な効率化は、個人の努力ではなく組織の改革

先日、当サイトで『システムの穴を「運用でカバーする」っていう思考法やめようよ、と強く強く思った話。』という記事が公開された。

「情報漏えいの可能性がある」に対し、「守秘義務を徹底」で対応するのはそりゃムリだろ頭んなかお花畑か、という愉快なツッコミ記事である。

 

「システム上起こりうるヒューマンエラーを防止するのはムリだから、システムそのものを見直すべき」というのは、とてもまっとうな主張だ。

そしてこの話は、みんな大好き「効率化」の話でもいえる。

 

「仕事」という大きな枠組みのなかで、非効率な作業や時間、環境はいくらでもある。

そういった仕組みの問題を、「個人が最善を尽くす」という対処法でどうにかしようとするのは、あまりに無謀だ。

 

決まらない会議や二度手間になる承認過程、たいして使わないのに作らなきゃいけない資料、集中できないオフィス動線、共有されない社内情報、とりあえずチェックの量の多さ……。

個人ではどうにもならない仕組みにこそムダが潜んでいるわけで、それを放置しておきながら「効率的に個人が働けばうんぬん」は都合が良すぎる。

 

「非効率なことは個人が効率化すればいい」なんて非効率なこといってないで、「非効率なことが起こらないように仕組み自体を効率化すべき」なのだ。

 

あーもう、「効率化」って言いすぎてよくわからなくなってきた。

 

結論としては、「効率的な効率化は個人の努力ではなく組織の改革なのでそこんところよろしくお願いします」って感じです。

 

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(2019/11/7更新)

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

(Photo:gdsteam)