ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解

上司にとって、「権限委譲」はひとつの大きなテーマである。「権限委譲」は一般的に次のようなメリットがあると考えられているからだ。

・現場のスピードアップ

・仕事を任された部下のモチベーション向上

・部下の能力向上

・上司の「自分の時間」の増加

多くのマネジメントノウハウ本に「権限委譲せよ」と書かれていることは周知の事実である。

 

しかし、権限委譲は言うほど容易くはない。

一つ間違えば「放任」「管理放棄」ととられてしまったり、逆に権限委譲を行ったと言いつつ、実際には管理の手綱を締めれば、「口だけだ」と非難される。

権限委譲の要諦は一体どこにあるのだろうか。

 

これに関して著名なソフトウェア工学者の1人であるトム・デマルコは、著作「ゆとりの法則」の中で、「ある質問に答えることで権限委譲が適切に行われているかどうかをチェックできる」と述べる。

 

”私は管理セミナーを開くとき、管理者のグループに権限移譲について聞いてみることがある。(みな権限移譲に好意的な反応を示す)

次に、この若い管理者たちに、「部下に権限を委譲すると、貴方自身の管理権は失われますか」と聞いてみる。”

 

いかがだろうか。あなたの答えはYES、NO、どちらだろうか。

トム・デマルコはこう続ける。

 

すると、真顔でいや、管理権は失わないと答える。

 

トム・デマルコは、こう言いたいのだ。「管理権を失わないなら、全く権限委譲していないではないか!」

さらに彼はこう言う。

 

”危険を冒さずにだれかに権限を譲ることは出来ない。譲った権限には、間違いを犯す権限も含まれている。相手が失敗すれば、その結果を引き受ける必要がある。

逆の立場から見れば、こうして上司に傷を負わせる可能性があるからこそ、権限委譲がうまくいくのである。

権限を譲り受けた人は、「大変だ、もしこれに失敗したら、ボスは私を信用したためにばかにされることになる」と考える。仕事の場で、これほどモチベーションに結びつくものはめったに無い。”

 

つまり、部下に権限委譲する、ということは、放任し、結果だけ引き受けよ。そういうことだ。

 

 

つまり、「部下に任せる」ということと、「権限委譲」は全く異なる。

「任せる」はやらせてみて、進捗を見、適宜口を出す。全体の管理は上司が行っている。

「権限委譲」は全く異なる。管理そのものを部下に委ねる。

 

さて、あなたは「権限委譲」しているだろうか?

 

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
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(2025/6/2更新)