2年半ほど前、こんなツイートをした。

ひっそりとやっている(半ば放置ぎみ)のツイッターのなかでも、1、2を争うくらい拡散されたものだ。

で、「そういやこれ記事にしてないな?」と思い出したので、2万8000いいねを獲得した「フリーランス流儀」(かっこよく言ってみた)のなかでも特に重視している4つについて、その理由を改めて書いていきたい。

 

最初から「なんか嫌だなぁ」と思う仕事は請けるな。まじで。

「嫌な予感がする仕事は受けない」。

これはわたしがフリーランスとして気ままに生活しているなかで、絶対に譲らない部分であり、1文字1円でコツコツまとめ記事を書いていた時代にかたく誓ったことでもある。

 

「やりたくない仕事はしない」ではない。
「苦手な人と働かない」ではない。
「安い給料で請け負わない」ではない。

 

「嫌な予感がしたら受けない」だ。

 

いやね、たぶんこれは多くの人が経験してると思うんだけど、最初のやりとりの段階で「なんか嫌だな」って気持ちになることがあるのよ。

「相手の返事が遅くて先行き不安だな……」とか、「なにが言いたいのかよくわかんなくてイライラする……」とか、「こっちの経歴全然調べないまま仕事依頼してるじゃん……」とか。

 

「ムカつく!」って怒るほどでもないけど、なんとなーくうまくいかない気がするってやつ。

 

経験上、そういったお仕事は、やってみても「嫌な感じ」はなくならない。

それどころかどんどん大きくなって、「気が進まない」が「やりたくない」になっていくだけだった。

 

お仕事をいただけるのはとても光栄だけど、最初の段階で「よっしゃやったるぜー!」とノリノリになれない時点で、たぶん相性が悪い。受けるべきじゃない。

(もちろんそれは相手が悪いわけではなく、ただの相性の問題であり、ときには自分の力量不足だったりもする)

 

選り好み……になってしまうかもしれないけど、そういう直感や印象というのは案外アテになるもので、わたしは大事にしている。

 

感謝はいくら伝えてもデメリットはないからどんどん伝える

そして2番目。これは仕事だけではなく日常生活でもいえることだけど、感謝はいくらしても足りないし、大げさに伝えたところでデメリットはない。

だからいっぱい伝えていこう!!

 

「お仕事のご依頼ありがとうございます」で終わらせず、「わたしの記事を読んだうえでご依頼くださったんですね。ありがとうございます」と一言足すとか。

「ご確認ありがとうございます」で済ませず、「お忙しいなかご確認ありがとうございます。いつも丁寧にフォローしていただいて助かっています」と書くとか。

 

お互い仕事だからね、そりゃあちゃんとやるよ。たいていの人は。

だから「やってもらって当たり前」になって、感謝がどんどん定型文になってしまう。

 

でも、だれだって、淡白なやり取りしかせずなにを考えてるかわからない相手より、大袈裟なくらい「ありがとうございます! あなたとお仕事できて最高に幸せです!」って言ってくれる人とお仕事したいじゃん。

 

わたしがそれを言われたらうれしいから、わたしももっともっと、「あなたとお仕事できてうれしいです」を伝えていきたい。

丁寧に感謝したい。

 

だから、いっぱいの「ありがとう」を、いつも忘れずに。

 

フリーランサーにアドバイスしてくれる人は貴重だからどんどん学ぶ

で、感謝の延長線にあるのが、「アドバイスは貴重だよ」ってところ。

 

フリーランスは自分の裁量で働けるぶん、アドバイスをもらえる機会がとてつもなく少ない。

向こうからしたら、フリーランスなんていつでも切れる存在。

わざわざアドバイスなんてする必要はない。

その仕事だけ無難に終わらせて、「んじゃサヨナラ」でいいんだから。

 

そんななかで、「こうしたほうがいいですよ」と言ってくれる人には、めちゃくちゃ感謝して、ありがたく勉強させていただく姿勢でいる。

とくにわたしは社会経験が少ないままフリーランスになったから、世間知らずな部分が多い。

調子に乗っちゃうこともあるだろうし、リスク管理が甘い自覚もある。

 

だからこそ、わたしに足りないものをちゃんと指摘してくださる方の存在は、とてもとても大事なのだ。

とはいえそういうアドバイスを、「この人はわかってない。俺は自分のやりたいことをやる!」と突っぱねる人がいるのも知ってる。

というか、フリーランサーはそういうタイプのほうが多いかもしれない。

 

でも「自分の信念のために不要なアドバイスをスルーする」のと、「ちっぽけなプライドのために助言に耳を貸さない」のじゃ、全然意味がちがう。

腹が立つマウントや的外れな説教、古臭い価値観の押し付けなどは聞き流したほうがいいけど、「フリーランスの自分に適切なアドバイスをくれる人」の貴重さは忘れずにいたい。

 

自分自身が「成長したい」と思い、それを手助けしてくれる人がいないと、フリーランスが「1段上へ」いくのはむずかしいから。

 

当然のように即時対応を要求されたら最大限の警戒をしていけ

そして最後。「即時対応には応じない」。

これは、「絶対に即時対応するな」ということではない。

ただ、「すぐに対応する前提で話を進める相手を警戒しろ」という意味だ。

 

いやね、あるんですよ。

「記事の修正は迅速に。ただし土日は編集部おやすみなのでお返事できません」みたいな。

こっち時差あるんですが問答無用ですか? わたしの世界には土日が存在しないとでも? と言いたくなるような要求が。

 

一度でもそれに応じてしまうと、その後少しでも返事が遅れたら「困るんですけど」と文句を言われ、その仕事にかかりきりになってしまう。

で、ほかの仕事のスケジュールが狂ったり、別のクライアントを後回しにする不義理をしたり、という事態に陥る。

そんなやり方では、体がいくつあっても足りない。

 

……っていうことが過去にありまして。

「できるかぎりのことはしますが、即時対応はお約束できません。もともとそういう条件ではありませんでしたし」

と伝えたら、

「他の方は応じてくださっているんですが……。高単価でお願いしているので、即時対応は前提だと考えておりました」

と言われてね。

 

いや、他の人との契約なんて知らねーよ、先に言えよ、って思いました。はい。

(実際はまったく高単価ではないのだが、こういう要求をする人は「自分は優良クライアント」だと思い込んでいることが多い)

 

もちろん、自分の仕事の状況や相手との関係性を踏まえ、

「最優先でやっておきました!」

と好意でやるのはアリ。むしろよくやる。

 

「すみませんがこの日に公開を合わせたくて……なんとかなりませんか?」といった要望には、できるだけ柔軟に対応したいとも思う。

でも「即時対応お願いします」と当然のように要求してくる相手には、ちょっと警戒したほうがいい。

 

「即時」というのは、ほかの仕事を差し置いてその仕事を優先するということで、なんの見返りもなしに求めていいことではないのだ。

(納得がいかない催促の場合、特急料金を打診してみよう。たいてい「じゃあ待ちます」って言われるから。他人の時間がほしいなら金を払うのが世の理!)

 

フリーランスは、道に迷わないように自分の指針をもっておこう

この記事を書きながらいままでのお仕事をいろいろと思い返していたけど……

わたしは本当に、まわりに恵まれてきたと思う。

 

最初にお仕事をくださった方はドイツ在住で、お仕事関係がなくなったあともわたしを応援してくださっていて。

東洋経済オンラインという大きなメディアで書かせていただいたとき、右も左もわからないなか、編集者の方はなんどもなんども修正を繰り返していい記事に仕上げてくださって。

 

新潮新書で初の著書を出版したとき、初歩的な質問ばかりしても編集長は丁寧に答えてくださって、出版後もわたしの記事を読んでくださっていて。

現代ビジネス(FRaU)ではセンシティブなテーマで執筆することが多いぶん、わたしの気持ちが正しく伝わるよう、編集者の方はいつも丁寧に読み込んでフォローしてくださっていて。

 

当ブログでも、あまり読まれなかった記事を連発して落ち込んでいるとき、「気にしないで自分がいいと思うものを書いてください」と言ってくださって。

そういう方たちとのご縁に感謝して、学べるものは学ばせていただいて、またいいお仕事をしていきたい。

 

で、そういうものを大切にする一方で、嫌な予感がするお仕事を避け、即時対応のような無茶振りには慎重に対応。

そこらへんの優先順位や自分のキャパシティは、自分で把握して管理しなきゃいけない。

 

フリーランスの自分のことを、だれも守ってはくれない。

だからこそ、自分なりのルール、指針をちゃんともっておきたいのだ。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

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