26日の朝日新聞に、示唆に富んだ記事が出ていた。
”意欲・興味をもっている受講生はよくて半分で、1割程度のことも。多くの学生は私語やスマホ、内職ばかりで、注意しても改善されません。
(中略)講師の目の前の席で化粧、イヤホン、居眠りも日常茶飯事。こういった妨害に負けず、感情的にならず、自分の仕事(講義)に集中するにはどうしたらよいのでしょうか。”
大学の講師をしている女性が、「授業を聞かない学生にイライラする」というものだ。
これに対して、岡田斗司夫氏が面白い回答をしている。
”私も大学の教員です。学生に聞くと、授業中にスマホや私語するのは「当然の権利」だそうです。
先生の講義を「やめろ」と言わない。だから先生が自分たちに「スマホや私語をやめろ」とは言うのは「不公平」。これが彼らの理路です。(中略)
入試をパスして授業料を払ったからには、大学側には学生を選ぶ「権利」はありません。教室に来た学生が講義を聴くも私語やスマホをするも、それは彼らの「行動選択の自由」なのです。
いまやほとんどの大学は大衆化しファミレスと同じになりました。ファミレスで料理に手を付けずしゃべってもスマホをしても、叱られません。ファミレスとは「そういう場所」だからです。
高級寿司(すし)屋や天ぷら屋では、食べずにしゃべる客はマナー違反で追い出されます。同様に大衆化しなかった高級大学では、そういうマナーを守る文化も学生も、まだ存在しています。(中略)
あなたが現状に不満なら、高級大学に転職するしかありません。学生が「教室内の行動は自由」という権利を行使するのと同じく、あなたに選べる権利行使は「マシな職場への転職」だからです。
でも、私は転職しません。あなたにも転職して欲しくはないです。
大学教育は、いまや総崩れの撤退戦。私たち教員は毎日の敗北から、やりがいや成果を摑(つか)むしかありません。
(中略)
私たち大学教員は、「名誉ある撤退戦」の真っ最中です。大学が大衆化し、学生が一人残らず「お客様」になっても、それは「教育の敗北」ではありません。
「お客様」な若者を一人でも多く「学生」に育てる。これをあきらめるのが「教育の敗北」です。私たちは「自分の戦い」に負けることになるんです。”
この中でもっとも重要なフレーズは、「お客様」な若者を一人でも多く「学生」に育てる。
ではないだろうか。
かつて私は数多くの企業内研修を行ったが、その時にも同じことを感じた。すなわち、「お客様は教育できない、生徒には教育できる」ということだ。
本質的に受講する時
「講師を試してやろう」
「オレよりデキる人にしか教わりたくない」
「知ってることばかりだ」
「すぐ役に立つことしか知りたくない」
と思っている人ほど、教育の効果は低い。いわゆる「お客様マインド」の人たちだ。
逆に
「何にでも興味がわく」
「知っていることからも新しい発見があるかもしれない」
「講師がどんな人であれ、学べることはあるはずだ」
と言う人にとっては、教育は効果が高く出る。それを、「生徒マインド」と呼ぶ。
「お客様マインド」で教育を受けることよりも、「生徒マインド」で教育を受けるほうが、遥かに身になることが多い。
所詮、企業における研修など、大した事は教えることが出来ない。内容そのものよりも、その人に「スイッチが入ったかどうか」のほうがはるかに重要なことだ。
そして、その場合において「費用対効果」は測定することが極めて難しい。そして、それでも構わない、と言う人にのみ、その恩恵がもたらされる。
「テストの点数」が目的でない教育は、受け手に「人間的成熟」を求めるのだ。
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