去年の5月から走り始めて、もうそろそろで一年たつ。
ランニングについてはこれまでにも色々と書いてきた。
念のため簡単に得られる効用を書いておくと、いま現在の僕はメンタルが強靭になって超激務な仕事も耐えられるようになり、どんなに食べても太らない体質を獲得した。
健康になるのみならず、仕事における生産性という意味でもランニングの効用は凄い。
なので個人的には物凄くオススメなのだが、まあそうはいってもこれまで運動をやってこなかった人が一念発起して走り始めるのが難しいという事も重々承知している。
何を隠そう、自分自身がどうやったら運動せずに健康体でいられるかを10年以上かけて試行錯誤していたのだから、運動をしない皆さんの気持ちは痛いほどによくわかる。
結局、僕は健康目的というよりも仕事がキツすぎて走り始めるようになってしまったのだが、みなさんもマジで心がヤバくなった時はランニングがメンタルにキくという事だけは心に留めておくとよいと思う。
ピンチはチャンスだ。
試練を上手に使って、ついでに身も健康体になってしまえばいいのである。
まあそんな苦労はしないに越したことはないのだが。
ところで皆さんは体力という概念をどのように把握されているだろうか?
僕は以前からこの体力という概念がとても不思議で仕方がなかった。
サッカーやらバスケットのような競技をするのならまだしも、現代社会では普通に動いているぶんにはまず息が切れて疲れるだなんて事は無い。
そんな現代社会において体力がついて何か得する事があるのだろうか?そうずっと疑問に思っていたのだが、今回の件を通じて僕は身体を鍛えて体力がつくとどうなるのかを身を以て実感できた。今回はその話をしようかと思う。
人間の活動限界量は決まっている
データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則という本がある。
この本は著者である矢野 和男さんが自身にウエアラブルデバイスをつけて、人間の行動原理について分析したものだ。
出版年度は2014年であるが、いま読んでも物凄く面白い。
この本で僕が最も衝撃をうけたのが人間の活動限界が決まっているというものだった。
著者いわく、ウエアラブルデバイス上で腕の動きを分析すると常に人間の活動量は下の図のようになるのだという。
人間、常にシャカリキで動き続けられるわけではない。
ガツガツ活動してその帯域を使い切ってしまったのなら、もう後はダラダラする帯域しか残されない。
キチンと定期的に休憩やら気晴らしを挟んでリフレッシュしないと、人間は上手に動けないのである。
働くためには単にダラダラすればよいと思っていたのだけど
この本が出版された2014年当時、僕はこの理論を知ってこう考えた。
「ようは集中力は有限って事だろ?じゃあ必要ではない時は動かなければいいんだな」
この頃の僕はとにかく運動が嫌いだった事もあって、このグラフをどう怠惰に使うかだけに腐心していた。
しかし体力がついた今、このグラフは更に拡張可能だったという事がやっとこさわかった。
どういう事か。それは下のようになるのである。
この人間の活動限界値を示すL字状のグラフだけど、実はミクロにみていけばフラクタル構造をしている。
左側の上を示す部分をルーペで拡大してみれば、そこにはまた同じようなL字がある。
同様に右側の下る部分も拡大すれば同様にLだ。
つまりである。確かに1日という範囲でみれば人間の活動量には限界があるのだが、それは常に活動量が同じであるという事ではない。
頑張ってより動けるようになればL字はちょっとづつ量が増していくし、逆に怠惰をやり続けていればL時はどんどん減る方向にシフトする。
よくよく考えてみれば、働く社員はどんどんもっと動けるようになるのに対し、働けない社員はずっと働けないままだ。
過活動気味な人はずっと過活動な傾向があるし、ナマケモノは延々とナマケモノであり続ける。
つまり行動量という概念に近い意味での体力は、なんでもいいからとにかく過活動であり続ける事でもってちょっとづつ増やせるタイプのものなのである。
だからあなたがもっと生産性を高めたいというのであれば、日々のランニングはとてもオススメである。
長い時間、常に高負荷であり続けられるアクティビティはそう多くはないが、ランニングをやればすぐにそれが実践できる。
そりゃ、よく働く人達が走るわけである。
走っても別に疲れないわけではない
続いて、ランナーが疲れにくいのかという話をしよう。
僕はいま毎朝5時に起きて10キロ走っている。
最初の頃は息があがったり筋肉痛がきたりしていたのだけど、今ではそういうものとは無縁である。
肉体的な意味でいえば僕はかなり体力があるはずだ。
じゃあ疲れにくくなったかと言われると、そういう実感はほぼ無い。
ぶっちゃけ運動する前と肉体疲労という意味では特に変化は感じられない。
今でも駅の階段をあがる時は以前と変わらず疲れる。
他にも睡眠時間が減らせるようになったかというとそんな事はないし、仕事における疲労の感じ方もほぼ同じである。
ランニングで鍛えられるのはランニングをする部分だけという事なのだろう。
改めて考えてみればだ。仕事が楽になるのは仕事に慣れてからである。
不慣れな仕事をやる際はいつだって終わったら疲れる。
そういう意味では、肉体がタフになったところで他の何かが疲れにくくなるというものでもないというのは、納得がいく。
もちろん、これは僕がまだ若いからで、年齢をそれなりに重ねて活動自体が難しくなるレベルで肉体が弱くなってきたら仕事や睡眠といったその他のアクティビティに様々な支障が出てくることは想像に難くはない。
そういう意味では何十キロも走れるようになってタフネスになった所で、スーパーマンになれるというものではなく、どちらかというと若い頃の肉体が維持され続ける期間がほんの少し長くなるという位の効用なのだろう。
それ故に多くの人は「運動してもしなくても、別に仕事が疲れずにこなせるようになるわけではない」と、働き始めてから運動を辞めてしまうのではないだろうか?
ぶっちゃけると僕がそう感じ、働き始めてから運動を辞めたというだけの話でもあるのだが。
まとめると、走って身につくタフネスは延命作業のようなものだという事である。
末永く活動し続けたいという人は走れば延命できる確率がそれなりにありそうだから、一考する価値はあるだろう。
頑張れるという意味における体力について
最後に、頑張りという意味での体力について書いていこうかと思う。
僕はこれまで2度の超激務を経験した。
一回目は初期臨床研修医をやっていた頃で、この時は360日ぐらい働いた。
24時間勤務も月に10回はこなす無茶苦茶な日々ではあった。
勿論そんな働き方をずっと続けられるわけはなく、僕はその後はもうちょっと楽ができる病院を選んだ。
そうやって数年間タラタラした後に、色々あって今また超激務をやっている。
人生には頑張らなくてはならないタイミングというのがある。
僕にとっては今がまさにその時なのだけど、この頑張れるタフネスだけはランニングやその他の何をもってしても拡張は難しい。
少なくとも僕はこれを拡張する方法が全く思いつかない。
これはどちらかというとゲームの必殺技ゲージのようなもので、たぶん使ったら消える性質のものだ。
だから次にまた打ちたいのなら、回復するまで待つしか選択肢はないように思う。
改めて考えてみると受験もそうだった。
僕は高校受験を選んだのだけど、受験勉強で疲れ果ててしまって高校入学後は2年ばかし本当に何もする気が起きなかった。
結局そこから回復できたのは高校3年生になるちょっと前ぐらいからで、そんな事もあってか見事に二浪をキメた有様である。
激務に類する”頑張り”は寿命の前借りみたいなものだ。
頑張れは頑張るほど、その後の反動が凄い。
期間を決めて、その間だけはつべこべいわずに全力でやるという覚悟が無いと走りきれないし、そのあと数年はダラダラしないとマジで死ぬ。
このタイプの体力に関して言えば、本当に許容量も回復量も人それぞれだろう。
少なくとも僕は2年程度頑張ったら、次の3年ぐらいはもう頑張れない。それが僕の器である。
この手の”頑張り”で大切なのは、自分がどれぐらいのあいだ修羅をやれて、修羅をやったらどれぐらい一休みしないといけないのかを学ぶ事にあると思う。
現代日本では多くの人がこの”頑張り”を部活や受験といったアクティビティを通じて学ぶ事が多いだろう。
その時、親や教育者は単に
「よく頑張ったね」
と言うだけではなく、次にもうひと頑張りしなくてはならない時がくる前に
「いまは休め。次のキツい時がくる前に」
と言ってあげるのがとても大切な事のように僕は思う。
人間、本気になった時にだけ学べるものがあるというのは確かだ。
煉獄には楽園には落ちていないタイプのアイテムがゴロゴロ転がっており、そのアイテムが人生を楽しく生きるにあたって重要なキーアイテムとなるのは事実である。
今は頑張るべきときか、それとも次に頑張るべき時の為の準備期間なのか。
そう、常に自分に問いかけ続ける事が肝心だ。
貴方はあと人生で何回”頑張れる”だろうか?そう考えてみれば、そんなにもう頑張れる回数が残されているというわけではないという事が理解できるだろう。
その”頑張り”を何にどのタイミングで使うのか。これが人生をうまくやる1つの秘訣なんじゃないかと僕は思う。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
【著者プロフィール】
都内で勤務医としてまったり生活中。
趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。
twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように
noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます
Photo by Tim Mossholder