先日、当サイトで『正確に文章が読めない人の話。』という記事が公開され、たくさんの人に読まれていた。

 

記事中では、読めないのは読み飛ばしや勝手な解釈が要因であることが多く、文字で認識するのが苦手な人には音声(声)で伝達するほうがいい、と締められている。

 

たしかに、連絡事項をすべて書いたにもかかわらず、「あれ、そんなこと書いてありましたっけ?」と言われたり、「すみません、ちゃんと読んでませんでした」と謝られることはある。

 

いくら丁寧に書いても、相手が読んでくれないことにはどうしようもない。

困ったものだ。

 

でもね、知ってるんです。

文章が読めない人のなかには、結構な割合で、「文章をちゃんと読まなくてもいい」と思っている人がいることを。

 

漢字が読めなくても気にしないゲーム実況者たち

わたしはゲームが好きで、よくゲーム実況(ゲームしている様子を配信しているもの)を見ている。

そこで驚くのが、漢字が読めず、しかもそれを気にしていない人の多さだ。

 

たとえば、主人公がこれからボスに挑むぞ!という場面で、実況者が双方のセリフを読み上げていたとする。

「えーっと、『ついにたどり着いた、覚悟しろ』『ククク、その心意気は褒めてやろう。だがすべては無駄な努力だ』……ん? これ、なんて読むんだ? なんとか「る」。俺漢字読めないんだよね(笑) じゃあボス戦、いきまーす!」

のように。

 

それが「侮る(あなどる)な」であれば、「俺たちには仲間がいる!」という王道展開が待っていそうだし、「驕る(おごる)な」であれば、「調子乗ってんじゃねーぞ」という主人公の強気な性格がうかがえる。

もしかしたら過去、ボスとなにか因縁があったのかもしれない。

 

主人公とボスの関係性、バトルの雰囲気を理解するためには、大事なセリフだ。

しかし実況者は、そんなのまったく気にしない。興味すらない。

数秒待てばコメントで漢字の読み方を教えてくれる人がいるだろうに、それすら待たずに進めていく。

 

そう、この世には、「ある程度理解できていればちゃんと文章を読めていなくても別にいい」と考えている人が、結構たくさんいるのだ。

 

その人たちのなかでは、8割くらいの理解度で「読めた」認識だから、残りの2割の読み落としを指摘されてもなんとも思わない。

だって、8割理解で十分だと思っているから。

 

だからそれを指摘されても、「すいません、ちゃんと読んでませんでした」と言えるのだ。平然と。悪びれず。

実況者がコメントで、「それさっき書いてありましたよ」と言われても、「え? マジで?」と意に介さないように。

※ちなみにこれは認知能力には問題がない人の話であって、心身の都合により読むことができない人はまた別だ。両者を区別するため、本記事では文章を「読めない」ではなく「読まない人」と表記する。

 

部屋を片付けない子どもを叱っても、部屋はきれいにならない

わたしは、文章を読まない人=部屋を片付けない人だと思っている。

注釈を入れた通り、読めない人と同様、心身の状態により部屋を片付けられない人はいる。

でもそうではなくて、単純に「これくらい片付いていれば十分」のラインが低く、他人から見たら「散らかっている」部屋の人も少なくない。

 

その人にとって、片付いていない状態でもとくに問題ない。

だから「片付けろ」と言われても、これくらいでいいじゃないか、うるさいな、と思う。

 

母親に小言を言われて片づけることはあっても、当人に問題意識がないから、すぐに元通り。

……ちなみにわたしもそういうタイプの人間で、正直、家はそんなにきれいじゃない(散らかっているだけで衛生的に汚いわけではないけど)。

 

来客があるときは、同じく片付けないタイプの夫と必死で片付け、「今度こそこの状態を維持するぞ!」と固い決心をするものの、1週間後には元通りになっている。だって、それでも困らないから。

 

「読まない人」の思考回路もきっと、「片付けない人」と同じなんだと思う。

「ある程度理解できてるから十分だろ」と思っているからこそ、それ以上ちゃんと読もうとしない。

 

「〇〇って書いてあったでしょ」と注意されても、母親が「部屋を片付けなさい」と言うくらいの小言にしか思わないし、「じゃあ今からそうするよ」で終わり。

実際それでなんとかなっているのだから、自分自身が変わる必要性も感じない。

 

これは読む・片付けるだけにとどまらないが、結局のところ、その人自身に問題意識がなければ変わらないし、いくらまわりが注意しても、本人のストレス(もしくはまわりのストレス)にしかならないのだ。

 

自分が損する場面ではだれだってちゃんと読もうとする

とはいえ、オンラインコミュニケーションが多い現代社会で、読まない人と付き合うのはかなり面倒くさい。

何度も確認しなきゃいけないし、読まない人が必要事項をきっちり全部書いて伝達できるとも思わないし。でも相手を注意しても本人は問題だと思っていないわけで……。

 

さて、どうするか。

それならもう、実利かペナルティで意識改善をはかるしかないんじゃないかと思う。

 

わたしの夫はまさに「散らかってても全然気にならない片づけない人」なのだが、わたしが初めて彼の家に行ったとき、家はぴかぴかで床に脱ぎ散らかした服なんてひとつもなく、なんならおしゃれなポスターまで貼ってあった。

 

好きな子に悪印象を持たれたくないという理由で問題意識が生まれ、だれに言われるでもなく、自分から片づけたのだ。

まぁ、前日慌ててポスターを買っているのをわたしに目撃されてるんだけどね。

 

で、これは「読まない」実況者にも、同じことがいえる。

漢字が読めないことをまったく気にしていない実況者が、画面を一時停止して、文章を一字一句丁寧に読み上げることがある。

 

それは、一度しか使えない超レアアイテムを手に入れたときや、ボスを倒すのに必須の必殺技を習得したときなどだ。

そういう場合、説明欄に書いてある細かい仕様まで全部読み上げ、「つまりこういうこと?」「え、じゃあこの場合どうなるの?」とリスナーに確認、ちゃんと理解しようとする。

 

片づけない人でも彼女のために部屋を片づけるように、読まない人だって、しっかり理解していないと自分がその後困ると思ったら、ちゃんと読むのだ。だれだって、自分が損をするのはイヤだから。

 

つまり読まない人に「読まないとあなたが困りますよ、損しますよ」と理解させることが、「読む」ようになる一番手っ取り早い方法なんじゃないかと思う。

 

読まないことへのペナルティがあれば意識は変わる

そもそも「読まない人」は、なぜ読まずにやっていけているのだろうか。

それは、まわりがフォローして、なんやかんや許しているからだ。

 

遅刻する人が遅刻し続けるのと同じ。

どうにかなると知っているから、それに甘え、改善しようとしない。

 

でも、ちゃんとやらなければそれなりのペナルティがあるとしたらどうだろう。

たとえばメールに書いた通りのタスクができなかったら、自分のミスを記載のうえ各所に謝罪の連絡を送らなきゃいけないとか、意思疎通がうまくいかないことを理由にプロジェクトから外されるとか。

 

それがわかっているうえで、メールの内容を流し読みする人は、あんまりいないんじゃないかと思う。

「やらなくていい」と思うからやらないのであって、「やらないと困る」のであれば、たいていの人はやる。

それでもやらないなら、もはや問題は「読む」能力ではない。

 

もちろん、「そういうぺナルティで無理やりやらせても意味がない!」という人もいるだろう。

でも読まない人をそのままにしておくと、マジメでデキル人がつねにフォローしなきゃいけなくなり、ちゃんとしている側の人のモチベが下がり、最終的にいなくなってしまう。それは、コミュニティ全体の損失だ。

 

ペナルティに抵抗があるなら、「ご褒美」でもいい。

「〇〇君、ちょっとメールでの見落としが多いよね。そこらへんを気を付けてくれたら、安心してもう少し大きな仕事を任せられるんだけど……」というニンジンをぶら下げるとか。

 

読まない人への対処は伝え方より意識改善

正直、「いい大人ならそんなこと言われなくともちゃんと読めよ」という話ではあるが、読まない人は本当に読まない。それが必要だと思っていないから。

 

そういう人に対して、どうやったら読んでもらえるかと伝え方の試行錯誤をしたり、読まないことを注意をしたりしても、本人が変わろうとしなければなにも変わらない。

それは、部屋を片づけない子どもに「片付けなさい!」と言い続けるのと同じだ。

 

ちゃんと読まない、そのことを悪びれない人がいるのであれば、まずは「読まないと自分が困るぞ、損するぞ」という環境にしてみてはどうだろうか。

損をしたくなければ、「ちゃんと読もう」という意識に変わるだろう。

 

そこで変わらなければもう、伝えた通り、実際に困って損をして思い知ってもらえばいい。

冷たい言い方ではあるが、機会を与えたのであれば、あとは本人の選択だから。

 

 

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(2024/3/26更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

Photo by :UnsplashPhillip Goldsberry