長い社会人生活で、そこに自分の道を見出してしまったのか、「粗探し大好きマン」として、他者の失敗をあげつらうのを生きがいとする人間は、どこの組織にも多かれ少なかれいる。

 

原因は人それぞれだろうが、このタイプに共通しているのは

・批判はするけれど対案は出さない

・「チェック」と称してとりあえず無意味な意見を出す

・相手にダメ出しをして自分が優位に立ちたい

そして、根拠のあるなしに関わらず自分を優秀だと思い込んでいることである。

 

社内で「口だけ」とのコンセンサスが持たれている場合は、単に不快なだけで済むが、組織によってはそんな人間がうっかり出世したり、高い職位にのさばっていたりすることが往々にしてある。

こうなると「粗探し大好きマン」は、不愉快な存在というだけでは済まなくなる。

 

相手の職位によって対応は変わってくる

現場で頑張っている時に外野からノイズを投げかけられることほど嫌なことはない。

 

真面目に働いている人からすれば

「明日にでも突然蒸発してくれ」

と願わずにはいられない存在だが、この手の輩は避けていても往々にして絡んでくるから厄介だ。

 

そこで、対峙しなければならなくなった際に考えるべきは、相手の社内でのポジションだ。

 

(1)粗探し大好きマンが部下の場合

自分のことを優秀と思い込んでいて、指示を全く聞かず、理由をつけて手を動かさない。

そして、真面目にやっている同期のやる事にケチをつける。

 

そこまで言うなら君が担当したらと問うと

「何で僕がやらないといけないんですか」。

 

筆者がかつて日本の出版社で中間管理職をやっていた際、実際にいた若手である。

「こんな意味のない会社さっさと辞めて、起業しようと思ってるんで」

が口癖で、上の人間は一体何を見て採用したのか、謎が謎を呼ぶ人材だった。

 

が、中には使える粗探しマンもいる。

自分では何も生み出さないが、他人のミス指摘に関しては超一流なので、その特性に合った仕事を与えると、意外に輝いたりする。

 

編集業務には誤字脱字チェックなどの校正という仕事があるのだが、それはある意味「粗探し」と言えなくもなく、中にはその適性がある人物もいた。

もっとも、存在が不快なことに変わりはないし、指摘する以上の立場を持たせると暴走するので、あくまで間違い探し係として使うだけにとどめる。

 

他業界でも同様のケースはやはりあるらしい。

「うちにもまさにそういうの、いるんですよね」

と言ったのは、長く友達付き合いをしているAVメーカーの広報。

他人の些細な落ち度であっても、気づいたら誰彼構わず噛みつく狂犬のような社員がおり、人間性は最悪だがそれでも会社としては必要な人材なのだという。

 

「作品を審査機関に回す前に社内でモザイクチェックをやるわけなんですが、他の人間なら見落とす一瞬のずれなんかを、奴は目ざとく見つけるんですよね。ある意味職人というかもはや機械みたいな精度で、モザイクマシーンとして重宝されてます。まあでも、皆に嫌われ抜いてますが」

 

彼らを無理に矯正しようと思わないことだ。

人間、出来上がった性格はそう変わるものではなく、努力は徒労に終わる可能性が高い。

 

そんな場が常にあるとは限らないが、逆に、その性格を活かせる場を与えられないか、考えてみてはどうだろう。

 

(2)同僚もしくは同格の職位にいる粗探し大好きマン

誰かをおとしめることで自分の地位を相対的に上げようとするチクリ魔が、あなたに対して社内で対等に物を言える立場の場合、常にその者とのバトルを想定しておかなければならない。

 

仮に攻撃対象として認識された時、戦うならば、決め手となるのは社内で決定権を持っている者の信用だ。

要は、チクリ魔が言うことが正しいのか、現場を知るあなたの言葉が本当なのか、ジャッジを下す上役の意向が重要なのである。

 

粗探し好きの人間は、上の人間に対しては徹底して犬をやる傾向が強い。

見る目のない経営者だとそれにコロッとやられるわけで、理不尽な状況になることもある。

 

ただし、そこであまり悲観する必要はない。

なぜなら、いずれ本人が責任を負う立場に就いた時、ボロが出ることは明らかだからだ。

 

これは筆者の身近で最近あった話だが、とある企業で海外支社のトップと本社の経営陣の腰巾着が壮絶なバトルになった。

その腰巾着さんは「私は半分法律の専門家」が口癖なのだけども、メルカリで本人のアカウントが発見され、『一から分かる法律入門』みたいな本が大量に出品されていて、「あ、察し」となる。

 

しかし、その海外支社トップは「あまりにもアホすぎる」と相手をなめてかかっていた。

結局彼は、油断から職位を追われ、後釜にはその腰巾着が赴任した。

相手を決してなめてかかってはならない。

 

しかし、腰巾着の粗探し大好きマンも、最終的には破滅に至る。

2番手、3番手であれば文句も垂れていればよかったが、もうどう考えても自分が責任を負うしかない立場になると、全く実務能力がないことが自ずと露呈する。

 

前任者のせいにできるのなんて最初の数カ月程度だ。

 

彼も、やがてとんでもない売り上げ減少を引き起こし、責任を問われ始めた。

それでも最後の最後まで人の粗探しをしていたそうだが、最終的に退職に追い込まれたと聞いたのがつい最近のことだ。

 

(3)上役またはオーナー社長が粗探し大好きマン

会社組織もある程度上の立場になると、チェックをするのが仕事という人がいる。

このような職位にある場合、マトモな方なら建設的な意見や的確な批判をするものだが、中には言いがかりのような言葉を吐く輩もいる。

 

例えば編集の世界なら、「絶対その直し、いらないよね」という修正指示を上役が出してくる。

なぜそんなことが起きるかというと、チェック役にとっては問題なしとばかり言っていたら、何もしていないことになる上に、そもそも自分の存在意義がなくなるからだ。

そこで、問題があろうがなかろうが、ダメ出しや批判から入り、「仕事してます感」を出してくる。

 

さらに、オーナー社長が減点法であらゆることに口を出し、少しのミスにも叱責するタイプだと最悪だ。

 

こういう人が統べる組織に運悪く属してしまった場合、個人にできることは残念ながら少ない。

オーナーの気質=企業体質となりがちで、よほどのことがない限り改まることはないからだ。

 

耐え忍んで残るメリットと己の精神的リミットを天秤にかけて、判断を下すしかないだろう。

結局のところ、身も蓋もない話を言えば、一番いいのは一刻も早く職場から離れること。

 

西晋の学者・傅玄曰く、「近朱者赤、近墨者黒」(朱に近き者は赤く、墨に近き者は黒し)。

自分まで粗探しに躍起になる悲しい人とならないよう、時には思い切って人間関係を整理し、組織から飛び出す勇気持つことだ。

 

 

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東京大学経済学部卒業後、ドイツ証券に入社し投資銀行業務に従事。
2020年に株式会社TOKIUMに参画し、当時新規事業だった請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の立ち上げを担当。
2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。

安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。


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(2025/5/8更新)

 

 

 

【プロフィール】

御堂筋あかり

スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。

Twitter :@kanom1949

Photo by Atikh Bana