「急募! ホールスタッフ募集
パート・アルバイト
時間/8:00~21:00 の間でシフト制
時給980円 高校生950円 日曜・祝日は50円アップ
フリーター・学生歓迎 社員登用あり」
繁華街にあるカフェの入り口にでかでかと貼られている求人募集のチラシを見て、頭がクラクラした。
舐めとんのか、この店は。
な〜にが学生歓迎だ。今どき、時給1,000円以下で働く若い子がいるわけないだろう?
地方なのだから、このくらいの時給と条件で十分だとでも思ったのだろうか。
むしろ、人口減と少子化が進んだ地方だからこそ若い労働者は奪い合いだというのに、分かってないな。
今どきこんな時給と条件で募集をかけて、応募があると本気で考えているならイタ過ぎる。
「この店って、もう色んな意味で完全に時代からズレてるんだよなぁ。まったく、いつまで平成を引きずっているんだか」
思わず、ひとり言がもれた。
チェーン店ではあるものの、かつては街で一番オシャレなカフェとして人気を集め、今ではすっかり時代遅れになった店の古びた外観を眺めながら、オーナーの顔を思い浮かべた。
このカフェのオーナーは、かれこれ1年以上も前から「人手不足が本当に深刻だ」「求人に応募がなくて困っている」とこぼしているが、この求人広告を見る限り、本気で人を採用するつもりがあるとは思えない。
学生どころか、これでは主婦の応募もないだろう。飲食の仕事はきつくて疲れるのだから、似たような時給なら、もっと楽な仕事がいいに決まっている。
近頃は、外を歩けばいくらでも求人募集の張り紙を見る。小売店にも多いが、一番多いのはやはり飲食店だ。
「スタッフを募集しても応募がない」
「誰か雇いたくても、そもそも人が居ない」
という話は、「今日はいいお天気ですね」くらいの頻度で、あいさつがわりにそこかしこで交わされているが、応募がないのは人がいないからではない。「お前らが提示しているような低賃金では、生活していける人が居ない」だけの話である。
昔と違い、今では学生も主婦も、ほとんどの人が生活のために働いている。小遣い稼ぎや社会科見学、暇つぶしのため働くわけではないのだ。
生活のために働いているのだから、より多くの賃金を受け取れる仕事に労働者が流れていくのは当然だ。
「やりがいのある仕事です」
だの
「アットホームな職場です」
だのはどうでもいい。っていうか、それって自分で言うことなのか?
そうした時代の変化に合わせて、労働者が納得できる賃金をちゃんと払っているお店には、スタッフがそろっている。
つまり、求人に応募がないのは、単に労働者に選んでもらえる条件ではないというだけのことだ。
実際、そのカフェの向かいにある寿司屋では、何人もの若いアルバイトたちが毎日キビキビと働いているのだから。
ちなみに、その寿司屋の雇用条件は、時給1,300円。夜10時を過ぎたら1,500円。土日祝日に夜のシフトに入ると1,700円。もちろん賄い付きである。
立ちっぱなしで忙しい仕事をさせるのに、時給1,000円ぽっちではお話にならない。だが、そのカフェでは時給800円でも真面目によく働くスタッフを雇えていた時代の感覚が、いまだに抜けていないのだろう。
労働者が時給たった800円ポッチで、およそ賃金に見合わない責任を負わされ、理不尽な扱いにも文句を言えず働かざるをえなかったのは、私たち氷河期世代が若かった頃までの話である。
私たちが若かった頃は、「社員登用あり」の文句はニンジンだった。
当時は、新卒時に正社員として就職ができず、とりあえず非正規で働き始めた若者が、「真面目に働いていれば、いつか社員にしてもらえる」と希望を抱いて、懸命に働いたものだ。
しかし、そうした非正規労働者の弱みにつけ込んで、有能なスタッフの仕事に対する成果や、真面目なスタッフの忠誠心に報いず、使い捨ての労働力として使い潰してきた企業が、ここへきて労働者から見限られるようになってきたのだ。ざまあみろ。
もはや「社員登用あり」とぶら下げても、それに魅力を感じて応募する求職者は見当たらない。
正社員になったところで、増えるのは責任と労働時間だけ。バイトから社員に身分が変わっても、低賃金は変わらないのがバレている。
だいたい、従業員を正社員として雇うつもりが本当にあるなら、最初から堂々と正社員を募集すれば良いじゃないか。
アルバイトを募集しておいて、「後から正社員にするつもりがあります」などという発想がセコイんじゃ。
そういう会社は、「真面目に頑張って働いてくれたら、そのうち正社員にするよ」と言いながら、まずは非正規のままで何年もこき使おうという魂胆なのだから、もうその時点でろくな企業ではない。
件のカフェでは、正社員登用されると月給23万円〜と募集広告に書いてあったが、それは額面の給料なので、手取りだと18万円にしかならない。
しかも、以前その企業で働いていた元社員によれば、「法定勤務時間は守られず、定時なんてないのと同じ。長時間労働なのに、ろくに残業代も出なかった」そうだ。
いくら求人を出しても応募がないのは、あそこはブラック企業だという評判が広まっているからとも考えられる。
住宅の補助もなく手取りが20万円以下では、地方でも食べていくのがやっとの収入だが、近頃は物価がどんどん上がっているので、これからは食べていくのもままならなくなるだろう。
こんな世の中では、もう同じ仕事をするのでも同じ給料では働いていられない。
「地方は、手取りどころか額面で20万円ないのは普通だよ」と、よく言われる。
雇用されている側は諦めたようにそう言うし、雇用する側は「うちは、ちゃんとこの地域で平均的な給料を出している」と、ドヤ顔だ。
しかし、その平均とされる給与の額が、そもそもおかしいと思わないのだろうか。
だから県外資本に負けるのだ。
近頃は地元企業がショボイ条件で求人募集をしている一方で、都会に本社を置くチェーン店が繁華街の一等地に乗り込み、大盤振る舞いな条件で求人を出してくる。
「求人募集!
正社員 給与36万円〜
パート・アルバイト 時給1,300〜
入社ボーナス 未経験者60万円! 即戦力なら90万円!
紹介制度で入社の場合 紹介者にボーナス20万円!被紹介者が1年勤続した場合、双方にボーナス10万円!」
当たり前だが、そういう店にスタッフが集まるのはあっという間だ。
地元の企業経営者はその様子を見て、
「県外の店にばかり人やお金が集まると、地域からお金が流出して、ますます地方が貧しくなってしまう」
と嘆いて見せるが、知らんがな。地元が貧しくなって困るのなら、お前らが従業員にまともな給料を出さんかい。
日本で労働者が再生産されなくなったのは、30年ものあいだ経営者たちが労働力を安く買い叩き続けたせいである。そして、人手不足が表面化するまでは、雇用する側の立場が圧倒的に強かった。
「仕事が嫌なら辞めればいい。お前の代わりはいくらでも居る」
と言い放ち、高圧的な振る舞いも許されてきた。しかし、人手不足が極まった今では、立場が逆転したのだ。
もはや口の聞き方に気をつけなければならないのは、雇い主の方である。
それなのに、いまだに従業員に偉そうな態度をとっている経営者は、心得がなっていないとしか言いようがない。
しょっちゅうスタッフに逃げられて、年じゅう求人を出している経営者ほど「最近はまともに働くスタッフがいない」「スタッフがわがままで、直ぐに辞める」「ちっとも求人に応募がない」と嘆いているのだから、まるでコントのようで哀しくもおかしい。
「若者の数が少ない」
と大人たちは嘆くが、若者たちの方では
「まともな給料をもらえる仕事が少ない」
と嘆いているのだ。これでは、地方の若者が都会や海外に流出していくのも無理はない。
景気が良くない地方でさえ、バイトの時給は1,100〜1,300円が普通になりつつある中で、時給980円しか出せないカフェは、スタッフを集められずに閉店すると思われる。
その店に限らず、人手不足で閉店の危機にある店は数多い。
こういう言い方はなんだが、従業員にまともな給料を出せないような店なら、潰れてしまえばよいのだ。無くなったところで誰も困らない。
今の人手不足は、地域の人口に対してオーバーストアであることも原因なのだから。
日本全体で、労働者や消費者の数に対して商店の数が多すぎるのである。
これからは人手不足と後継者不足で閉店ラッシュが始まるだろうが、人口減で消費者も減っていくのだから、ブラックな職場は軒並み潰れるくらいでちょうど良いだろう。
もし「潰れてたまるか」と思うのであれば、つべこべ言わずに給料を上げてみせろ。話はそれからだ。
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【著者プロフィール】
マダムユキ
最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。
Twitter:@flat9_yuki
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