辞めていく人間に

「お前みたいなやつは、どこへ行っても通用しない」

という、説教をする人がいる。

 

辞めるときになって、そんな言葉をかけるのもどうかと思うが、これについて一つ思うところがある。

果たして「どこへ行っても通用しない」は真実なのか?

という疑問だ。

 

 

私がコンサルタントだったころ。

様々な会社で、辞めていった人間には直接言わなくとも、経営者や管理職が

「ああいう人間は、どこへ行ってもダメだよね」

と言うのを、よく聞いた。

 

とはいえ、この物言いは議論を呼ぶ。

実際、

「人はそんなに変わらない」

と考える人と、

「場所や環境が変われば、その人のパフォーマンスも大きく変わる」

と考える人が結構はっきりと分かれるからだ。

 

例えば、前者の代表的な例として、採用の際に「前職のパフォーマンス」を見ることが挙げられる。

平たく言えば、多くの人は

・どんな役割だったか?

・どのようなパフォーマンスを出したか?

・どのようにして困難に対処したか?

こうしたことを聞いて、「うちでも活躍できるか?」を判断している。

 

学歴も同様だ。

特に商社や金融機関、コンサルティング会社は、いわゆる高学歴が多いが、それは

「勉強でパフォーマンスを出すことができたのだから、仕事でも同じようにパフォーマンスが出る蓋然性が高い」

との考え方を基にして、新卒採用、あるいは中途採用をしているからだ。

 

「勉強できるやつは、仕事もある程度もできるよね」

との考え方は、新卒採用においては特に根強いようにも解釈できる。

 

 

一方で、環境が変わると突然パフォーマンスがあがる「化ける」人も、決して少なくない。

 

私が在籍していたコンサルティング会社の一部門では、中途採用において、本当に「学歴不問」「経歴不問」で、独自に採用を行っていたことがあった。

その中には

八丈島の漁師だった人。

実業団でバスケをやっていた人。

パチプロになるために大学を辞めた人。

など、「コンサルタントのパフォーマンス」とはほとんど関係のないことをしていた、多くの人達がいた。

 

そんな人たちがコンサルタントをできたのか。

 

実は蓋を開けてみると、彼らは皆、パフォーマンスが高かった。

むしろ「普通の経歴の人」よりも、良かったくらいだ。

コンサルティング会社を辞めた後、独立して経営者になった人も少なくない。

 

彼らを「前にやっていたこと」だけで採用していたら、誰も採用されなかっただろう。

 

「偶然じゃないか?」

と言う人もいるかもしれないが、これは偶然ではないと思う。

根源的な、「働く場所を変えると化ける人」の条件があるように見えた。

 

 

ではその条件とは何か。

 

その人の責によって、パフォーマンスが出なかった人」ではなく

 

環境によって、パフォーマンスが出なかった人」は、

「一芸に秀でているが、欠点も多い人」

であることが多かった。

 

例えば、「服装がだらしない」といった外見上の欠点や、「時間にルーズ」「整理ができない」人は、適切な機会を与えられないケースが多い。

 

あるいは「口が悪い」「率直すぎる」などのコミュニケーション上の欠点。上司や評価制度と折り合いがつかない人。

「書くのが苦手」「電話が苦手」などの単純作業の得意不得意も不利に働く。

 

大手では「ミスがない」「全部そつなくこなす人」が評価されやすいため、人付き合いや、些末な事務処理能力に欠点がある人は、パフォーマンスを発揮しにくい。

 

だから、我々はそうした欠点はできるだけ見ずに、現在の社員にはない能力を持つ人を採用するようにした。

 

そうして採用した、一芸に秀でている人は、環境を変えると、「化ける」ることがある。

 

上司を変えること。

苦手な仕事をやらせないこと。

タスクを管理してあげること。

事務作業を肩代わりしてあげること。

上から押さえつけないこと。

 

一芸に秀でた能力があれば、「強みだけで仕事をさせる」ことが可能となる。

そういう人を部下に抱えている上司の仕事の中心は、「環境を整備すること」が、中心になる。

 

 

ところが。

世の中は残酷なもので、そもそも、「秀でたところが何もない」人もいる。

 

何をやっても凡人以下。

あるいは「気力がない」ことで、行動をしない、手を動かさない人たち。

 

仕事は、頭の良し悪しよりも

「手を動かして、失敗しながらも、修正を繰り返して、目的に達する」

という習慣的な能力が重要であるため、「小賢しいだけ」の、何も秀でたところがない人たちが少なからずいる。

 

そういう人たちは、環境を変えても同じだ。

「お前みたいなやつは、どこへ行っても通用しない」

と言われて、それが当たっているので、実際に不毛な転職・異動を繰り返すことになる。

 

 

救いがないように見える。

が、そんなことはない。

「何をやっても凡人以下」というのは、長期的に見れば、ほとんど解消可能である。

 

多くの仕事は、天才である必要が全くないからだ。

訓練と、努力で十分、凡人を超えるパフォーマンス、つまり「一芸」は身につく。

 

だからあえて言えば、

「口ばかり達者で、手を動かさない」

「成果が出るまで努力も辛抱もできない」

という人間以外は、環境を変えれば必ず活躍できる余地があるものだ。

それは、多くの会社ですでに実証されている。

 

良い人事と言うのは、そういうことを理解したうえで、

「環境のせいでパフォーマンスが出ない人」

に対して、活躍できる場所はどこか、どうすれば彼のパフォーマンスがあがるのかを、本人・上司たちと一緒に考える人たちだ。

 

 

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【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」65万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

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