1年の最終日。今年を振り返りながら書いてみたい。

 

2024年末から2025年にかけて、「言語化」がブームだったようだ。

Amazonで検索してみると「言語化」関連の書籍がわんさか出てくる。

 

私もこのビッグウェーブに乗り、「バイトするなら、タウンワーク」などのコピーで知られる、コピーライターの梅田さんと、日経ビジネスで随分と「言語化」について話させていただいた。

ひとつ上の言語化

三省堂が2015年から開催するキャンペーン「今年の新語」で、2024年の大賞に輝いた「言語化」。かつて学術の世界に留まっていたこの言葉は、メディアでの露出を重ねながら私たちの日常に浸透し、静かなブームを起こしている。書店の棚を埋める関連書籍、そして「上手な伝え方」への関心の高まり……その背景には、複雑化する現代社会で胸の奥に渦巻く感情や思考を、的確に表現したいという切実な願いがある。

しかし、コミュニケーション技術を磨くことが、果たして言語化の本質なのだろうか。表面的な「伝達スキル」の向上だけに気を取られていると見落としてしまう、もっと“深い領域”があるのではないか。(日経ビジネス)

 

「言語化」の本質

しかし、この「言語化」という言葉、一体どのような意味で使われているのだろうか。

 

と思って、調べてみると実は、この言葉、「日本国語大辞典」でも「広辞苑」で調べてみても、出てこない。

辞書にない言葉、新しい言葉なのだ。

それゆえに、現時点では「言語化」という言葉は、それを使う人の解釈に利用方法が委ねられている。

だから、基本的には使い方に「間違い」というものは存在しない。

 

しかし、あえてここで一つだけ取り上げたい。

「言語化力」と「文章力」を同一視している人が多いようだけど、実は、全く違う能力なのだということを。

 

例えばこれ。

三宅さんの「言語化力」に対する批判の文章だ。

太字で見る 三宅香帆の言語化能力

対象が多いため、問題を3つに分類します。

1.言葉選びが不適切
2.構文がおかしい
3.論理がおかしい
複合している場合もありますが、分類は形式的なものであり、重要ではありませんので、言いたいことの比重で無理やり分けました。

実はこれらの指摘はすべて、「文章力」に関するものであって、言語化力に対するものではない。

 

「言語化力」と、「文章力」は、全く異なった能力であり、「言語化力」を「文章力」の意味で使ってしまうと、「言語化力」の本質を見失う。

 

例えば、以下のようなシーンを考えてほしい。

以前から上司に相談していた、SNSを使ったマーケティングの試みを始めたいと思っている。
ただ、当社ではSNSを使うマーケティングは初めてで、前例がない。

しかし、当社の商品はBtoBtoC的な性格が強いのと、社名はよく世の中に知られているということもあり、SNSでの発信は注目をされる可能性がある。
したがって、上司を説得し、SNSの利用を許可してもらいたい。

ここで一つ問題がある。上司はSNSを使ったことがない人で、そのメリットをわかっていない。
かなり否定的な意見を言われそうである。

この状況で、

「SNSの有効性をわかりやすく述べた、提案文章を作れれば、上司を説得できる」

と思っている人はいるだろうか。

 

例えば、以下のように。

SNSをもちいた発信は、以下の3つのメリットがあります。

・今までに当社が接触できなかった層へ、認知が広がります。
・ユーザとの関係性を深め、その結果サイト誘導・問い合わせ・購入などのアクションを誘発できます。
・データを見て、ユーザの反応を素早く学び、内容や配信先の改善がしやすいです。

この文章はたしかに「わかりやすい文章」ではある。

 

だが、上司を簡単に説得できると、ほとんどの人は思わないだろう。

「わかりやすく」「正しい」文章であるからと言って、上司の説得ができるとは限らないからだ。

 

「人に刺さるかどうかは、文章力の問題ではない」。

「わかりにくいけど、刺さる」表現はあり得る。

 

・上司がSNSに対してもっている「勝手なイメージ」をうまく捉えて、急所をつくこと。

・上司が「いやあ、そういうことなら、ちょっとやってみようか」と思わせること。

・上司の「偏見」をうまく解消してあげること。

 

言語化においては、あくまで、その「コンセプト」や「道筋」を、作り出すことが「主」であって、それらを文章にすることは「従」にすぎない。

美辞麗句をならべただけでは、説得は不可能だ。

 

褒めるとき「すごい」「エモい」「やばい」になってしまうのは、文章力の問題ではない

結局「内容」がしっかりしていないと、

・真っ当な批判もできない

・人の説得もできない

ということであり、それは「文章力」ではなく、それ以前の「思考」の部分に問題がある。

 

また、誰かをうまく褒めたいときにいつも「すごい」「エモい」「やばい」になってしまうのは、思考が、アウトプットできるレベルまで整理されていないからだ。

もちろん、それが別に悪いわけではないのだが。

 

思うに、三宅さんはむしろ、

「働いていると本が読めなくなる」

「言語化力をつけて推しの素晴らしさを語りたい」

など、みんながなんとなく気にしていた、でも言語化できていなかったテーマを上手く捉えることは天才的であり、

「言語化能力が凄まじく高い」

という見方もできる。

 

抽象度の高い事象を、うまく捉える能力が「言語化力」

つまり、曖昧模糊とした、抽象度の高い事象をうまく「言葉」として捉えることのできる能力が「言語化力」である。

うまく日記をつけることができたり、良い文章を書けたりすることが言語化力ではない。

 

なお、こうした能力は、仕事や人生でもかなり重要とされるシーンが多い。

例えば、

 

・ふわっとした要求を、要件に変える

・クライアントの「価値観」を、うまくプロジェクトの目標に変換する

・会社の存在意義を捉えたキャッチコピーを作る

・自分の人生観を踏まえて、長期的な資産形成のプランを作る

・パートナーの欲求を捉えて、「結婚式」などの計画に落とし込む

 

ふわっとしたものを、皆が共通認識もって当たれるものに変換する作業こそ、「言語化能力」が真の意味で生かされる場所だ。

 

コピーライターの梅田さんは、「わかりやすくするなら具体的に、というのが一般的に言われますけど、抽象的だけど、わかりやすい」ということが、あり得るんです。

と言っている。

言語化の極みとは、そういうことを指すのだろう。

 

 

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こちらのウェビナー詳細ページ をご覧ください。

(2025/12/24更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」88万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

◯Twitter:安達裕哉

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◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

〇まぐまぐ:実務で使える、生成AI導入の教科書

Photo:Sven Brandsma