「センスないですね」

と言われたことはあるだろうか。

 

例えば、

「服のセンスがない」

「日本語のセンスがない」

「料理の盛り付けセンスがない」

「資料のセンスがない」

といった具合だ。

 

私もセンスのなさには自覚があるが「センスがない」と言われて傷つく人も多いようだ。

 

例えば、ちょっと前に、おじさんの服装センスについて、ずいぶんと盛り上がっていた。

 

おじさんが特に「ダサい」と言われることに対して、

「そういうふうにおじさんを馬鹿にするの良くない」

という人がいたり、

「こうしたらいいんじゃないか」

というアドバイスをしたりする人もいて、なかなかカオスだった。

 

そして、これに対して、面白い見解が流れてきた。

「イオンモールおじさんコーデ」が嫌われる理由を調べたら、2013年の女子ウケ最適解だった話

もしそれが今になって“清潔感がない”とされるのだとしたら、問われるべきなのは個人の美意識だけではなく、10年単位で「普通」を作り替えてきたファッション業界の側なのかもしれない。少なくとも、当時のファッション誌は彼らに合格点をつけていた。

今は「ダサい」と言われる服装は、かつての「正解」だったというのだ。

 

では、なぜ「正解」がダサくなったか。

その理由は、「差別化できていないから」

お洒落は差異化・差別化。ファッション業界はわかりやすいアイテムを売り出した。差別化競争が始まったのだ。

 

なるほど、と思う。

 

簡単に言えば、みんなが同じカッコをしたら、そのカッコは「ダサく」なる。

同じことをしたら、その活動は「ダサく」なる。

ゆえに、センスがない、というわけだ。

 

実際、立命館大学の千葉雅也は、著作「センスの哲学」の中で、センスについて、次のような定義を行っている。

では、全芸術と生活において、面白いと言えるような並び =リズムとは何なのか。それがわかること、それを作り出せることが、センスの「良さ」であるわけです。
「リズムが面白いとはどういうことでしょうか。  基本は、反復があって差異があること、です。同じことですが、言い換えると、規則があって逸脱があること、です。差異 =逸脱に「あれっ」と反応するわけです。」

 

服装には「定番」があり、それに対して、差別化たる「逸脱」があると、センスがあるように見えるということだろう。

 

確かに、能楽の始祖、世阿弥は「面白さは珍しさから生まれる」と述べている。

珍しさとはすなわち、差別化だ。

だから、差別化できる力が、センス、というわけだ。

 

したがって、

「差別化できていない格好をしているおじさん」

は、センスがない、ダサい、というのは、的を射ているのかもしれない。

 

センスがあるということは「差別化できる」ということ。

スポートなどをやるとき、

「サッカーのセンスがある」

と言われたら、「他のプレイヤーと差別化できる能力」をイメージすればよい。

 

ただ、一つ疑問が残った。

 

「センス」は身につくのか?

それは「センスがない人」救いはあるのか、身につくのかという話だ。

 

ただ、これは明確に答えがある。

結論としては、時間をかければ、誰でもおそらく「ある程度は身につく」。

 

これについては、一度過去に触れている。

例えば、ゲーム会社の経営者が「センスは伸びる」と言い切っている。

「行動力がある」とは、いったいどういうことか。

僕がずっと誤解してたのは、行動力とか営業力のほうが伸びると思っていましたが、実はセンスのほうが伸びるんですよ。だから、行動力が高い人を採用するようにしたんです。

(中略)

センスというのは、いろんな過去の経験からいろんなパターンを蓄積していって、年齢を重ねれば重ねるほどにそのパターンの中から適当にピックアップするが上手くなることなんです。

だから、若い人にセンスの高い人があまりいないのは、経験がないからですね。

 

センスが伸びるのは結局、「パターンの蓄積」によって、「定番」を学習できるから。

定番を知れば、何を、どこを逸脱して、差別化すればよいかを判別できるようになるからだ。

 

例えば、日本語のセンスを鍛えるには、そこから「逸脱」を画策できるようになれるくらい、日本語をたくさん読み書きし、「定番」を身につける必要がある。

 

資料がダサいのは、資料をたくさん見て、作って、「定番」を身につけてないからだ。

「ここをあえて崩しました」と言えるようになるためには、パターンへの深い洞察が必要となる。

 

 

こう考えていくと、他のセンスに比べて「服装のセンス」が問題になりやすいのはなぜなのかも、よくわかる。

 

それは「意図せず、他者の評価の対象になってしまう」からだ。

上のイオンモールの事例のように。

 

意図的に提出するもの、たとえばデザインや文章、スポーツ競技などであれば、それは本人も「評価の対象」となっていることが明確にわかる。

であれば、

・センスのある/なし

と言われることについて、「意図しない外部評価」はあまり発生しない。

 

が、「服装」はそうではない。

「着るもの」について、差別化など考えたこともなく、「失礼にならなければどうでもいいです」程度の認識しかもっていない人も多い。

あるいは、時間をかけたくない、と思っている人のほうが圧倒的に多いだろう。

 

であるがゆえに、頓着がない人は「普通の」格好をするために、センスを身につけるのではなく、

皆と同じような、

「とりあえず店が勧めたもの」

「とりあえず雑誌に載っていたもの」

「とりあえずみんなが来ているものと同じもの」

を採択する。

 

ただし、それは実は「ダサい」の本質である。

 

ただ、面と向かって「ダサい」と言われると、それはそれで、「そんな形で、突然評価されるとは思っていなかった」という反発につながる。

というわけで、「服装なんてどうでもいいと思っている人」と、「ダサい服装が気になる人」の争いは終わらない。

 

センスのない人に、救いはあるのか。

 

「ダサい」と思われたくなければ、服装について学習すればよい。

そして、周囲との差別化を図ること。

 

まあ、「ダサいよね」と言われることが気にならない人のほうが圧倒的に多いのかもしれないが。

 

 

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【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」92万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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