「今は、どこの大学に行ったかよりも、大学で何をしたかが重要です」と、その方は言った。
彼はあるテクノロジー系企業の採用責任者だ。数多くの学生を面接し、有能な学生を何人も引っ張った。
「大学受験までの勉強は、「自発的な探求」ではありません。」と彼は言う。「まあ、せいぜいパズルがうまく解けるといったレベルの話です。」
彼はそう言い切ると、少し沈黙した。私に今の言葉を反芻するよう促しているのだろう。
「だからあまり大学名は重視しません。それよりも、「卒論の質」のほうが遥かに重要です」彼はそう言った。
「どんなテーマを、どうやって決めたか。その面白さは何か。新しさは何か。先生に与えられたことをやっただけなのか、自ら追求したのか。それは「自発的な探求」をどの程度できるかのバロメータです。」
「そういうものですかね。」
「少なくとも、学校名よりは遥かに多くの材料が手にはいります」
私はひとつの質問をした。
「極端な話、よく知られた学校名の学生だけれど、卒論は「こなしただけ」という人と、無名の大学の学生だけど、卒論について「よく研究したな」という人と、1人だけ採用するとすれば、どちらを採用しますか?」
「残念ながらそういう事例は少ないですが…あえて言えば後者ですかね。前者は絶対に採用しません。要領がいいのは認めますがね。悪いですが、大学に何年間も通って、経験がサークルとアルバイトだけでは…なんのために大学に行ったのですか?と聞きたくなります」
「なるほど」
「後者は研究内容にもよりますが、採用の対象となります。まあ、とは言っても卒論だけで決めることはないですが。」
私は更に質問した。
「要領が良い、というのも立派な能力では?」
「それはそうですが、要領だけでやっていけるような甘い世界ではありません。」
「そんなもんですかね。」
「そうです。せっかく生まれ持った頭の良さも、訓練しなければ宝の持ち腐れです。学校名は頭の良さの一つの指標ではありますが。」
「なるほど」
「もちろん、その他にもコミュニケーション能力や礼儀正しさなども見ますが、知的能力は卒論への取り組み方で判断するのが一番良いと思います。」
私はまた質問をした。
「結果的に、有名校の人ばかり、ということはないですか?」
すると、彼はすこし笑った。
「どう思います?」
私が沈黙していると、彼は言った。
「指導教官の質が大きくモノを言うんですよ。実は。昔は研究室からの紹介で就職する人が多かったと言うじゃないですか。あれ、実は合理的ですよ。だから、学校名じゃなく、同じ研究室の人がズラリ、ということになりがちです。あまりそれも良くないので、分散させようとしてます。」
「結局、良い先生についた人が有利、ということでしょうか。」
「そうですね。」
「まるで中途採用のような採用方法だな」と感じた話だった。大学へ求められるものは今後ますます大きくなりそうである。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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