「時間は究極の資源」ということはよく語られています。実際、時間がなければ成果をあげることはできません。人を成長させるにも、説得するにも、全てにおいて時間が必要です。
ピーター・ドラッカーは成果をあげる人の条件として、こう述べています。
”成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何に取られているかを明らかにすることからスタートする。”
余談ですが、国際規格であるISOでは、マネジメントの基本的な枠組みとしてPDCAサイクル、すなわちPLAN、DO、CHECK、ACTをまわすことが大事であると主張していますが、実際に現場を見てみればそんなことは嘘っぱちで、PDCAサイクルでは成果をあげることはできません。PLAN(計画)からではなく、時間からスタートすることが必要なのです。
では、具体的に「時間からスタートする」とはどういうことか。次のように行います。
1.やるべきことの一覧を作成する(タスクリストをつくる)
2.タスクリストにある仕事を、先々までにスケジュールに書き込んでいく
3.スケジュールが先に埋まってしまうと思うので、余った仕事は捨てるか、スケジュールに既に組み込まれた仕事と入れ替える
ポイントは2です。スケジュールとタスクリストを連動させることで、「これ以上の仕事は入らない」と視覚的に理解することができ、「時間がどんなくだらない仕事に取られているか」を明らかにすることができます。
つまり、「これだけの仕事をやらなくてはいけない」という発想から、「自分が持っている時間はこれぐらいだから、仕事を捨てなくてはいけない」という発想に切り替わるということです。
しかし、時間からスタートしても、思うように仕事で成果をあげることが難しいという方もいると思います。
それはなぜか。
実は、「集中力」が時間と同様に、非常に貴重な資源だからです。時間は「量」が必要な資源なのに対して、集中力は「質」が重要な資源です。
いい仕事は、高い集中力を必要とします。良い営業をするためにも、良いソースコードを書くためにも、良い文章を書くためにも、良いアイデアを出すためにも、すべて膨大な集中力が求められるでしょう。
しかし、一日に10時間前後、多い時には13時間から15時間労働というハードワークを行なっている現状で、全ての時間にわたって集中力を持続することは非常に難しいといえます。(もちろん8時間でも厳しいと思います!)
では、どうすることが良いのか。まず前提として認識が必要なのは、「集中力は有限である」という事実です。もちろん、訓練によって集中力の限界を向上させることはできますが、有限であることに変わりはありません。
よって、「余計な仕事や会話、メールの処理やネットサーフィン、TV見ること」まですべて、何かを見たり聞いたり書いたりする行為は「集中力を減らしてしまう」行動であると認識することです。
”目の前の仕事に集中せよ。太陽光線も一点に集中しなければ、発火しない”
とは、アレクサンダー・グラハム・ベルの言葉ですが、「集中が重要だ」ということより「目の前の仕事だけをやれ」と読んだほうがより本質を示しているといえるでしょう。余計なことに神経を使っている余裕は無いのです。
従って、「集中力の温存」と「集中力の回復」を意図的にスケジュールに組み込む必要があります。
また、集中力を多く必要とするようなタスクを1日に詰め込んでも、成果はあがりません。また、「緊急性の高い仕事」は集中力を多量に必要とするため、スケジュールには余裕を常に持たせておかなくてはいけません。
したがって、「時間からスタートする」「集中力は有限」を認識すると、実は「一日にできることはそう多くない」という結論に達すると思います。
本質は
「考えたすべてのタスクを力技でやろうとしても、徒労に終わる。それよりも仕事の取捨選択、順番を吟味することのほうがはるかに重要である」
といったところでしょうか。「考える前に動け」とはよく言われる言葉ですが、そうでないこともまた、多いのだと思います。
photo:Library and Archives Canada
(2024/3/26更新)
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