先日お会いした経営者の方が、「正社員を雇うメリットが小さくなっている」と言っていた。
詳しく話を聞く。
「少し前までは、積極的に正社員を雇ってたんだけどね、もう正社員って要らないね」
「なぜですか?」
「友達から「社員あんまり要らないよ、正社員じゃなくても、優秀な人が増えたって」って聞いて、試してみたんだよ。」
「どんな具合ですか?」
「具体的には、フリーランス、パートタイマー、リモートワーカー、アルバイト、副業なんかをやる人で、結構優秀な人がすごい増えてるから直接契約すればいいってさ。たしかにそうだった。」
「そうなんですね」
「うん、数年前まではパートタイマーっていうと、単純労働しかできない、ってイメージがあったんだけど、全然そんなことないね。今はデザインや執筆、マーケティングもパートタイマーに任せられるし、開発や営業もフリーランスの人がやってくれるし、バックオフィスはアルバイトで十分だね。だから本当に中核のメンバーはみんな役員クラスだね。」
「なるほど……」
経営者は、今は昔雇った正社員が辞めると、フリーランスやパートタイマーで補充し、正社員を雇わないと言っている。
「特に、昔大手に勤めていた主婦の人とかが優秀でね、保育園が見つかんなかったりして、家にいないといけない人たち。リモートワーカーで何人かお願いしてるんだけど、社員を雇うよりずっといいね、社会保険やなんやを入れると、結局社員は高くつくし、主婦の方々は仕事の量に応じて業務量を自由に調整できるからね。打ち合わせはSkypeでいいのでウチのオフィスも小さくできる。」
「でも社員と違って「会社の業績へのコミット」は小さいのでは?」
「それはないなあ、みんな頑張ってくれてるよ。うちは普通にアルバイトするよりもはるかに報酬もいいからね。時給換算すると、普通に五千円以上の人もいるんじゃないかな。まあ、うちはリモートワーカーが多いんで、ほとんどは業務委託契約だけど。だからスキルが高い人はすごくワリがいいんじゃないかな。」
「時給5千円はすごいですね。日給4万ということは…」
「もちろんフルタイムじゃないから、そんな多くは払ってないよ。でも、この「調節できる」ってのが、会社にとってはめちゃめちゃいいんだよ。」
「なるほど、効率的な経営ですね。」
「でもね、この話をすると怒る人もいるんだよね。」
「どうしてですか?」
「正社員を雇わないなんて、けしからん、社会的責任を果たせって人、結構いるんだよ。内情も知らないのにね。うちの仕事をしてくれてる人、他に仕事持ってる人もたくさんいて、結構稼いでるんじゃないかな。大体「正社員が嫌で、フリーランスやってます」「フルタイムじゃないと雇ってくれない会社が多すぎる」ってひと、結構多いんだよ。うちは経歴に傷があろうがなかろうが、フルタイムだろうがパートタイムだろうが、アウトプットで見るからね。」
「そうなんですね」
「そうだよ、「スキルが役に立って、本当にうれしいです」って言われるよ。」
「……なるほど。」
「正社員を雇わなくなって、人間関係も良くなったし、なによりうちのような業態だと「時間に対して報酬を支払う」という考え方が馴染まないんだよ。本来、仕事ってのはアウトプットに対して払うもので、働いた時間に対してじゃない。」
「ノウハウがたまらない、ってことはないですか?」
「どうだろね、ノウハウを内製化しないといけない理由は?」
「……会社の競争力……などですかね……」
「会社の競争力は、一人一人に溜まるものじゃない。会社全体に「ブランド」という形でたまったり、「ソフトウェア」という形でたまったりするからね。一概に正社員じゃなければ、とはいえないんじゃないかな。あと、正社員がいても、結局転職されたら同じだし、第一、社員が転職しても回る仕組みにする、って会社多いじゃない。」
「……まあ、そうですね。」
「結局、これからの会社はどんどん「プロジェクト」のようなものになっていくと思うよ。だから今、正規雇用だ非正規雇用だって騒いでいるけど、まったく見当違いだと思うね。問題は正規かそうでないかじゃなくて、仕事ができるかできないか、だけじゃないかな。同一労働同一賃金、素晴らしいと思うけどね。」
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