「学校で学んだことは、企業ではあまり役に立たない」という方もいるが、そんなことはない。例外もあるが、実際に採用からその後の成長を見ていると、大学できちんとした研究をしていた人は概ね企業においても優秀である。
これにはいくつか理由があると予想できる。
1.論理的に考えるクセがついている。
きちんとした研究をしている人は、論理的に考えるクセ付けの訓練を受けている。例えば、よくある話として因果と相関のちがいを知っている。
例えば、東大生の家庭は裕福な家庭の割合が平均に比べて多いことがわかっている。
(出典:学生生活実態調査 http://www.u-tokyo.ac.jp/stu05/h05_j.html)
これは事実である。そこまでは良い。しかし、因果と相関のちがいをきちんと把握していない人は、「家がお金持ちだから、子供の成績が良い」という因果関係を断定しがちである。
だが、これはあくまで「東大生である」「家が裕福である」に相関があるだけで、実際には裕福だから成績が良いのかどうかは証明されていない。
例えば、何かしら他の要因があって、裕福であるという現象と、子供の成績が良いという現象の両方を生み出している可能性もある。
企業においては、このような話が山のように出てくる。例えば「成果を出している人は、早起きしている人が多い。だから早起きしなさい」と主張する方がいる。
だが、早起きが成果を生み出しているのかはわからない。単に相関があるだけで、早起きと成果の因果はないかもしれない。
この辺りの話は、きちんとした研究をしている人は理解しているだろう。
2.文章が書ける。
ビジネス型の文章は、結論を先に持ってくる書き方が多いが、研究における論文も同様であり、きちんとした文章を書ける人が多い。
今も昔も、文章によるコミュニケーションは重要である。メールや報告書、会議に用いる資料、企業で運営するブログなど、わかりやすい文章がかけることが重要な意味を持つシーンは多い。
実際、文章力は独学ではなかなか向上しない。「書いた文章を採点してくれる人」が居なければ、どこがわかりにくいのか、筋が通っていないのか、自分では判別しにくいため「学生時代に書き方を矯正された体験」は重要である。
3.プレゼンテーションができる。
きちんとした研究をしていた人は、たいてい、厳しい批判にさらされるプレゼンテーションを行った経験がある。ゼミの発表や論文の発表は「批判を受ける」ために行っている側面もあるから、当然のことだ。
どうすれば反論されにくいプレゼンテーションが可能か、どのような表現を用いたら誤解を招くことなく、表現したいことが伝わるか、きちんとした研究をしていた人であれば必ず考えぬいている経験があるはずだ。
4.オリジナリティと普遍性を重視する。
学問のな世界は、「新しさ」と「普遍性」が大きな価値を持つが、もちろんこれらは企業においても価値を持つ。特に、知識社会における企業が必要とするものは全く同じである。
「他の会社がやっていること」や「ここでしか通用しないこと」にはあまり価値がないことを、きちんとした研究をしていた人は理解している。
5.よく勉強する。
当たり前だが、きちんと勉強しないと卒業できないシチュエーションにいた人は強い。
もちろん博士課程の研究でなければ「適当に済ませる」ことも可能であるが、その誘惑に負けず学校できちんとした研究をした人は、過去のその分野における研究成果を読み込み、調査し、考え、アウトプットするという一連の活動を行っている。
学校とは、「専門知識」だけを教える場所ではない。上のような「考えるときの技術」であったり「論理における作法」といった事も教えてくれる。役に立たないはずがない。
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