大学探訪記数年前「2位じゃダメなんでしょうか?」という某議員の発言により期せずして有名になったスーパーコンピュータ「京」。果たして世界一のコンピュータは何に使われているのか?

そんな疑問にある先生が答えてくれました。兵庫県立大学大学院、シミュレーション学研究科の藤原義久教授です。

 

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藤原教授はスーパーコンピュータの超巨大な演算能力を用いた研究をしています。

 

まずはスーパーコンピュータがどれほどのスペックなのか?私がこの文章を書いているMacはプロセッサの個数が1、コア数は2です。

それに対し、京コンピュータはプロセッサが8万8千個、そして一つのプロセッサに8個のコアがありますから、コアの総数は70万以上ということになります。このコアが同時に計算を行い…と、Macと比べるな、という話ですがとにかくケタ違いの演算能力を持っています。

 

それほどケタ違いの演算能力を何につかうのでしょう。藤原教授はその能力を「100万社の企業のデータ」を調べるために使っています。

例えば、

「連鎖倒産はどのように引き起こされるのか?」

「GDPはどうやって決まるのか?」

「企業同士はどのようにつながっているのか?」

といったことを膨大なデータを調査し、共通して見られるパターンを発見しようとしています。

fujiwara

(出典:http://www.simulation-studies.org/academic-staff/fujiwara/research)

エコノミストや社会学者が経験的に語っている部分を「ビッグデータ」を用いることでより定量的に扱うことができる、というわけです。

「京」を使う前はその計算を1回行うのに3日(!)かかっていたそうですが、現在では同じ計算を30分ほどでできるということで、巨大な演算能力の恩恵に預かることができています。

 

もともと教授は宇宙論や理論物理を志した方でした。しかし、残念ながら理論物理学ではなかなか食べていくことができません。学者として身を立てていけるかどうか、当時は不安だったそうです。

ところがその時期に偶然たまたま出席した研究会で、「複雑系科学」にめぐりあいました。当時は社会科学の方々があまりデータを見ておらず、「これは面白い」と思ったそうです。

 

そう思った藤原さんはニューヨーク証券取引所からミリ秒単位で変動する株価のデータを購入し、統計的な量を調べてみました。そして、「昨日の株価から、今日の株価はわからない、リターンには全く相関がない」ということを導きました。わかりやすく言うと、「昨日、株価が上がったから、今日も上がる」には全く根拠が無い、ということです。

「株価の予測を色々とやっている人がいるが、統計的には全く根拠はないと思います。その一方で、株価のリターン(上がるか下がるか)ではなく、リスク(上げ下げの大きさ)には注目すべき長期的な記憶や自己相似性というパターンがあります。」

と藤原教授は言います。



その当時から、株価の分析には多くの研究者が参入しています。

藤原さんは「金融市場には研究者が群がっている。大量のデータがあるし、コンサル的には儲かるからね。でも私がもっと研究する必要あると思うのは、実体経済の方で、そちらの研究はまだまだこれから。」といいます

そして、辿り着いたのが100万社の企業の業績、取引先などのビッグデータでした。

この研究の面白さは?とお聞きすると、藤原教授は

「大量のデータが見せる複雑なシステムの美しい世界、パターンの発見とその謎解きに魅せられた」と言いました。

 

 

藤原さん、お忙しい中ありがとうございました。こちらの研究にご興味をもった方は

http://www.simulation-studies.org/academic-staff/fujiwara

までアクセスし、コンタクトを取っていただくようお願い致します。

 

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ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

 

 

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