14570397486_8c9e7be444_zある時、居酒屋で隣の席から声が聞こえてきた。数人の営業らしき若手男女が話し込んでいる。会話があまりにも赤裸々なので、思わず聞き入ってしまった。

 

「今日、すごい怒られてたね。」

「あ、聞いてたの?」

「うん。」

「怒鳴る人って、野蛮だよね」

「でも部長は、あれは教育、っていってるよ」

「教育?…なわけないよ。あれは感情的なだけ」

「そうかなー、あまり部長は感情的という感じはしないけど」

「感情的、というより大きな声を出して、恐怖感を与えようとしているよね」

「たしかに」

「恐怖感を与えようとしてるなんて、やっぱり野蛮だよな」

「やっぱり、怖いと思わせればわたしたちが仕事すると思ってるのかな」

「思ってるんじゃない?部長って、単純だし」

「なんか、大きな声をだせばいい、って思っているフシはあるよね。」

「なんか、哀れだよね。」

「怒鳴ったところで、仕事に身が入るわけじゃないのにね。」

彼らはしばらく会話を辞め、店員に向かってオーダーをした。店員が奥に引っ込むと、彼らは会話を再開した。

 

「そういえばお前も、課長にこの前怒られていなかった?」

「ああ、怒られたよ。30分も怒られた。」

「普段は温厚そうに見せて、課長も怒鳴る人だったんだな」

「豹変したんで、ビビった。」

「えー、もう課長も信用出来ないわ~」

「うちの会社の風土なのかね」

「はっきり言って、キモいよね」

「あーあ、こんな会社早く辞めたいよな」

「そりゃ、ミスしたら怒られるのは仕方ないけどさ、いきなりこちらの話も聞かずに怒るのは、最低だよな」

「ホント、やる気なくすよね。」

「よくあんなに自制心のない人が部長ににまでなれたね」

「昔は、結構優しかったらしいよ。この前先輩がそんな話をしてた。」

「え、本当?意外なんだけど」

「本当らしいよ。私も聞いたことある」

「なんであんなふうになっちゃったの?」

「社長のせいじゃない?」

「社長もよく怒鳴るからなあ」

飲み物がはこばれてくる。彼らは乾杯をし、また会話を再開した。

 

「そういえばこの前、道端で上司らしき人が大声で部下にひとに対して怒ってたよ。「なんでお前は言われたことがきちんと出来ないんだ」って。かなり離れた場所からも聞こえたよ。そりゃ腹たつのもわかるけどさ、公衆の面前であんなに怒鳴るなんて、どうかしてるよな。」

「上司頭悪いんじゃない?結局大きな声を出すことしかできないんだから。」

「そうだね、怒鳴られても仕事が嫌になるだけだからな」

「まあね」

「結局どうなったの?」

「最後までは見てないけれど、部下の人は全然聞いてない、ていう感じだった。」

「そりゃそうだ」

「心を閉じるしかないもんな。」

「最初はショックだったけど、慣れるよね。」

「うん、同感」

「あ、みんなもそうなの?」

「そうそう」

 

彼らと管理職のどちらに問題があるのか、この会話だけではよくわからなかったが、大きな声を出して怒っても、あまり効果のないことだけは非常によくわかった。

 

 

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