一般化するつもりはないのですが、アドバイスをしてみたら結構刺さったみたいなので、こういう例を可視化するのも意味があるかなーと思い、書いてみます。
読書感想文という宿題を嫌っている人は数多いように思います。webやtwitterでも、「読書感想文」で検索をした際、一番に目につくのは感想文についての怨嗟の声です。
私自身は、読書感想文という宿題についてのこの状況はあんまりよろしくないなーと、昔から思っております。
「何かをインプットして、それについてのアウトプットを文章の形にする」というのはとても重要なスキルですし、そのスキルに子どもの内から触れることは、とても貴重な経験になり得ると思うんですよね。
ただ、今の小学校教育って、読書感想文の宿題は出すものの、「自分の考えを文章にまとめるノウハウ」みたいな指導は全然してないみたいなんです。
これ凄い片手落ちだと思ってまして、単に「思ったこと、面白かった理由を書きましょう」というだけでは、それを指導とは言いません。
自由な表現を促すにしても、少なくとも「思ったことを、どんな手順で文章にすると書きやすくなるのか」という程度のアドバイスくらいはしてあげて然るべきだと、私は思うのです。
だから、子どもたちが感想文に苦戦するようなことがあったら、何かしらアドバイスはしてあげたいなーと以前から思っておりました。
長男、小学三年生。先月の下旬から夏休み開始で、昨年に続いて今年も夏休みの宿題の計画を立てておりました。タスク分けと割り振りについては私も手伝いましたが、来年は計画建てる段階から自分でやってもらおうと思っております。
ちなみに下記の画像は、実際に建てた計画の8月分です。昨年に続いてbrabioを使ってます。毎日楽しそうにチェック入れてるんで、やらせてあげてよかったなーと。
で、そんな中、読書感想文の実施ターンが来ましたので、こっそり様子を見ていました。
算数のワークシートのノルマ分は簡単に片づけた長男でしたが、感想文の原稿用紙を広げた後、完全に手がとまって、あーとかうーとか言いながらその辺をごろごろし始めます。弱音を可視化しやすいのは父親譲りです。
問題解決には、まず問題点の把握から。15分くらい経っても状況が変わらなかったので、今回もまずヒヤリングをしてみることにしました。
「読書感想文むずかしい?」
「むずかしい…」
「何の本について書くことにしたんだっけ」
「ふしぎ自転車チャリィ」
「ああ。面白かった?」
「面白かったよー」
「そっか、じゃあ、どんな風に面白かったか考えて書けばいいのかな?」
「けど、「面白かった」だけじゃダメなんでしょ?どんな風にっていっても色々だし、感想って何書けばいいかわかんない」
なるほど。
思うに、長男の中では、「読書感想文」に対して二つの心理的な障壁があるようです。
・「感想文」という言葉自体が曖昧で、書きたいものの方向性が分からない
・書きたい内容がまとまらず、文章化する際のとっかかりがない
その辺を解決できないものかと思いました。
ちなみに、「ふしぎ自転車チャリィ」というのは、奥様が毎週何冊も借りてくる児童書の内の一冊です。我が家では、図書館でたくさん絵本や児童書を借りてはくるんですが、読む読まないは子どもの気分に任せる、という方式をとっています。今回はたまたま気に入った由。
絵本ナビ:ふしぎ自転車チャリィ
なにはともあれ、アドバイスを考えてみました。
「感想文」という言葉の曖昧さをどうにかする
そもそも、「読書感想文」という言葉自体があんまりよくないと思うんです。
「感想」という言葉は、それ自体ある程度イメージセットが出来た大人向けの言葉でして、まだ本に触れ始めたばかりの子どもは、まとまった「感想・所感」などというものを整理して言葉にすることが出来ません。
「面白かった」「面白くなかった」というイメージに方向づけをするには、ある程度慣れが必要です。感動、感想というものは、そう簡単に言葉にできるようなものではないのです。
そこで、まず方向づけの変更から始めました。
「長男くんさー、前、「ルドルフとスノーホワイト」凄い面白いって言ってたよね」
「うん!すっごい面白かったよ」
「で、パパにお勧めしてくれたよね」
「うん」
「その時、色々お勧めの理由教えてくれたよね」
「うん、うん」
「そのお勧めの理由って、長男くんが「どこが面白いって感じたか?」ってことだよね?それって感想と同じことじゃない。感想文じゃなくて、「誰かにお勧めする紹介文」を書くんだって考えてみたら?」
「おすすめ文?」
「そう。読んだ人が、この本読みたいーって思うようなヤツ」
どうもこの方向転換は成功したらしく、「そういうのなら得意かも!」と急にやる気が上向きました。
基本的に、子どもって「自分が楽しいと思ったものは誰かと共有したい」んですよね。その為の言葉ならいくらでも出てくる。「自分がどこに感動したか」なんて曖昧な話じゃなく、「自分が面白いと思ったところに、他人にも興味を持ってもらう」という具体的なターゲットを設けた方が、言葉は出てきやすいと思うんです。
なにはともあれモチベーションはできたようなので、もう一点。
書きたい内容がまとまらないのなら、まず小タイトルだけ考える
これは文章構成の定跡ですが、「まず小見出しだけ書く」というヤツです。
最初から本文に取り掛かろうとすると、特に慣れていない内は、何をどれだけ書けばいいか訳が分からなくなってしまいます。なので、本当に一行だけ、「この段落ではこういうことを書く」という看板だけ立てておく。
そうすると、「その内容にそった文章」を書くことだけに集中することが出来る。その段落にどれだけの情報を盛り込むか、というのは後から考えればいいわけです。
本当なら、文章全体のバランスや起承転結まで考えて小見出しをつけられればなお良い訳ですが、まあ小3の感想文段階ではそこまでしなくてもいいと思います。高学年から中学くらいでの課題です。
飽くまでサンプルとして、「読書感想文なら、例えばこういう小見出しがあるかもよ」というのを簡単に教えてあげました。
◆本全体の紹介
・その本とどこで、どんな風に出会ったか
・その本を読もうと思った理由は何か
・その本のジャンル、書いている人の他の作品についてなど
◆本の内容の紹介
・簡単なあらすじ
・面白いと思ったエピソード
・登場キャラクターの紹介
◆自分が面白いと感じたところ
・好きなキャラクターは誰か
・好きなセリフ、好きだと思った理由
・自分でもやってみたくなったこと
・自分に似ていると思ったところ、自分ならどうすると思ったか、など
◆まとめ
・全体のおすすめポイントなど
で、自分で小見出しを考えてみなー、と言ったら、こんなのを書いてました。
まあ細かいところはともかくとして、私が書いたものの引き写しというわけでもなく、ちゃんと自分で考えて書いたのは偉いと思います。「クライマックス」の範囲が広すぎるのが若干気になりますが。
で、この段組みを書いた後は割とさらさらと書けたようで、結局総計2時間くらいで、原稿用紙数枚の感想文がちゃんと出来上がりました。めでたいことです。
出来上がった感想文は、ちゃんと「読んだ人に本をお勧めしたい!」というのが分かるような内容になっていまして、私もこの本読んでみようかと思ったくらいでした。読んだら長男に感想聞かせようと思います。
全然余談なんですが、今「400字詰め原稿用紙」というものを改めてみてみると滅茶苦茶小さく見えますよね。twitterなどで、どうやって140字に1ツイートを収めるか四苦八苦している身からすると、子どもの頃何故あんなに「400字」というものが多く思えたのか、正直不思議に思います。
今回はたまたま「読書感想文」という単なる宿題でしたが。私自身文章を書くのは好きですし、「何かを読んで、それについて書く」というのはとても貴重で、楽しい体験だと思います。
そんな楽しい体験を、本人が望む限りは、出来れば今後もさせてあげたいなーと考える次第です。
今日書きたいことはそれくらいです。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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著者名:しんざき ←名前をクリックすると記事一覧が表示されます
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロ
書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
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