新しいことをやると、ほぼ失敗する。

新しいことをやると、必ず批判される。

この世において真理は滅多にないが、この2つは真理と言っても良いのではないかと思う。だから「チャレンジ」に尻込みしてしまう人は大勢いる。

 

例えば先日、ある事業主の方が

「商売がうまく行かない、けど広告をするお金もないし、人脈もない。毎日テレアポをしているけれど、もう限界だ」

と言っていた。

 

雑誌の編集やライターの経験もある方だったので、「ではブログを書いて発信してみては」とおすすめすると、その方は「恥ずかしいから嫌だ」という。

「アイツがまた偉そうなこと言って、って知り合いに言われるのがね……」

ライターの経験があるのに……?私は意外に思った。

「失礼を承知でいいますが、最初なんてだれも見てないですから……まずは書いてみることが良いのではないかと」

「うーん……。どこのだれともわからない奴に「バカ」って言われたら耐えられないから、やめとくよ。」

 

 

商売がうまくいかず、かなり追い詰められているにも関わらず、「批判されたくない」「失敗したくない」という理由でチャレンジできない。そういう「挑戦者にすらなれない」人は多い。

 

 

しかし、反対に強靭な挑戦者も数多くいる。

例えば、ブログへのコメントを閉じて自分への批判は受け付けない。反対意見は即ブロックし、攻撃に対しては強烈に応酬する。バカなコメントについては、「バカ」と指摘し、下らないコメントについては「頭が悪い」と言い切るその強さは驚嘆に値する。

彼らの姿勢は時に同じような境遇の人達に勇気を与える。

「強く生きることができる人」に自分を重ねあわせ、彼らを真似し、フォローする。そんな人もまた多い。

 

しかし、そのような態度は必ずしも良いことばかりではない。

強靭な挑戦者とその取り巻きは、一種の「宗教」の様相を呈し、徐々に排他的、独善的になる。彼らは無謬であり、批判する者達は全て愚か者だ。

究極的には、「俺の人生なんだから好きにさせろ」と彼らは言い、もちろんそれは正しい。彼らにとって「失敗」と「批判」は存在しないものである。

 

失敗と批判を必要以上に恐れる人

失敗と批判を気にしない人

いずれの生き方が望ましいのかは、私にもよくわからない。だが、少なくとも失敗や批判とうまく付き合えるようにはなりたい、と個人的には思う。

 

 

そういえば少し前、「村上さんのところ」というwebサイトがあった。

今ではなくなってしまったが、村上春樹が、読者からの相談に一問一答形式で答えていく、というサイトだった。そして、その中にこんな相談があった。

ワタシは批判されたり、嫌われたりするのを恐れて自分の意見を主張できなかったりすることが多々あります。あとで「あのときああ言っておけばよかった」と後悔するのですが……

仕事をする上で、批判されたりや嫌われたりするのを恐れてはいけないというのはわかっているのですが、どうしても気になってしまいます。

どうすれば気にならなくなるか、アドバイスを頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
(逆、男性、30歳)

 

僕は自分が嫌われたり、批判されたり、ないがしろにされたりするのが普通の状態だと思って生きてきました。そう思うと、嫌われたり、批判されたり、ないがしろにされたりしても、あまりこたえなくなります。もちろんあまりよい気持ちはしませんが、「ま、しょうがないだろう」と思えます。むずかしいかもしれませんが、そのように考えるといいと思いますよ。スティングの歌の歌詞にたしか「I’m a legal alien」というのがありましたよね。「ぼくは合法的な異界人なんだ」と。人はそのように基本的に孤独なものです。

(村上春樹)

 

「ま、しょうがないだろう。」という言葉と、「人は孤独」という、諦念にも似た達観は、起業家、クリエイター、学者、作家、アーティストなど、「作る人」にとってとてもバランスの取れた考え方ではないか、と思う。

概ね人は他者に厳しく、自分に甘い。だから作り手を「理解しろ」「批判するな」という方がおそらく無理筋なのだ。

 

 

だが、村上春樹が「むずかしいかもしれませんが」と言っているとおり、本当に批判や失敗に「しょうがない」と思えるのだろうか。

 

 

おそらく、普通は無理だ。批判を浴びて、罵られて冷静でいられる人間など見たことがない。

「あまりよい気持ちはしませんが」程度で済む人なら、最初から批判や失敗を恐れたりはしない。

 

人間は誰であっても、批判されれば心臓がバクバクし、気が動転し、ちょっと気が遠くなる感覚を覚える。そして、次の瞬間にはその理不尽さに怒りが湧いてくる。

「どうやってこいつに言い返してやろうか」

「こいつを困らせてやりたい」

「反論しなければ」

「自分は悪くない、相手に問題があるのだ」「批判は的はずれだ、自分が言いたいことを誤解している」「批判など、無視すればよいのだ」「批判をする人物には付き合わない」「あー、やってらんねー」「こんなことを言われるのは割にあわない」「ムカつく」「あhごいあつえhぎあおがhぐぇいおがお」「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」「うががががががががががっがががががががっがが」「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいううううううううおうおいほほほほほあがだがdががdg」「なんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもないなんでもない気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな気にするな」「ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかるお前に何がわかる

 

って、誰でも思う。

だから、批判に冷静でいる必要などない。

怒ろう。

多分、村上春樹だって、心ない批判に対して「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」って、絶対に言っている。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


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▶ お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

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