この記事を読んで、昔塾講師やら家庭教師やらを掛け持ちしていた頃のことを思い出しました。

AI研究者が問う ロボットは文章を読めない では子どもたちは「読めて」いるのか?

これまでのところ、テストを受験した公立中学校生340人のうち、
約5割が、教科書の内容を読み取れておらず、
約2割は、基礎的な読解もできていない
ことが明らかになってしまった。

 以前Books&Appsさんに寄稿させて頂いた記事でも触れたんですが、塾講師を「出来る子をもっと伸ばす」人と「出来ない子をなるべく救い上げる」人に分けたとしたら、私はもっぱら後者でした。

 

で、私が塾講師をやっていた頃も、「問題文を読解する」という段階で苦戦する子は何人もいました。

手前みそですが、上記記事からの引用です。

塾講師時代、子どもの「勉強わからない」に対処するうちに学んだこと

国語で印象に残っているのは、「そもそも数行以上の文章を、意味をもって読み解くことが出来ない」というくらい読解の経験がない子、でした。

とにかく、読めるとか読めないではなく、根本的に文章を頭に入れることが出来ない。「長い文章を読む」という経験が根本的に欠如しているのです。

これ、書いてあること極端に見えますけど、全然誇張じゃありませんからね。

明確に「分からない」とは言いませんし、一応文章を読むことも、音読することすらできるんですけれど、本人の頭の中には全く「その内容」がイメージ出来ていない。その問題について、前提として一つ二つ簡単な質問をしても、全然答えられない。これ、まっっったく珍しくありませんでした。

 

例えば、ある問題文中に「Aさん、Bさん、Cさん」が登場したとする。

文中で「Aさんは〇〇をしていて、ある時××に気が付いた。ちょうどそのころ、□□で△△に出会っていたのが、他でもないBさんとCさんだった」みたいな文章があったとして。「□□にいたのは誰?」ということを聞いた時、しばらく悩んだ後「Aさん」という答えが返ってきたりする。

「文字として読めてはいる」けれど、「読解は全く出来ていない」んです。

 

これ、「ちゃんと読めている」人には、感覚が分かりにくいと思います。私も、最初「え?何でそうなるんだ?」と随分戸惑いました。

私が見ていた子ですら、「学校で落ちこぼれた子どもの為に、塾に通わせてあげるという程度に教育の意識がある家庭」の子ども達だったわけで、恐らく実際にはもっとずっと「読めない人たち」「読んでも頭に入らない人たち」の範囲は広範なのでしょう。

恐らくそれは子どもに限らないのではないか、とも思います。多分、大人でも「長い文章が全く読解出来ない人」はたくさんいる。

 

こういう話を、例えば職場ですると「えー?そんな子いるかー?」とか言われるんですが、そういう「周囲に読めない人を観測することすらできない」というのが、経済的な格差以上に重大な格差、断絶なんじゃないかと思ったりもします。

 

これは断言していいんですが、あらゆる「勉強に関わる能力」の中で、最重要なのは読解力です

国語だけじゃない、数学でも英語でも社会でも理科でも、他のあらゆる分野でも、「そもそも書いてあることが頭に入ってこない」というのは致命的なハードルです。一方、スコープを学校の試験に絞ったとしても、「問題文に何が書いてあるのか」「出題者の意図はどこにあるのか」ということが分かれば、その問題は半分解けたも同然です。

「読解出来る」というのは、凄く大きな強みであり、スキルなのです。

読解力を育むのに一番効果的な方法が、「楽しんで本を読む」ということであるのは間違いありません。楽しくない読書を強制しても意味はありません。

 

だからこそ、子どもには出来る限り「読む」ことの楽しさを知って欲しいし、だから私は「どんな本であれ、漫画であれ、出来る限り「読みたい」を邪魔しない」ということをひとつの方針としています。

 

漫画だろうが絵本だろうが制限しないで、本を読みやすい環境さえ整えておけば、子どもは勝手に本好きになるような気がします

本読むの超大事ですよね。勉強するより本(漫画でも可)読む方が大事、だとすら思います。「勉強するくらいなら漫画読め」とまでは流石に言いませんけど、気分的にはそれに近いです。

 

とはいえ、本を読むことに意欲を持てなかった子に、今更大量の本を読ませることも出来ません。じゃあどうするか。

 

私は塾講師時代、そういう子相手にはもっぱら「とにかく問題文の内容を絵に描く練習をさせる」ということをやっていました。「図にする」ではなく「絵に描く」です。図示という程ちゃんと整理が出来る子は稀でした。

色々試したんですが、これが一番効果的、というか効果が出るケースが多かったのです。よくある指導方針なのかは分かりません。あんまり横のつながりがない職場だったので。

 

「問題は解かなくていいから、とにかく問題文に書いてあることを絵に描いてみて」ということを、ただひたすら反復する。これを、算数だろうが国語だろうが社会だろうが理科だろうが関係なくやっていました。算数であれば「問題文の内容を図にする」というのはごくごく一般的ですが、それが国語でも社会でも理科でも、とにかく「問題文を絵で描く」ということにだけ集中してもらうのです。で、問題文をちゃんと表現出来ているところは褒めてあげる。出来ていないところは指摘してあげる。

なんで「絵を描かせていた」かというと、私の中に「読解力は絵本の読み聞かせを起点に育つ」という認識があったからなんですね。文章と絵を同時に摂取することで、だんだん「文章→イメージ→文脈理解」という回路が出来る。あと、全然文章になじめない子でも、絵なら結構素直に描いてくれたから、という事情もあります。

 

これも多分パターン学習の一種なんだと思いますが、繰り返すうちに少しずつ問題文が理解できるようになって、成績が上向いていった子も結構いました。

この方法の唯一の問題点は、「先生お手本見せて」と言われた時、否応なく私が絵を描いてみせなくてはいけなくなる、ということでした。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私は絵がそこまで達者ではないので、

nobunaga

こういう感じの絵を描いて「織田信長」と言った時は流石にだいぶ生徒に馬鹿にされました。我ながら、戦国武将の記号的な特徴を捉えている、なかなか明快な絵だと思ったんですが…。

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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(2024/1/22更新)

 

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城