インスタに狂う女子たち、キラキラアカウントに潜む闇 -ダイヤモンド・オンライン

純粋にインスタグラムを楽しんでいた松井さんが、その後翻弄されることになったのが、インスタキラキラ女子特有の自己顕示欲の世界だったという。

「もっともわかりやすい例をあげると『いいね』稼ぎに躍起になっている女性ですね。たとえば、有名ブランドの新作バッグを発売初日に購入して、速攻でインスタにアップするんですよ。そうすると、同じバッグが欲しい子たちから『いいね』の嵐になるんです!誰よりも早く最新のものを手に入れて、誰よりも多く『いいね』をもらいたい、というタイプの子です」

リンク先は、「いいね」欲しさにInstagramに躍起になる女性の話です。けして目新しい内容ではなく、twitterFacebookでも、この手の“キラキラアカウント”は定期的に話題になっていますよね。

 

私は、素晴らしい体験や感動をSNSInstagramにアップロードするのがいけないとは思いません。思い出をストレージするにも便利ですし、友達同士で良いものを紹介しあえば楽しみも増えるってものでしょう。

 

でも、「いいね」のために旅行に出かけ、「いいね」のために買い物をするようになってしまったら、本末転倒といわざるを得ません。そんな事をしてまで「いいね」を集めたくなってしまった人は、自分自身のモチベーション源を見つめ直したほうが良いでしょう。

 

“キラキラアカウント”に限らず、ネットで「いいね」を集めようと頑張っている人達のモチベーション源は、承認欲求に占められているようにみえます。

 

私は他人から注目されたい。

私は他人から良く見られたい。

私は他人から褒められたい。

 

こういった承認欲求に飢えているから、たくさんの時間やお金を費やしてまで、自分のアカウントに「いいね」を集めずにはいられないのでしょう。

なかには、他のキラキラしたアカウントの雰囲気に呑まれてしまい、「俺も注目されないと!」「私もキラキラしないと!」みたいな義務感にとらわれている人もいるかもしれません。

 

「キラキラしたい」ならまだしも、「キラキラしなければならない」になってしまったら、精神的にキツいはず。SNS疲れになりやすいだけでなく、つい、余計なものをアップロードしてしまって、無用なトラブルを招くことにもなりかねません。

 

承認欲求にとらわれ、表向きは華やかでも精神的には辛いネットライフになってしまう人は、何故そうなってしまうのでしょうか。

 

 

所属欲求を欠いている(=仲間や師匠がいない)のも一因では?

「なぜ、あの人は承認欲求に飢えやすいのか」の理由としてありがちな説明は、「子ども時代に承認欲求が充たされなかったから」「先天的にそういった性格だったから」といったものです。

 

私は、これらが間違っているとは思いません。少なくとも事実の一端ではあるでしょう。臨床現場でそういう傾向を持った人から生活歴を訊いても、ネットで承認欲求に飢えまくっている人の昔話を訊いても、これらと矛盾しない内容がよく出てくるからです。

でも、それらだけが原因でしょうか?

 

新著『認められたい』を書いている途中で気付いたのですが、承認欲求に飢えている人には、もうひとつ、見逃せない特徴があるように見受けられます。 

それは、「承認欲求に飢えている人は、たいてい、所属欲求を充たしていない」ってことです。

 

もう少しだけ具体的に書くと、「承認欲求に飢えまくっている人は、所属感を感じられるような仲間や、恩義や師弟関係を感じられるような先輩や師匠がいない」、ってことです。心理的に独りぼっち、ってことですね。

 

人間は、自分自身が注目されたり褒められたりした時だけ、心が充たされるわけではありません。

「望ましい仲間集団に所属している」

「敬意に値する人(や組織)のもとで働かせてもらっている」

と感じている時にも心が充たされます。そのぶん、ストレスにも強くなるでしょうし、承認欲求を充たさなければならないニーズも低くなるでしょう。

 

ですから、人間関係にまつわる欲求について考える際には、承認欲求だけを念頭に置くのは片手落ちです。

所属欲求も同じぐらい重要ですし、実のところ、所属欲求に飢えた人間の暴走もかなり厄介なのです*1。

 

そして、承認/所属どちらか一方だけを充たして満足するのはわりと難しく、両方の欲求を、ほどほどに充たせる人のほうが、どうやら心のバランスを取りやすいようなのです。

だから、承認欲求に飢えている人が本当に必要としているのは、承認欲求を充たすための強力な手段よりも、仲間意識を持てるようなグループへの所属だったり、師弟関係を意識できるような先輩や師匠の存在だったりするかもしれないのです。

 

もちろん、これまで所属欲求をほったらかしにしてきた人が仲間集団や師弟関係を手に入れるのは、それほど簡単ではありません。

所属欲求を充たし慣れていない人は、

「俺はそこらの雑魚とは違うからエリート集団にしか所属したくない」

「欠点の無い、俺を絶対に失望させない人間でなければ師匠にできない」

といった心境に傾きやすく、それが人間関係の障害になってしまうことがままあります。そのあたりを軌道修正するのは強すぎる承認欲求を軌道修正するのと同じぐらい大変で、時間がかかるかもしれません。

 

だとしても、承認欲求を追い求めるだけがソリューションってわけではないのです。承認欲求に飢えて失敗しがちな人は、自分が所属欲求を充たせるような人間関係をどれだけ持っているのか、点検してみてください。

 

そしてもし、仲間意識や師弟意識を持てる可能性のある人間関係があれば、自分自身の評価や評判だけに拘るのでなく、仲間集団の良いところに惚れ込んだり、先輩や師匠にリスペクトを払ったりしてみましょう。

つまり、所属欲求を充たせるかもしれないチャンスを丁寧に拾い集め、そのような人間関係も大切にしてみましょう。そうすれば、承認欲求はもう少し制御しやすくなり、ガツガツせずに済むはずです。

 

 

 *1

たとえば所属欲求が暴走している人は、全能感を提供してくれるカルトな教祖に率いられた集団に魅了されて食い物にされたり、所属意識を煽るブラック企業でこき使われたりしてしまいます。

スタンドプレーになりがちな承認欲求の暴走と異なり、所属欲求の暴走はリーダーに率いられた集団のかたちを取りやすいので、ときには社会的な事件を引き起こすことがあります。

 

 

【プロフィール】

著者:熊代亨 

精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。

通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)『認められたい』(ヴィレッジブックス)など。

twitter:@twit_shirokuma   ブログ:『シロクマの屑籠』

熊代亨のアイコン 3

 

(Photo:Jens karlsson)