先日「コミュニケーション」について議論する勉強会に参加してきた。
集まってきている方の多くは、いわゆる「できる人」だったので、コミュニケーションは得意な方が多いだろうと思った。
だが、話を聴くと
「コミュニケーション能力にはあまり自信がなかった」
「就活で苦労した」
「今でも人前で話すのはそれほど得意ではない」
と、言う方が大半を占めている。
つまり、彼らの殆どは、後天的に学習によってコミュニケーション能力身につけた、と言える。
ということは、彼らは「コミュニケーション」を理解することで身につけることができた人々だ。
おそらく、そこには体系化された何かがあるに違いない。
そこで、彼らの話を聴いてみると、根底にあるのは、
「コミュニケーション能力は誤解されている」
という事実だ。
つまり、「身につけたい」と思っているときのイメージと、「身につけた」後のイメージが異なるため、苦労している人が多いのだと、彼らは言う。
そこで、彼らが話をしていた内容を、ざっくりまとめてみた。
いわゆる「コミュニケーションにまつわる誤解」について、8つにまとめることができたので、ご紹介する。
1.「話がうまい=コミュニケーション強者」は誤解。
まず、最も多くの人が挙げたのが、「話がうまい人が、コミュニケーション強者である」という誤解だ。
参加者の一人は、こう言った。
「昔は、話がうまくなりたいと思っていましたけれど、今は「正確に聞ける」ほうがずっと大事だと思ってます。」
コミュニケーションを取る際に、「うまく話さないと」「面白いことを言わないと」と思う必要はない。
「正確に聞ければ、何を話せばよいかわかる。」
「意味がわからなかったら、落ち着いて質問すればいい。」
である。
2.「コミュニケーション力は、人と仲良くやれる力」は誤解。
「周りの人とうまくやれず、友達が少なかったので、コミュニケーション力には全く自信がなかった」と一人が言った。
「でも仕事では「友達」である必要はない。大事なのは相手の感情への配慮。「相手に気に入られること」が目的じゃない。きまった挨拶をして、体調が悪そうな人に声をかけて、喜んでいる人や悩んでいる人の話を聞く。それだけ。最低限の配慮さえしていれば、問題は起きない。」
企業内におけるコミュニケーションの目的は「仕事の成果」だ。
仲良くやれることは、あくまで手段であり、義務ではない。
3.「コミュニケーションには会話が不可欠」は誤解。
「コミュニケーションは会話だと思っている人が多数いる。でも、それは間違っている。」と一人が言う。
会話が有効であるケースも多いが、その他の手段のコミュニケーションのほうが効果的であるケースも多いとのこと。
「メールのほうが良いときもあるし、SNSやメッセンジャーのほうが効果的な人もいる。」
会話ではなく行動で示すというマネジャーもいた。
「心がけているのが「行動で示す」というコミュニケーションで、「率先してやる」とか「最初に終わらせる」もコミュニケーション。人の上に立つなら「自分がまずリスクを取る」を心がけて動くと、それだけで部下とのコミュニケーションになる。」
4.「一緒に仕事した期間が長いので、コミュニケーションは不要」は誤解。
参加者の多くの方が「一緒に長く働くほど、コミュニケーション不足に陥りやすい」と言う。
「なぜですか?」と聞く。
「多分「話さなくてもわかる」という状況に甘えてしまうからじゃないかな。でも実際は逆で、仲が良いほど、誤解が生じる余地が大きいし、仲が良いほど、相手も自分と同じだと誤解しやすい。」
「なるほど。」
「結局、付き合いが深くなっても、考えていることはわからないんだよね。人間関係であれこれ勝手に悩んでいる人がいるけど、時間を使ってきちんとコミュニケーションを取るだけで「誤解だった」と気づくことが本当に多い。」
長く一緒に働いている人ほど、むしろコミュニケーションを大事にすべきなのだ。
5.「コミュニケーションをとれば、情報共有できる」は誤解
「コミュニケーションをとっても、きちんと情報共有されないことが多いですよね。」
「そうですね。」
「結局、仕事に必要な情報共有って「課題の共有」「課題の共同解決」だからです。コミュニケーションをとれ、と言われて他愛もない話をしても、それは情報共有にならない。」
「確かに」
「そうじゃなくて、コミュニケーションの前に「課題を共有」する必要がある。それでやっと有効なコミュニケーションが生まれる。だから必要なのは「コミュニケーションしろ」という命令ではなく、課題を共有したり、議論して解決するための場所です。」
実際は「情報共有=課題共有」の後に「コミュニケーション」が生まれる。
順番が逆だったのだ。
6.「コミュニケーションは合意のために行う」は誤解。
「コミュニケーションの目的を「合意」に置くと、むしろコミュニケーションは不活性になりますよ。」
と、ある人事コンサルタントは言う。
「むしろ、意見には「差異」があり、それを抽出して、なぜ差異が生まれたのか議論をすると、コミュニケーションはめちゃくちゃ盛り上がります。」
つまり、「落とし所」があったり、「皆の同意」がゴールになっていたりすると、コミュニケーションはむしろ停滞するということだ。
逆に「意見の違い」や「別の見方」を提出すること、その差異を確認することに主眼が置かれると、コミュニケーションは活性化する。
7.「飲みニュケーションで本音が聞ける」は誤解。
世間では、言われるほど「飲みニュケーションが嫌い」という人が多いわけではない。
特に、帰属意識の高い職場では、社員同士の交流が好きな人も多いのは事実で、互いに楽しい時間を過ごしたり、時に上司から説教をされたりすることに全く意味がないわけではない。
しかし「飲みの場だからこそ、本音が聞ける」は、結構怪しい。
なんと言っても、飲みの席でかわされた会話が実行されることは稀であるからだ。
・〜をやりたいですね → 責任者が決まっていなければ、誰もやらない
・〜を改善しなければ → タスクに落とし込んでいなければ、改善されない
・〜をなおした方がいい → 具体的な行動にならなければ、なおらない
3時間の飲みをして、盛り上がった話であっても、あまり行動につながらない。
飲みの席ではむしろ「実行できない、かっこいいことを言いたくなる」のである。
要するに、飲みュニケーションは、時間効率が悪い。
8.「「話が上手い人」が上司に取り入って出世する」は誤解。
「出世している人は、大体優秀ですよ。「あいつは上司に取り入っている」というのは、偏見です。特に今の大企業では、話がうまいだけでは絶対に出世できません。」
出世は偶然に起きることは少ない。
経営者や上司は、結構客観的に見ているものだ。
「論語」の中で孔子は、
「君主に仕えて礼をつくすのは当然だ。然るに世間ではそれをへつらいだという。」
と言っている。
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ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
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