優れた業績を上げた社員に報いることは、会社にとって重要なことである。しかし、その報い方は非常に難しい。
例えば、以下の事例においてあなたはどのように従業員に報いるだろうか?
・今年業績No1となった営業マン
・製品開発に成功し、ヒット商品を作り上げた研究者
・そのPRの面白さから、ニュースに取り上げられ、話題となった広報部の担当者
このような事例に対して、昇進や昇給などの手段を持って社員に報いる会社は多い。
別に間違っているわけではない。正解はないのだ。
しかし、一九二〇年台、ゼネラル・モータースを世界一のメーカーに押し上げた経営者である、アルフレッド・スローンは、異なった考え方をしている。
彼はその著書「GMとともに」(ダイヤモンド社)の中で、次のように述べている。
”給与制度では、どれほど優れた業績を上げたとしても、昇給で報いるのは難しい。給与体系全体を尽き崩しかねないからだ。加えて、昇給は一過性という訳にはいかない”
では、彼はどのように報いるべきだと言っているか。
”ボーナスであれば、抜きん出た成果のあったとしにだけ弾めばよい。このためボーナス制度があると、給与制度の枠組みを変えずに、特例的に大きな報奨を与えられるわけだ。”
ここでいう「ボーナス」は、通常6月と12月にもらえる「固定額の賞与」のことではない。個人と全社の業績に応じて配分される賞与のことである。固定額の賞与は、スローンの言う「給与」と同じ扱いだ。
重要な事はスローンが、給与と賞与の性格のちがいをはっきり打ち出していることだ。
・賞与は大きな業績、抜きん出た業績に対して与えられるもの。時にはペナルティもあり、大きく下がることもある。
・給与はそうカンタンに下げることができない、生活のための原資。社員でいる事に対して支払われる。
業績に対して、安易に昇給で報いてはいけない。成果が出る、ということと、継続的に成果を出し続ける、ということの間には大きな溝があるのだ。
一方、彼の考える昇給の条件は以下のとおりである。
・物価が上昇しているときは、一律に社員の給与を上げる。下がったときは社員の給与を下げる。しかし、その下げ幅は、上がる時よりもゆるやかに行う。
・生産性が向上した時、その際には経営陣、会社、そして従業員で果実を分け合う。
・高い技能を持つ熟練工などの人材にはその技能に見合った給与を支払う
・大きな責任を担う人物には、その責任に見合った給与を支払う。
これは非常に合理的な考え方である。
社員にどうやって報いるか、ドラッカーはこう述べる。
”配置、昇給、昇進、降格、解雇など、人事に係る決定こそ最大の管理手段であることを認識しなければならない。”(マネジメント(中)ダイヤモンド社)
そして、とりわけその中でも昇進について、「目立つものではなく、ふさわしい者を対象者としなければならない」と言う。その一つの形が、スローンの行っていた人事なのかもしれない。
(2026/10/26更新)
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