af8186496ee7a0d231947ba8ba83a72f_s最近、「村上さんのところ」をよく見に行く。見たことがない方のために説明をしておくと、村上春樹が一般の方々から受け付けた質問に、一問一答で回答するという形式のブログだ。

村上さんのところ

このサイトは、みなさんから広く募集した質問・相談に、村上春樹さんが返事を書くというやりとりを期間限定で公開するサイトです。どうぞよろしくお願いいたします。

いくつも読み進めていると、村上春樹の考え方というか、哲学がよく現れていて、とても面白い。

 

 

そして、その哲学の一つがよく現れているな、と感じるのが、次の質問への回答だ。

図書館で借りて読んでもいいですか?

Q.図書館やリサイクル本をよく利用するのですが(村上さんの本も何冊か図書館で借りて読みました……)、作家としては、やはり、あまり言ってほしくないものですか?

A.僕はどんなかたちであろうが、自分の本が読まれていれば嬉しいです。買って本棚に置いたまま、というよりは図書館で借りたり、友だちに借りたりして実際に手にとって読んでもらえる方がずっといいです。買っても借りても、ぜんぜん気にしません。ほんとに。

買ってくれ、よりも読んでくれ、が村上春樹の言いたいことだろう。

 

 

また、こちらの質問への回答も面白い。

小説は生産性が低いと貶されます

Q.小説を読んでいると、旦那さんから生産性が低いと非難されます。どうせなら”成功者の習慣”のような自己成長を促す本を読むようにとのこと。隠れて読むのもなんだか変です。村上さんはどのようにお考えでしょうか?

A.はあ、そうですか。でも生産性の低いものって、けっこう必要なんですよね。生産性の高いものばかり追求していると、人間がだんだん薄くなります。どうしてかはわからないけど、なんか確実に薄くなるんです。薄くなっても、お金が入ってくればいいじゃん、楽しく暮らせればいいじゃん、ということであれば、問題はぜんぜんないんだけど、でもそればっかりじゃいやですよね? だからときどき生産性の低いものも読んでください。あまりお金儲けにはつながりませんが。

彼は、金儲けにもあまり興味がなさそうだ。

 

村上春樹は、明らかに商売とは別の論理で動いている。要は、「自分の書きたいものを書く、それが(売れなくても)読まれて喜んでもらえれば、それでいい」と考えている。これは、他の回答の節々にも現れている考え方だ。

 

 

村上春樹は作家だから、儲かる、儲からないは関係ないんだよ、という方もいるだろう。

しかし、実は企業もそのような態度を取っていることが珍しくない。

 

たとえば、VECTOR GLIDEというスキーのメーカーがある。彼らは「自分たちが使いたいスキーを作る。その考え方にあっているならば、ウチのスキーを使うといい。」という考え方のようだ。

徒に売上の増加、規模の拡大を目指さず、コアなスキーヤーに対してのみ、サービスを提供している。他にも4frntや、DPS Skisなども同じような理念を感じる。彼らは決して「売れるもの」をつくろうとはしていない。「自分たちが楽しめるもの」をつくろうとしている。

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アレックス・モールトン自転車という自転車がある。アレックス・モールトン博士という、自動車のサスペンションで有名な技師が作った自転車だ。

200万円近くするような高価な自転車も中にはあるが、このメーカーも「売れること」を追求しているようには見えない。結局のところ、「自分たちが良いと思うもの」を生産し、それが好きだ、と言う顧客に対して販売をしている。

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Goproというカメラがある。「アクションカメラ」という新しい分野を切り開き、現在では各種光学機器メーカーがこぞって参入している分野だ。だが、キャノンも、ソニーも、パナソニックも、彼らに未だ勝てていない。

Goproももともと、「自分たちが使いたいものを、自分たちが作ってみた」というところから始まっている。

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Googleはご存知だろう。

How Google Worksと言う本に語られているが、Googleのイノベーションに対する理念は、「ユーザーに焦点を絞れば、後は全部ついてくる(カネを出す「顧客」ではなく、サービスを利用するユーザーに焦点を絞る」だ。

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント

 

金を稼ぐよりも、「いいプロダクト、サービスを作る」ということに最大のリソースを使う。それが彼らのやり方だ。

 

 

もちろん、会社が大きくなり、利害関係者が多くなるにつれ「売れる、売れないは関係ない」とは言えなくなるかもしれない。

だが、本当にそう言い切ることができるような製品を作ることができたなら…。

どんなに素晴らしいことだろう。

いや、webがある今、「良いものは必ず知れ渡る」から、「本当に良い物しか売れなくなりつつある」ということなのだろうか。それは多くの企業にとって、とても恐ろしいことかもしれない。

 

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(2024/3/26更新)

 

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