この時期になると、例年のように新人に対する「マインドコントロール研修」がおこなわれる。「マインドコントロール研修」とは、一般的にはスパルタ研修などと呼ばれ、次のような特徴がある。

 

・参加者を一定期間、軟禁状態に置く

・参加者の初期の価値観、行動などを恐怖と怒号で全否定し、統制する。

・街に出て知らない人に声をかける、大声を出す、異常な長距離を行軍させたりするなど、「自分の限界を突破」する疑似体験をさせる。

・「会社の理念」などを唱和、暗記させる。暗記するまで繰り返しテストなどを行う

・研修から逃げ出す参加者も居るが、そのような人たちに対しては「負け組」といったレッテル貼りをする

・最後だけは講師、教官たちが異常に優しくなり「お前たちはよくやった」と認め、ギャップを演出し感動させる

 

 

 

異常に思えるだろうか?

だが、一昔前ではかなりの大手企業もこういった新人研修手法を採用していたようだ。

例えば私の昔の同僚に航空会社出身の人物がいたが、その人物は新人研修の時のことをこう語っていた。

 

「基本的に講師は先輩がやっていました。とにかく厳しくて、「声が小さい!」と、何度も何度も大声で挨拶をさせられました。あまりにも厳しくて、同僚の子は泣いてました。

でも、最終日だけは違うんです。それまで超厳しかった先輩たちが一変して、彼らが芸を披露してくれるんです。最後はスクリーンに大きく会社のマークが映し出されて、皆で号泣しました。」

 

 

また、ある「先物取引営業」の経験がある人物から聞いた話は以下のようなものだった。

 

「新人研修期間中に、半分以上会社を辞めますね。合宿所に閉じ込められて、毎日大声を出してました。同期の一人から「脱走しよう」と言われましたが、私はなんとか耐えました。

で、たまに外出日があるんですが、外出日は遊びに行くんではなくて、ふもとの町に言って、そこで誰かを捕まえて名刺交換をさせられるんです。

まあ、大抵怪しまれてれて断られるんですが、枚数のノルマが決まってるので、それに足りないと研修でまた詰められるんです。

その合宿の後はとりあえずテレアポをやらされます。「ファミレスの店長」「コンビニ店長」などが狙い目だと言われました。手を受話器にガムテープでぐるぐる巻きにされて、受話器を置けないようにされます。」

 

 

上の話はあくまで伝聞であるが、数年前に話題となった「餃子の王将」のスパルタ研修を見れば、このような研修に一定の効果を見込んでいる企業が多数あることも伺える。

現代の若者は、家庭や学校で、こうした躾をされる機会が少なく、叱られることさえなかった人も多く、ややもすると、個人の自由という名目で我儘を通すことが黙認されてきました。こうした若者を受け入れるにあたって、通り一遍の無難な研修だけでは、学生気分から脱却させることはできません。

餃子の王将webサイト

 

 

このような「マインドコントロール研修」を「ブラックである」と感情的に批判することは簡単だ。

だが、ここまで批判もされているスパルタ研修を採用している会社が数多くあるということは、彼らがそれに対して一定の合理性を感じ、それなりの考え方を持っているということでもある。

 

例えば、新卒を対象としたものではないが、「管理者養成学校(http://www.hell-camp.com/)」という研修機関がある。ここは所謂「スパルタ研修」が有名で、名物の「地獄の訓練」を修了した人物は18万人にも上るという。

お会いした中小企業の経営者の中には「どうしても部下が変わってくれない、どうしたら良いかわからない」と悩み、最後の望みを託して管理職を研修に送り込む方もいた。

 

 

たしかに現場はキレイ事では済まない。中には横領をはじめとした不正を行う人物や、経営者の甘さにつけ込み、会社をいいように利用する人物がいるのも事実だからだ。

つまり、こう言ったスパルタ研修を採用する会社、人々の考え方は、上の餃子の王将のページにもあるが、以下のとおりである。

・自律できないだらしのない人間がいる

・言っても聞かない、分からない人間がいる

・義務を果たさず、権利や自由ばかり主張する人間がいる。

だから「会社に入ったら通過儀礼が必要」と言っている。言い換えれば「マインドコントロールを施し、自分たちが社会に適応させてあげている」という主張なのだ。

それは一種「体罰」を認める人々の考え方にも似ている。

 

 

 

だが、例え「本人のため」に「誠意を持ってやっている」と主張をしたとしても、次のような問題は残る。

 

・どこまでが会社の都合で、どこまでが本人のためなのか?

会社が、従業員をいいように使うための詭弁なのでは?という見解。これは「本人もいいと思っているから良いじゃない」という話では片付かない。

「ダメな人間を救っているのだ、手法に関してい文句を言われる筋合いはない」という人間観には、問題がある。

 

・そもそも人間へのマインドコントロールが許されるのか?

人間を恐怖と怒号で統制することが、そもそも許されるべきなのか?という見解。

 

・人が数週間の研修程度で変わるのか?

上述の管理者養成学校に管理職を送り込んだ経営者の多くは、「1ヶ月位で元に戻ります」とする人が多かった。であれば、なぜこのような儀式が必要なのか。

 

 

ピーター・ドラッカーは著書「マネジメント」においてこう述べる

仕事の上の人間関係は、尊敬に基礎を置かなければならない。これに対し心理的支配は根本において人をばかにしている。(中略)

心理的支配は人を怠惰で仕事を嫌う存在とは仮定しないが、マネジメントだけが健康で、他のものは全て病気であると仮定する。

マネジメントだけが強く、他のものは全て弱いとする。

マネジメントだけが知識を持っており、他のものは全て無知であるとする。

マネジメントだけが正しく、他のものは全てばかであるとする。

まさに傲慢で、ばかげた仮定である。

結局「マインドコントロール研修」を使う会社は、人をバカにしているのだ。

 

 

 

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(2025/6/10更新)

 

 

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<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第4回テーマ 地方創生×教育

2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。

地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。

【日時】 2025年6月25日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/6/16更新)

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