あらゆる会社に、結構な確率で、仕事を「急かす」上司がいる。カッコ内は部下の心の声だ。

 

上司 「こんな仕事3日でできるだろう」

部下 「…はい。」(いやいや、3日なんで絶対無理だから)

 

上司 「このプロジェクトは、1ヵ月でやれ」

部下 「…。がんばります」(いやいや、言ってることを実現しようとすると、最低3ヶ月はかかるから)

 

もちろん、「早く仕事をしろ」と言う上司の気持ちもわかる。また、「ひょっとして部下が怠けているのでは」と疑心暗鬼になる上司もたくさんいよう。しかし、上司に急かされても、実際仕事は全く早くならないばかりか、かえって部下が上司への対応策を見つけるために余計な時間を使うハメになる。

仮に突貫工事で仕上げても、結局納期に間に合っただけで、肝心のプロジェクトの成果物や仕事のクオリティはおざなりになる。また、それを修正するために結局、より多くの時間がかかるため、「何のために急かしたのか」がわからなくなる。

 

こう言った状況に、プロジェクト管理の第一人者であるトム・デマルコは、「圧力を掛けるのが管理者の仕事だ」と思っている人が数多くいる、と言った趣旨の発言をしている。

 

しかし、それとは真逆に、「部下の仕事をスピードアップさせる上司」も存在する。

彼等は部下の仕事を急かさない。

「早くやれ」

「まだ終わらないのか」

そういった言葉は使わない。

それにもかかわらず、上の「急かす」上司の下で同じ仕事をするよりも、はるかに早く部下の仕事は終わる。

 

前者は迷惑極まる上司だが、後者はぜひとも欲しい上司である。

いったい何が異なるのだろうか?

 

 

後者の上司は、前者の「急かすだけの上司」と異なり、次の2つの発言を部下に対してする。

 

1.私は◯月◯日までに仕事を仕上げて欲しいが、これを実現するために障害はあるか?それに対して私が手伝えることはなにか?

2.◯◯という要求は必須。◯◯と言う要求は努力目標だ。

 

一つ目は、「上司たる自分が手伝えること」を聴いている。

二つ目は、「物事の優先度」と、「到達点」を伝えている。

 

実際、「急かしている」と言うのは、部下の邪魔をするだけで何の仕事もしていないのと同じである。

上司がやらなくてはいけない仕事は、本来であれば「助力」と、「要求基準の設定」であるにもかかわらずだ。

 

仮に部下が怠けているとしても、この方法であれば、部下に成果を約束させることもできるし、適性な納期を設定することもできる。

だから、この二つの質問をするだけで、部下の仕事はかなりスピードアップする。

 

圧力をかけるだけという愚を犯さず、上司がやるべきことをやろう。

 

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(Photo:acworks