nenkin少し前に、厚労省の発表した「世代間格差の正体~若者って本当に損なの?」が物議をかもしていた。

このページの結論が「世代間格差はない」という印象を与えるものであったため、若干炎上気味であったと記憶している。

 

だが、厚労省の言っていることは本当なのか。様々な文献を当たると、厚労省の言っていることは一面にすぎないことがよく分かる。

 

例えば、元MIT教授のレスター・C・サローは、その著書「The future of capitalism (邦題:資本主義の未来)」において、この現象を「若者と老人の戦い」と名づけ、こう述べている。

政治的メッセージははっきりしている。福祉の的を低所得の高齢者に絞ってコストを削減し、経済効率を高め(金を最も必要としている人たちにまわす)のが最善の策だが、そんなことを言い出す政治家は選挙に勝てるはずがない。

(中略)

困っている人たちを探すとすれば、今の時代に困っているのは高齢者ではない。貧困層の年齢別構成をみると、一番比率が高いのは18歳未満の子どもたちだ。それなのに政府は、一人あたりにして、子どもたち(選挙権がない)のための9倍もの金を、高齢者(選挙権がある)のために使っている。

将来のアメリカ経済のために、最も投資を必要としているグループが最も政府から見放されているのだ。子どもたちが十分な収入を得られるだけの技能を身につけられないとすれば、一体どうやって高齢者を支える税金を払うことができるのか。

将来は階級闘争の意味が変わる。貧しいものと富める者の争いではなく、若者と老人の戦いになる。

この著作は1996年当時、アメリカで書かれたものであるため現在の日本に当てはまるかどうかはわからない。だが、アメリカよりも更に深刻な高齢化社会を迎えている日本においては、むしろ当時のアメリカの状況よりも悪いと言っても差し支えないだろう。

 

サローは、この状況に対し「金を持っている老人は働け、税金を払え。社会保障など必要ない」と述べる。

どんな社会でも、どうやりくりしようと、数が増える一方の人たちが遊んで暮らす期間を延ばしていくような状況は耐えられない。(中略)例えば65歳という一定年齢での引退はもう保証できない。

また、どのような福祉制度であれ、所得が平均以上の人たちを手厚く保護しなければならない理由はない。こうしたことを続けていれば、貧しい人たちが豊かな人たちを助けるために税金を払うという社会的な不条理が生まれる。

この「当たり前の話」が通らないのが、超高齢化社会なのである。

 

年金制度は大きく分けると2種類ある。

第一は、「世代間で所得を移転する制度」だ。これはドイツのビスマルクが作った制度である。これに対し、第二は「自分が積み立てたものを自分が受け取る制度」である。これは、シンガポールのリー・クアンユーが作ったものだ。

サローは、これに対し「リー・クアンユーは正しく、ビスマルクは間違っていたと書くだろう」と述べる。

 

そして、日本の制度はドイツのビスマルクが作ったものと同一である。

だが、ドイツのビスマルクが引退の年齢を65歳と定めた1891年には、ドイツ人の平均寿命45歳にも達していなかった。今日の平均寿命でいえば、年金の支給開始を95歳に設定したことになる。

つまり、現在の日本の年金も支給開始が95歳であれば制度として機能するだろう。しかし、今のところ年金の支給開始が95歳になる気配はない。

 

先の選挙では社会保障についての甘い話ばかりが語られていたが、そんな話はあるわけがない。年金制度は改められなければいけないし、若者を育てるための投資を行わない国は滅びる。

 

統一地方選挙が始まった。「選挙に行こう」と人に押し付けるつもりは毛頭ないが、現実として若者は選挙に行かなければ搾取されるだけだ。

 

 

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(画像:厚生労働省)