数年前、セミナーのネタとして使うため、自分自身で起業し会社を経営する人々に「どんなネタで起業するのが良いか?」と取材して回ったことがあった。

多くの経営者に話を聞いた。もちろん百人いれば百通りの回答があった。教科書通りの起業をする方もいれば、この人しかできないだろう、と思われる起業をする方もいた。

しかし、類型化すれば次の4種類のいずれかの回答をする経営者が多いと感じた。

 

 

最も多かった回答は「自分がやりたいことをやれ」というものだった。「今も自分がやりたいことしかしません」という経営者も多かった。

彼らは自分のやりたいことをやるために会社という器を利用しており、とても楽しそうに仕事をしていた。社員もそれに賛同している方、もしくは社長との個人的なつながりにより参加している人々であり、自由な雰囲気を謳歌していた。

だが、殆どの会社は大きくはならなかった。20名から30名程度で「そこそこ儲け、そこそこ楽しく」という方が多くを占め、経営者も「規模は追求しない」と言う方が多かった。

 

 

別の回答で多かったのは、「みんながやりたくないことをやれ」という経営者だった。彼らはとても市場志向であり、顧客は望んでいるが、自分ではあまりやりたいと思わないことを探す天才たちだった。

経営者の多くは拡大指向であり、売上を伸ばすこと、規模を追求することが至上命題であるケースもあった。市場志向であり、皆がやりたくないことをしているので、それなりに儲かっている会社が多く、急成長を遂げる会社も多い。

また、それらの会社は非正規雇用の数が多く、正社員が少ないというケースが多かった。社長は金持ちにはなり、そこで働く人たちはそこそこ幸せそうに働いていた。

だが、一定の規模を超えると採用に非常に苦労していたようだった。人事担当者はいつもコッソリと「人気のない業界ですからね」と言っていた。

「かっこいい仕事、皆がやりたくなる仕事をやれ」という経営者がいた。なぜなら、経営者の理念が「社員が幸せな会社を作る」だからだ。

流行りの仕事、見栄えの良い仕事を次々と立ち上げ、その中の幾つかは成功して事業となっていた。上述した会社と異なり、皆が憧れるような仕事であり、採用に困ることはなかった。むしろ困るどころか、求人を出せば応募が殺到するといったことも珍しくはなかった。

だが、やろうとしていることに市場がないケースや、市場があっても競争者が多いケースがほとんどであり、会社の利益率は低く、社員の給与や待遇は今一つだった。

だが、社員はよく働いていた。「好きなことができている」という実感が得られる会社はそう多くない。経営者はそう言った社員たちを見て、充実感を感じていた。

「特殊技能が必要であったり、知識が必要でやれる人がが少ない仕事をやれ」という経営者がいた。社員の多くは専門家、技術者といった知識労働者であり、「専門家集団」と言った雰囲気を持つ会社が多かった。

だが、多くの会社は立ち上げに非常に苦労していたようだった。周りの経営者も、金融機関も「そんな仕事、商売になりっこない」と言った。

実際、ほとんどはそのとおりであり、数年で挫折し資金を使い果たして倒産する会社も多かった。だが、その知識や技術がマーケットの需要を先取りするまで辛抱強くそれを続け、先を行く知識、技能を確立した会社は莫大な利益をあげていた。

そして、成功した会社は人材の豊富な、利益率が高い、皆が羨む会社になることも多かった。一握りの成功者が総取りする、そう言った世界だ。

 

 

どのタイプの企業が成功するのか?と問われても、そこには正解はない。だが、目指すべき理想形がどこにあるのかによって、成功した後の姿は規定される。

 

 

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(2026/3/10更新)

 

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(Photo:ttnk)