ある会社が、テレビCMを流していた。ところがそのCM、どう考えてもその会社の事業の成長に貢献するとは思えない内容であった。「イメージだけ」とでも言えばよいのだろうか。

社員の方に「なぜあのCMなのか?」と聞くと、「我々もよくわかりません。40億円かけたと社長は言っていますが、ムダですよね」と言う。

 

昔ある会社が、社長の肝いりプロジェクトとして社内にバーを作ったり、服の仕立て屋を入れたりしていた事もあった。当時は「会社のブランディングの好例」としてとても話題になったが、今ではその会社はなくなってしまった。

当時、社員たちがどう思っていたのかは知る由もないが、恐ろしくお金がかかっていたのは間違いない。

 

また別の会社で「合宿」のとても好きな社長が居た。

何かと社員を合宿に連れて行き、そこで重要な事を決めていたようだった。「非日常」もたまには悪くないのだろうが、何かとすぐに「合宿」になるので、「なぜ、こんなに合宿が多いのか」と、社員の中では話題になっていた。

当然、社長には言えないようだったが、社員の何人かは「社員の休日が潰れるし、会議室でも同じことができる。かなりの高級旅館でやっているので、お金をかけすぎているのではないか」と言っていた。

 

ある会社では、社長がやたらと応接にお金をかけていた。「顧客対応にお金をかけなければ」という趣旨の発言を社長がしていたことを憶えている。しかし、

「お客さんから「景気がいいねえ」と言われることは多いけど、そんなものにお金をかけるくらいなら、もうすこし社員の給料を上げてやって欲しい。そもそもお客さんにそんな贅沢なものを見せても良い印象を持ってもらえるのだろうか」

という声もまた、幹部から出ていた。

 

 

なぜ、こういった一見ムダなことを、経営者はするのだろうか。私は「人それぞれだから」とあまり深く考えなかった。

ところが、ある知人にこの話をしたところ、その人はこう言った。

「たぶん、その社長たちはそれがやりたかったことなんじゃないかな。」

「どういうこと?」

「人って、成功してある程度金銭的に満たされると、次にやりたくなるのは「最も根源的な部分での欲求を満たすこと」でしょう?そういう時って、成功も失敗もないんだよ。イッツマイライフっていうことかな。」

「なるほど」

「TVCMをやっていた社長さんは、「オレはCMを流せる会社を作った」って、みんなに言いたかったんでしょう。合宿している社長は、「みんなでワイワイやりたかった」んじゃないかな。そこには経済合理性を超えた、人間の根本の姿が透けて見えると思う。」

 

ある程度お金を持った時、どういった「一見ムダ」なことにお金をつかうかで、その人の姿が見える。憶えておこう。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
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(2025/6/2更新)

 

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